90話 グランドグラウンド
これから毎日少しずつキャラ紹介的なものを作ることをここに誓います!
一週間ほどでできたら……いいなぁ
地下世界グランドグラウンド。地底ではなく地下、つまり世界の表面を軽くなぞれば出てくる程度の浅い箇所に作られた世界であって、この世界の下にはまだ更なる世界が広がっている。地底世界への足掛かり、繋ぎとも言うべき場所に作られたのがグランドグラウンドであった。
グランドグラウンドを構築する際に製作者がまず第一に考えたことは世界観でも、種族でも、住人の強度でも、ましてやクエストの内容でもなかった。
地上との関わり方をどうするか。これに悩んでいた。地底世界については考えなくてもいい。アレは実装が先であり、どうとでもなるからである。
グランドグラウンドの直上には荒野タイプのフィールドが作成される予定であり、その最難関のモンスターである『ツインドリラー』の特性ともいえるドリルは全てを砕く。二つ名『無害貫通』の能力によってプレイヤーに対して防御不可能の攻撃を仕掛けるのは良い。良いのだが、『ツインドリラー』はモグラである。モグラは地面を潜る。
そのためまずはグランドグラウンドの周囲に結界を設定した。外部からの侵入不可。しかしそれではプレイヤーすらもグランドグラウンドに立ち入ることが出来なくなる。モンスターのみの侵入不可は予定されるクエストの発生条件がテイマーであるため難しい。
ならばどうするか――道を作るしかなかった。しかしそれはただの道ではない。通常の道(洞窟)では『ツインドリラー』の侵入を許してしまう。何かしら、『ツインドリラー』を阻むものが必要であった。
そして作られたのが水で埋められた空洞であった。何物をも砕くドリルではあるが固体ではない、液体である水は砕くことができない。そして水をどうこうする知能を『ツインドリラー』に設定しなければ、後はプレイヤーにこの空洞の通り方を自力で捻りだしてもらえば良いだけであった。水の空洞をクリアし、そこから繋がる洞窟だけは結界を無視することが出来る。これで良いだろうと、そこで製作者はグランドグラウンドの地上との関係設定を終えたのであった。
「まあ、ではあなた方はあの大きなモグラ様を倒してしまわれたのですね!」
グランドグラウンドの姫であるポーラ。彼女はリュウキ達が『ツインドリラー』から逃げ延び、その果てにこの世界に辿り着いたと思っていたようで、倒したと伝えると驚いていた。
さすがに小柄なシズネやマカであっても2mの城には入れない。
そのため城の隣に腰を降ろすことになった4人であったが、クエストの内容の前にこの世界について教わることとなってしまっていた。
「この世界を作った神様は地上のモグラ様から私達を守るために水の溜まったお部屋をいくつも用意してくださったことは先ほどお話しましたね? では次になぜ、この世界に私達が暮らしているかをお話したいと思います――」
そこからはポーラの演説のようであった。
時折マカが口を挟むが、ポーラの小さな口は閉じることなく常に言葉を発する。それを聞いて周囲の小さな兵士達は泣き始める。どうやらポーラの声を聴いて感動しているらしい。
地上にはすでに2m弱程もある人間が暮らし、それと同じか更に大きなモンスターまで生息している。そこに15㎝程の小さな小人達が共存するのは不可能。すぐに生存競争に負け絶えてしまうことは予想に容易いものであった。そこで神は小人達に新たな世界を与え、そこで暮らすよう様々な便宜を図ったのだという。
決して小人達を襲わず、そして生活の軸となる木々。
地上の人間に劣らないどころか一部の人間にしか使えないような高度な魔法の数々。
グランドグラウンドを囲う結界。
そして、いざとなった時に地上にいる人間に助けを求められるSOS信号の発信。
この世界の文明自体は神によるものではなく元から小人達が持っていたものを更に発展させたのだという。神から与えられた魔法でより生活は楽になり、あっという間に数を減らしていた小人達は増えていった。
「しかしながら……」
しかし異変は起きる。グランドグラウンドに侵入者が現れ始めたのだ。
長年使用していた結界に綻びが起きたわけではない。何せ神によって――DNOのプログラマーによって――作られたものだ。永久的に、機械的に動き続ける。
「最初は兵士達も戸惑いながら何とか倒すことが出来ていました。平和な時間が長かったため魔法は使えても闘いを知らない者が増えていたため……私の数代前の姫は『技を磨く暇があったら男を磨いてほしい』と兵士達に言うほど平和でした」
どうやら数代前の姫は男好きであったようだ。
リュウキはそれを想像し、目の前にいるポーラと比べる。
どうも姫というのは慎み深い、大人しいものだとイメージしていたが、兵士を率いてマカの掌に乗ったり、兵士に男を磨かせたりと変わり者が多いのかと思わせる。
「そう、あれはちょうど一月前でしたでしょうか。侵入者は一回でも1.2匹、数日に一回の頻度でした。兵士達も慣れないながらに闘い、立ち振る舞うことでようやく倒していたのですが……」
「状況が変わった、と?」
「ええ。今では毎日のように10匹ほど現れるようになりました。兵士達も必死に食い止めてはくれていますが、次第に負傷や疲弊が溜まってきて……」
要するに、結界があるはずなのにモンスターがグランドグラウンドに現れる。これまでは兵士達だけで駆除出来ていたのだが、最近になってモンスターの現れる頻度と数が増えている。兵士達も限界。
そんな折に、
「そして俺達が現れた」
困っているところにリュウキ達が洞窟からこの世界へと入ってきた。
だからポーラが助力を求めに来たということだろう、そうリュウキは理解した。
「いいえ、あなた方がここへ来たのは私が呼んだからなのです」
「どういうことー?」
「神様から頂いた地上への救援信号。それを使わせて頂きました。心の優しい方の前にこの世界に通じる穴が出現する。そう言い伝えられてきておりますが、そうではございませんでしたか?」
「穴って……」
思い出すのは『ツインドリラー』が空けた穴である。それがいくつも空けられ、残された穴に飛び込んだと思っていたのだが、どうも別の穴であったようだ。
「ということは……クエスト発行はこのポーラ君によるものだったのか」
「そうかもですね。救援信号がクエストになっていたのでしょう。そしてその侵入者を倒すのがクエスト内容ってところでしょうか」
「うむ。闘いか。これだけの自然だ。荒らすならば私も協力的に闘うぞ」
竹田はポーラのためというよりはこの世界のために闘うということでモチベーションを上げているようだ。
「ところで、その侵入者達の目的というのはこの世界の侵略なのかね?」
侵入者の正体と目的。それは闘う上では重要だ。侵略というならば『五行同盟』が似たようなことをやってしまっていたため竹田は尚更気になっていた。妥協点があるならば、もしくは闘う必要が無くすれ違いによってこの状況が生まれているのなら和解できる可能性もある。
「そうですね……ここまで来たらお伝えしておきましょう。侵入者達は魔物ですが、それを裏で操っている者がいます。彼は地上のモグラ様と同盟を組みとある目的でこの世界に入り込もうとしていました」
「モグラも敵の一味だったってことか」
同盟。『ツインドリラー』の支配下ではない。ということは『ツインドリラー』と同程度の強さはあるということになる。
「彼らの目的は同じにして同時に叶えられないもの。彼らのうちどちらかしか叶えられないけれど両者ともにこの世界に入れないために同盟を組みました」
「……何かを取り合っている?」
「私なのですよ。モグラ様も、同盟している方も、目的は私。このポーラです」
ポーラは小さく笑う。
おかしいから笑ったのではなく、この状況が間違っているから笑っているようだ。
「私を娶るために彼らはこの世界を壊し、奪い去ろうとしているみたいです」
そうポーラが吐き捨てるように呟いた瞬間、警報が鳴り響いた。
「侵入者です! 侵入者です! 姫はお隠れください!」
そう言って一点へと向かう兵士達は皆、よく見れば足を引きずり腕を固定し壊れた鎧を着装する痛々しい姿をしているのであった。
「なあに、すぐに倒して来ますよ。姫は王子との婚約を控えています。そちらの準備をしながら鼻歌混じりに花嫁衣裳をお選びになっていてください」
「そうですな。我らも闘いにようやく慣れてきたところです。今日の敵が如何様に強くても我らも昨日より遥かに強くなっている。やつらの親玉を倒す時は近い」
「そういえば今日は給料日でしたね。俺、家に帰る前に両親に何か買って帰らないと……」
あくまでも弱さを見せず、そして姫を気遣う言葉にポーラは顔を手で抑える。その手からは隠しきれない嗚咽と涙が漏れていた。
「……行く?」
シズネがリュウキに尋ねる。
「行こうよ!」
マカはすでに剣を柄から抜いている。
「私もすでに準備は終えている」
竹田は全身に木を巻き付けている。
「行こう。たとえ誰かの為に、何かの為に他の誰かを害するならそれは悪だ。まして敵は自分の為にこの世界の人たちを害している。この世界の兵士の人たちの勇気はすでに見せてもらった。次は俺達が見せよう。そのために俺達はここに招かれたのだから!」
はいじゃあさっさと闘いに移りましょうねー(新たな世界観作り上げるのはめんどいので)




