93話 別れ道
明日テストなのに何やってんだろ……ソシャゲしてる場合じゃない……でも明日の昼でイベント終わる……よし周回だ!
「地底世界に入る時に通った洞窟と似たような造りだね」
「……うん。……狭くてひんやりしてて……いい」
洞窟について何の知識のないリュウキとシズネの感想であった。とは言え、この場にいる誰もが洞窟について造詣の深い者がいるわけではないため頷く。
洞窟内部は横に狭く、人が2人ギリギリ歩けるかどうかといったところだろう。先頭にリュウキとシズネが、中間でシズネとクラムバーが、殿を竹田が歩いていた。
リュウキは時折シズネと手や肩が触れ合う度に心を揺らしていたのだが、隣のシズネが平然とした顔をしているのを見て浮かれているのは自分だけかと沈む。これを洞窟に入ってから何度か繰り返していた。
「洞窟だけど内部は明るいし歩きやすくていいね」
「君達はともかくとして私には少し歩きにくいのだがね。天井に頭が付きそうだ」
「竹田さん気を付けてねー」
洞窟内部は苔のようなものが地面以外に生えておりそれが光を発しているため比較的歩行速度は保てていた。とは言え、天井の苔は竹田のような背の高い者が通ることを配慮してか、やや少ないため足元は見えやすいが天井付近は見えにくい光り方となっていた。そのためリュウキはシズネが平然としていると勘違いしておりほんのりと顔を赤らめていたことに気が付かなかった。
「地図は見えてる?」
「大丈夫大丈夫。……ってかボク以外の皆も地図は見えるはずでしょ?」
「そうなの?」
「アイテムボックスに全員分配られてたはずだよ。この洞窟、入り組んでいるからはぐれてもいいようにってことじゃないかな?」
現在地図を手に取っているのはクラムバーのみであった。
ポーラから直接受け取った一枚のみであると思っていたが、どうも違ったらしい。
「……この先に別れ道がある」
シズネが地図を広げてリュウキに見せる。
「3つに分かれているのか。どうする?」
リュウキが後ろを振り向いて3人に尋ねる。
「全員一緒よりは分かれてもいいかなってボクは思うよ。5人だと闘いづらいしね」
「私も分かれることには賛成だ。私もどちらかといえば大勢で闘うことは苦手だからね」
クラムバーと竹田は別れ道で別行動することに対して肯定的である。
「シズネとマカはどうする?」
「私もさんせーい」
「……私も2、2、1のグループになった方がいいと思う。……見て、ここ」
シズネの指さす先。別れ道となった3つの道はどれも広い空間に続いていた。地図を見れば最後に辿り着くであろう空間を除けば最も大きい空間、それが3つある。
「ふむ。怪しい場所……というかこのクエストのキーになる可能性の高い場所かね」
「……3つあるということは3つとも行った方がいいと思う。……問題は……」
「誰かが1人になるってことだね。ならボクがそれは請け負おう」
5人が3グループになるならば誰か1人はペアではなく個人として洞窟を進まなければならなくなる。奇数人数でペアを組む。それは孤独との闘いに勝てる者だけが、常に1人で闘う者だけが犠牲となることを許される行為である。
「君達はこれまで連携を組んで闘っていただろうけど、ボクはさっき会ったばっかりの新参者だ。1人で闘い慣れているけど誰かと闘うことには慣れていない。むしろ連携こそボクを弱めてしまうかもしれないのさ」
それを言われてしまえばクラムバーを個人とするしかない。
ならば後は2つのペアに別れるのみ。
リュウキとしてはシズネと組みたいが自分から言い出せない。年頃というのもあるが、マカを差し置いてシズネと組みたいと言ってしまうとマカが拗ねてしまうことを昔からよく知っているからだ。
それを知ってか知らずか、
「では私はマカ君とでいいかね? 私の木々は今や攻撃性に欠けているが相手を抑えつけることは出来る。マカ君の攻撃力と相性は良いだろう」
「んー、そうだね。お兄とシズ姉は私がゲームを始める前に一緒に遊んでたから2人で闘うのも大丈夫そうだし」
竹田がそう提案し、マカも乗る。
「じ、じゃあそうしよう! 俺とシズネ、マカと竹田さん、そしてクラムバーさんの3チームでそれぞれの道を進むってことで」
「……分かった」
シズネも薄く笑みを顔に浮かべながら頷く。
他の3人も同様に頷いていく。
リュウキだけが気づいていない。一番このチーム決めでハラハラし、決まった時に嬉し気な顔をしていたのがリュウキだということに。
「ここで別れ道か。思ったよりも早く着いたね」
地図を見ながら洞窟内を歩いてきたが、そう長くない時間で別れ道へと到着した。
「道中にモンスターが出なかったから……というよりもこの地図の寸借が随分とおかしなことになっているだろうかね」
竹田が地図を見てそう言う。
3つの大きな空間と、シズネは言っていたがそれは地図上の道に比べたらの話であり、それ以上に道は長く続いていた……はずであった。
「よく見たら手書きだし……ポーラが書いたんじゃないのかな?」
あのどこか抜けた印象のある姫ならばこのような地図になってしまうのも頷ける。
見聞きした情報を基に地図を作った結果がこれなのではないだろうか。
「せめて道が間違っていないことを祈るだけだけど……」
「……ここまでは距離は違ったけど曲がり角とかの特徴は大丈夫だった。……道順だけは正確」
「ポーラちゃんが作ったなら心配ないよー! 行こう行こう!」
3つの道であるが、どれに進めばいいのか見当は付かない。
地図からは進めば広い空間に出るということしか分からず、強いて言うならば……
「じゃあボクがこの道を行くよ。1人だからどんどん進めるだろうし」
距離的に一番長いであろう道をクラムバーが取る。距離感が当てにならない地図ではあるが、クラムバーが進もうとする道は明らかに距離が長いものであった。
「残るはこの2つだが……マカ君はどちらがいいかね?」
「うーん……こっちかなぁ」
マカが残る道の片方を指さす。
「なぜこちらを?」
「空間の広さかなー。少しだけだけど、こっちの道に繋がる空間がもう1つよりも広い。私も竹田さんも広い空間の方が闘いやすいでしょ?」
剣を空中に舞わせるマカも木々を広範囲に広げる竹田も空間的には大きな場所の方が闘いやすい。
逆にリュウキは徒手空拳であるため狭くても闘え、シズネも発動に遅い岩魔法は敵が動き回る広範囲では使いづらい場合が多い。
「そうだね。私もその考えに異論はない。リュウキ君、シズネ君。こちらで勝手に決めてしまったがいいかね?」
「ええ。俺とシズネもそれで大丈夫ですよ。ね、シズネ?」
「……問題ない」
こうして5人は3つの道へと別れた。
「なあシズネ」
「……何?」
地図からどれだけ進めば空間に出るのか分からないが道中にモンスターが出ないことはここまでで分かっている。
だからそれまでは話せるだろうとリュウキは話を振る。
「クラムバーさんだけどさ、どう思う?」
「……どうって、綺麗?」
「じゃ、なくてさ……」
綺麗だとは思うがシズネの前でそんなことは言わない。それくらいはリュウキも知っていた。
「竹田さんがクラムバーさんに対して少し、その、怪しいみたいなこと言っていたからさ」
これまででクラムバーが何か敵対するような行動を取ったとはリュウキは思えない。
だが視点を変えてみれば、クラムバーが何かをするという先入観無しで見たらどうだろう。
怪しいと思わないからこそ怪しい行動を発見できる場合もある。
「……別に変だとは思わなかった。……けど」
「けど?」
「……クラムバーが1人で行動する。……そう自分から言い出したのが、もし自分の手をなるべくこちらに見せないためだとしたら」
「言われてみれば……だけどクラムバーさんが1人で闘う方が闘いやすいってのも分かることだからなー」
「……そもそも私は別にクラムバーに対して何も思っていない。……言い出したのはリュウキと竹田さん。……そう言われればって話だから」
「そもそもこのまま大人数で行動する可能性もあった……わけじゃないのか」
リュウキは思い出す。洞窟に入る前から地図を持っていたのがクラムバーであったことを。ならばシズネが別れ道があると言い出す前から道は別れ、それぞれ3チームになることも予想できたのではないか。
「考えすぎって言われたらそれまでだけど……」
そもそも敵とは何だろう。
『五行同盟』みたくあからさまにプレイヤーを狙っているならともかく、クラムバーは今共に闘う仲間だ。
リュウキ達と敵対する理由もないし必要もない。どこかでかつて因縁があったわけではないのだ。
「……光」
「本当だ。……やっぱりそこまで道は長くなかったか」
クラムバーが一番長い道を進んでいったが、本当に長いのかすら怪しくなる。
「さて、この空間に何かが隠されてるのかな……って何だろこれ」
空間はリュウキ達の通う高校の教室2個分といったところだろうか。少し縦に長いが、横にも十分な広さがある。これまでの道と同じく岩づくりの壁だ。
その空間の中間地点にポツンと岩のようなものが鎮座していた。しかし灰色がかった壁とは違いその鎮座している物体は白い。石灰岩よりも白い。純粋な白さがあった。しかしその白さを塗りつぶすがごとく黒い何かが覆っていた。もしも白が人間の素肌だとしたら黒は衣服のようだな、とリュウキはなぜか感じた。
「近づいてみる?」
「……一回魔法撃つ?」
ほぼ同時に2人は自分の考えを述べた。
「魔法撃ったらまずいでしょ。あの岩が何か重要なものだとしたら壊しちゃ駄目だよ」
そう言ってリュウキは『悪鬼変身』を使う。
もしこの白と黒の物体が爆発するような危険物であったとしても悪鬼となっていればすぐさまシズネを抱えて空間内から脱出出来るように。
「魔法を撃たれるのは嫌なのである」
声がした。
「ん? シズネ何か言った?」
「……言ってない。……声は前から聞こえた。……多分その岩」
「岩ではない。吾輩は……」
白と黒の物体が動き出した。よくよく見ると地面に手足らしきものが埋まっていたようだ。人間のそれと同じものが色だけは白くなっており、どことなく不気味さを感じる。
そして動き出し完全に二本足で立つそれを見てリュウキとシズネはよく見たことがあるものだなと思う。ただし本来のそれには手足など決して生えていなかったが。
「吾輩は『ライス・ボール・ソルジャー』。具材は昆布であるぞ」
一粒一粒が炊きたての米粒のごとく光を帯び蒸気を発し始めたソレはこの空間の主でありモンスター、名前を『ライス・ボール・ソルジャー』。つまるところはおにぎり兵士であった。
幸いなことに私のこれまでのクラス遍歴では偶数だったため1人になることは無かったですね。
最後のモンスターに関しては、ぼくしぃらないって感じです。何かモンスター出す予定だったけどこうなってしまったのはしょうがない。他にモチーフになりそうなのいなかったんだもん!




