88話 分配
明日から旅行に行くため短めで切って投稿しておきます
「それにしてもあのモグラの二つ名って何だったんだろう……」
闘いの後リュウキはふと疑問を口にした。
大亀は口から吐きだす岩が岩兎の卵であり、配下を増やすという能力であった。モグラはあのドリルが能力であったのだろうか。
リュウキがそう疑問に思っても、すでにモグラは倒された後であるし、確認する手段はない。ラビのようにテイムモンスターとなればシズネが確認できるが、残念ながら誰の御眼鏡にも適わなかったモグラであった。
「……さあ? ……それよりもこのモグラから落ちたアイテムも防具の素材になりそう。……さっきの亀が落とした『大岩亀の証』と合わせてギャブーさんに見せよう」
「あ、私もゲットしてるー! 『土亜竜の証』だってー」
『ブラッドラビット』含め『ロック・ザ・タートー』や『ツインドリラー』のような中ボスもといネームドモンスターを倒せば証と名の付くアイテムが落ちる。
勿論、『メディックフラワー』の採集に赴いたタロー山で倒した3体のネームドモンスターからもアイテムは得ており、それぞれリュウキの装備の強化に使われているかまだアイテムボックスに眠っている。
証は装備品の要となる他、装備強化に用いられるが何が強化されるかは元となったモンスターに由来する。『ブラッドラビット』ではAGI、STR有利になりDEFの値が低い装備となった。
恐らく『ロック・ザ・タートー』から得た『大岩亀の証』ではDEFやHPの強化が望めるのであろうことは推測が容易である。
「私もそろそろ装備を新調するとしようかね。とは言え、性能からしてもそこまでのものは望めないが」
竹田の装備は緑色の作業着のようなものだ。それが一体何のステータスの強化に繋がるのか分からない程、装備として成り立っていない気がするリュウキ達3人である。
「……ん? ああ、そうか私の装備も君達闘いを主とする者達には珍しいものか」
「初めて見る装備ですね。鍛冶屋とか、そういう生産系の職業の人がする装備みたいな感じがしますけど」
「というか竹田さんって木を体に巻き付ければそれで防御力高くなるよねー」
竹田の体に巻き付かれている木は、マカの剣ですらスキルを使っても食い込みこそすれ、斬ることは敵わなかった。生半可な攻撃はカウンターを誘い込まれる。マカも危うく、剣客の助けなしではそのまま竹田の木に貫かれるところであった。
「ああ。だから私の装備はDEFに重きを置いていない。元より動くことの少ない私の闘い方ではあるが、防御力を上げようと思えばどうしても金属製になる。そんなものを着けてしまっては私は全く動けなくなってしまうよ」
「じゃあ、何に重きを置いているんです?」
「DEX……つまりは器用さだね。木の成長速度はDEXに比例して上がるのだよ。それに、木を操る本数も精密さもDEX次第だ。……オセに経験値を変換しレベルもステータスも下がった今の私が『五行同盟』の1人であったときほどの強さがないのはそういうわけさ」
DEXを上昇させる装備は竹田のような職業の他に生産系の職業に好まれて装備される他、戦闘職でも弓矢を扱う職業であれば装備している者が多い。要はどれほど精密に動かせるか、それに限るのだ。手先の器用さは何かを扱うのなら高いほうがいい。
「しかしこの装備を強化するとなるとDEX値の高いネームドモンスターの証が必要なのだが……先ほどの亀といい今のモグラといい……」
「そんなに器用そうではありませんでしたよね……」
「あのおっきな亀とかすごい不器用そうー」
「……じゃあ、交換する?」
そう言ってシズネが差し出したのは『スリーピースモンキー』を倒した時に得た『三猿の証』である。
それを見て竹田は小さく笑みを顔に浮かべる。
「なるほど……交換、か。いいだろう」
もし無償であげると言われたら竹田は断っていただろう。そもそも彼はマカ達の助力に来たのであって自身の強化に来たわけではない。お礼を求めているわけでもないため、何かをマカ達から得るつもりは毛頭なかった。
だからこそ、交換であるなら……互いの立場が同じであるなら竹田は受けることもやぶさかではなかった。
何より、『大岩亀の証』はシズネの装備に、『土亜竜の証』はリュウキやマカの装備強化に有用そうである。
だから、竹田は、『三猿の証』を受け取り、『大岩亀の証』と『土亜竜の証』を代わりに差し出した。
「……これじゃ多い」
とシズネは貰いすぎることに文句を言う。
「はは、何せ私にはどちらも使うこともなさそうだろう? ならば2つとも君達が使ったほうが良いだろうさ」
そう言うがシズネを始め他の2人も納得しない。
仲間なのだ。対等であるのだ。竹田も平等にしていかなければならない。
「でもさ、竹田さんの攻撃って木で相手を貫くよね?」
「そうだな。それが私の主な攻撃法だ。大木で押し潰すこともあるが、貫く方が確実であるし速度もこちらが勝っている」
その言葉を聞いてマカがパァっと笑う。
「あのモグラさんってさ、ドリルで貫く攻撃してたよね?」
「ああ、そうだ……な。……そうか……分かったよ」
竹田は観念したかのように手を挙げる。
「貰いすぎは良くないよ? それは竹田さんのものなんだから、ちゃんと竹田さんが自分のために使ってね」
「ああ……本当にマカ君には負けるよ」
そのやり取りを聞きながらシズネはリュウキに尋ねる。
「……どういうこと?」
「つまり、モグラの貫く攻撃力の高さが二つ名の能力だとしても、装備の強化に使えば少なからずの影響はあるはずだってこと。竹田さんの装備の強化に『土亜竜の証』を使ったら、貫通攻撃に対して何かしらの補正がかかるはず」
「……なるほど。……竹田さんは私達に何でもしてあげようとしているけどマカが竹田さんに自身を顧みてほしいと」
「そういうこと」
こうしてアイテムの分配も終わり、穴だらけの荒野から去ろうとした瞬間、4人の目の前にメッセージが現れる。
『特別クエストが発行されました。【深層の姫の結婚式】受注しますか? Yes/No なおNoを選択した場合には穴は全て塞がります』
特別クエストとかロボットファクトリーとかタロー山くらいしかやってないけど、わりかしこういう展開が好きな私ですよ




