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私、異世界生活始めちゃいました。その9


刹那の記憶の一部が戻ってから一週間。

その間、私と刹那はタカマガハラの中心部、皇照宮(こうしょうきゅう)という場所に拘留されていた。

まぁ拘留とはいうものの扱いは客人扱いで、良いもの一杯食べさせてもらえたのだけど。

タカマガハラの料理は日本のものとは全然違ったものだったけど、味はもう絶品だった。

普段は無表情で箸をすすめる刹那も、幸せそうな表情で箸をすすめていた。

というより記憶の一部が戻って以来、刹那の表情は豊かになったように思える。

記憶と共に感情も戻ってきてるのかもしれないなぁ……。


で、拘留生活中は私は刹那をモデルに絵を描きまくっていた。

暇つぶしがそれぐらいしかないんだもの。

そんなわけで今日も今日とて刹那をモデルに絵を描いていると。

コンコンッとドアを叩く音が鳴り。



「お久しぶり、奏さんに刹那さん」



スーツ姿のユズキが私達の部屋に入って来た。



「一週間ぶりね、ユズキ」

「お久しぶりです、ユズキさん」

「……これはまた煽情的な絵を描いてるんだね奏さん」



ユズキの視線の先には半裸で翼を丸出しにした刹那の姿があった。



「だって……ねぇ……」



刹那があまりにも魅力的すぎるんだもの。

生の翼だよ?

天使様だよ?

そんなモデルにありつけることなんて、これから先二度とないかもしれないじゃない。

だから、もうこれは描いて描いて描きまくるしかないじゃない?

決してエロスの為なんかじゃないからね!!

私のサークルは一般向けです。

ノット18禁。



「イエスエンジェル、ノータッチ!!!」

「何言ってるの、奏さん……」



は……思わず意味不明なことを口走っていた。

いかんいかん。



「こほん。それはともかくやっとこの拘留生活からおさらばできるって事ね」

「うん。端的に言えばそうだね」

「あんまりにも暇すぎて刹那本が一冊できちゃうくらい描きまくってたわ」

「へ~……それはちょっとどんな本なのか興味あるけど。そうも言ってられない状況だっていう事が分かったんだよね」

「は……?それ一体どういうこと?」

「それを説明したいんだけど、刹那さんいつまでもその恰好でいられるとそれもできないから……」



言いながらチラリと半裸の刹那の方に視線を向けるユズキ。

刹那は恥ずかしげもなく半裸の姿でモデルの体制でピクリとも動いていなかった。

まぁそうさせていたのは私なんだけど、ちっとは恥じらうとかしても良いと思うんだけど。

その辺の感情はやっぱり戻ってないのかなぁ……。


刹那に衣服を整えるように言った後、私達は何やら大きな広間へと通された。

そこにはテラスちゃんとキクリ先生が椅子に座って私達を待ち構えていた。



「やっときたか、お前達。ユズキが呼びに行って随分時間がかかったが何をしておったのだ」

「そ、それは、ちょっと……まぁ色々と……」



ユズキは苦笑いしながら言葉を濁す。

ユズキが呼びに来た後、刹那の着付けの直しに手間取ってしまったのだ。

あははは……ホントすいません。



「まぁ良い。三人ともそちらの席に座るがよい」



そうテラスちゃんに言われ私達三人はテラスちゃんとキクリ先生の向かいの席に座ることになった。



「それじゃ、キクリ。説明を頼む」

「はい。テラスちゃん」



そう言ってキクリ先生は私達三人にプリントを配る。



「まずそのプリントに目を通してみてください」

「はぁ……」



プリントにはこの異世界に降ったギフトとその数、その場所について事細かに書かれていた。



「これはこの国の上層部にしか知られていないトップシークレットの情報です」



私達がプリントに目を落としている間、キクリ先生はそう説明してくれる。



「そんな情報、よくあの学園の理事会が開示してくれましたね」



ユズキは驚いたような声でそう告げる。



「まぁ事が事だけにね。ユズキさんにはさっき軽く説明したけど時間が無いのよ」

「それ、ユズキも言ってましたけど、どんな状況なんですか今って」

「プリントを見てもらうと分かると思うんだけど、この世界に落ちたギフトの数は百八つ」

「ひゃ、百八つぅぅぅ!?」



まじか。

そんな数あんの。

あ……でも流星として降り注いだ割には少ない方かな……。



「で、その場所もかなり点在していることが分かったの」

「えっと……この国にあるギフトって何個くらいあるんでしょうか」

「お前たちが回収した一個だけだ」



さいですか……。



「で、問題はここからなんだけど。ギフトってこの異世界の国の一つにつき一つしかないっぽいのよ」

「はぁ……」



それってつまりどういうことだろう。



「で、その国のほぼ全てがギフトを重要文化財として保有しています」

「え゛……それって……」

「回収するたびに今回みたいに拘留される可能性があるという事だ。しかも他国には高千穂(たかちほ)の影響力がない国もある」



キクリ先生の言葉を継ぐようにテラスちゃんは無表情な顔でそう告げる。



「それってつまり……」

「完全に罪人扱いで拘留されることも有りうるということだな」

「……」



まじか。

それって下手したらギフトを回収した途端に即牢獄行きってことですか。



「それに加えてタイムリミットは一年位という話ですから一個のギフトにつき三日位しか時間を割けません」



一個につき三日……。

それってめちゃめちゃやばくない?



「一応、交流のある国にはこちらから話を通しておきますから一日一個いけるとは思いますが、外交関係上、関係の悪い国もあるのでその辺は奏さん達自身で何とかしてもらわないといけません」

「まじですか」

「まじです」

「因みに関係の悪い国っていくつ位あるんですか?」

「まったく外交関係のない国が二十に、関係が最悪な国が五つですね」

「少ないのか多いのか微妙な範囲ですね……」



うーん……。

交流がある国の回収が一日一個いけるなら、最短で七十七日。

で残りの二十五個を約三百日か……。

大雑把に計算すると一個当たり十二日……。

移動時間、交渉時間を考えるとほんとギリギリいけるかどうか微妙な範囲だなー……。

ホント、一年で回収しきれるんかいな、これ。

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