86話 『五行同盟』のその後
ぐあぁぁぁ
爆死したぁぁぁl
聖女様ちょっとだけ欲しかったよぉぉぉ
「そういえば、竹田さんがゲームに復帰したってのは聞きましたけど、他のメンバーはどうなったんですか?」
竹田を加えた4人のパーティーが道中のモンスターを倒し、一旦の休憩を挟んだ時、リュウキがふと気になった質問を竹田に投げた。
「他のメンバーというと、『五行同盟』の『水』、『金』、『土』、『火』の彼らのことかね?」
「ええ、そうです」
より綿密に言えばリュウキはそのうちの『土』、ユークリッドが気になっていた。
直接倒したのはリュウキではなく共に闘ったブレッシュであるが、それでも敵対した相手だ。マカが竹田とこうして和解しているのを見ると気にならざるを得ない。
「……」
一方、シズネは『火』を担当する『火炎達磨』ことヴェルフの現状に対してさして興味は無かった。
一度は闘った相手だからこそ、二度と闘いたくは無い。あれは怪物であり化け物だ。会話なんてしておらず、何一つ理解はしていない。和解など出来るはずがないと確信していた。
「ふむ、そうだな……。最も復帰する可能性の高いのは『金属光沢』だろうな。彼だけは唯一、闘いを心の底から楽しんでいた。復讐心や嗜虐心、快楽から殺すのではなく、闘ったから殺すというプレイヤーであった」
と聞いてもリュウキにも他の2人にもそのプレイヤーの人物像は浮かび上がらない。
誰が倒したかすら分からないのだ。とは言え、闘いを楽しんでいただけというならそこまで悪い人間ではないのだろうと、今後いつの間にか知り合いとなっていることも有り得るのだろうと想像できる
「次に可能性の高いのは……というか、他は良く分からないのだよ私にも。『聖水反転』は自分が自分として生きるために闘うのだと言っていたがオセを信奉していたからな。オセが倒れた今、戻ってくるかは分からない」
これまたリュウキ達には想像しようもない相手である。
建物といったプレイヤー以外の被害が最も少ない敵であったことから最も弱い敵であったとも言われているが、接近戦最強とも言われている。
人物像もその強さも測りがたいプレイヤーである。
「後は『土砂流砂』と『火炎達磨』か。『土砂流砂』は復帰する可能性はある。あれで負けず嫌いなところがあった。リュウキ君、彼女が君に負けたというならば、挑んでくる可能性は十分にあるだろうな」
「そうですか……まあそのくらい元気なら良いんですけどね」
リュウキの脳裏によぎるのは情緒の不安定であったユークリッドの姿である。何とも掴みづらい性格であった。
こちらを舐めているかとも思えば突如激高し、そして慌てふためく姿すら見ている。プライドが高かったのが地に落ちた結果と言えばそれまでだが、それを乗り越えた時、ユークリッドがどれだけ強くなっていたかを考えると、次は負ける可能性が高い。
元より多大な犠牲と仲間との連携の上に成り立った勝利だ。1人で勝てる可能性など低いのも程があるが。
「『火炎達磨』もまた、私と同様にこのゲームを続けていた理由が理由だ。まあ私とは反対に復帰する可能性は低いとは思うがね」
「……そういえばずっと熱いって」
「ああ。彼の二つ名は不幸なことにもプレイヤー自身を苦しめるものであった。本来は痛覚設定を切れば何とも無いはずだったのだが、オセによって急激に上げられたレベルと固有スキルによって彼は感じるはずのない熱を感じるようになってしまった」
「……オセが治すのを約束したとか言っていた」
「それはオセの嘘……というか方便だろうな。オセが倒れ、経験値が返還された今は『火炎達磨』も熱を感じていないはずだとは思うのだが……こればかりは私にも分からない。シズネ君、直接闘った君はどう感じたかね?」
「……済まなかったって。……最後は苦しみよりも解放された顔をしていた」
シズネは思い出す。
ダラークの放った氷柱を。あれは止めというよりも、埋葬というよりも、火の無くなった『火炎達磨』を冷やそうとするためであったのではないか。
だとすれば、彼がもし冷たいと感じたのならば……解放されたのかもしれない。
「ならば、彼も熱の苦しみから逃れられたのかもしれぬな。だが、それなら尚更このゲームには復帰しないかもしれない。使い切れない、強すぎる能力を前にまたもや再熱する可能性があるのだからな」
「……そう」
彼だけは、『火炎達磨』だけは闘うことに苦痛を感じていた。
能力を使えば使うほど苦しむ。熱を上げるほど熱くなる。
しかし、闘わなければこの熱からは解放されないと我慢して闘っていたのだ。
それを思うと少しだけ、『火炎達磨』を理解した気になるシズネであった。
「まあ彼らが続けていればそのうち出会うだろうさ。この世界は広いようでいて狭い。彼らに闘う意志があるのならどこかで闘うだろう。彼らが君達を探すのならどこかで出会うだろう……私がこうして出会ったようにね」
それでも良好な関係を持てるならまだしも、他の4人では微妙なところだ。
竹田も含めてだが積極的にプレイヤーと闘っていた彼らはPKと通じるものがある。ダラークのような、知り合ってしまえばそこまで畏怖を感じないPKもいれば、出会うだけで逃げ出してしまいたくもなるPKもいることであろう。竹田は前者であっただけだ。
「さて、次の敵だ。気を引き締めていこうかね」
話自体のキリもいいところで、新たなモンスターが現れた。
竹田自身もそれ以上は彼らについて知ることも無いため話を終わりにさせる。
「恐らく、この敵を倒せば最後の中ボスといったところだろう。さあ、準備運動と行こうではないか!」
荒野地帯特有といったモンスターひしめく中でリュウキ達は最後の関門に辿り着いた。
「私は次のモンスターについては存在する、ということしか知らない。君達は何か知っているかね」
「確か……地面を泳ぐとか」
「えー? 私は防御を無視する攻撃が出来るって聞いたよー?」
「……私は光が弱点だと聞いた」
「ふむ、被る情報は無しか。むしろいいことだとは思うがね。それだけ多い情報を得ているということなのだから」
「地面を泳ぐということは魚系のモンスターなんですかね……」
「そうとは限らないだろう。何せ海ではなく地面なのだから。地面、つまりは地中を移動する生き物というのは君達が考えよりも多く存在する――」
地面を泳ぎ、防御を無視し、弱点が光。
それらを統合した姿をリュウキ達が思い浮かべた時、それは現れた。
恐らく4つ足のモンスター……なのであろう。恐らく、とはいうのはそのモンスターの前足2本は後ろ足とは形状が異なっていた。それでどうやって四つの足全てが同じ形状であるようにバランスを取っているのかが不思議であったが、不意にそのモンスターが後ろ足のみで立ち上がると、前足での支持がさほど必要なかったことを知る。
「モグラ……なのかね?」
見た目だけであれば……前足を除けばモグラに良く似ていた。とは言え、現実世界でもあまりモグラとは縁のないリュウキら三人は恐らくモグラなんだろうな程度であったが。この中で本物のモグラを見たことがあるのは竹田だけであった。
しかしモグラとは決定的に違うものがある。それが前足。
「ドリルって……生き物じゃないだろ……」
後ろ足はそれほど見るべきところもないが、前足は別。
前足の手首から先、その形状は何処からどう見ても螺旋状に渦巻いた金属であった。
生き物を後から無理やり前足だけドリルと交換したかのようなその形状に思わずリュウキは言葉を漏らしていた。
「まさか……回るのか?」
リュウキがそう零した瞬間、ドリルは回り出す。
手首から先は関節さえ無視したかのような動きでドリルは回る。
「キイィィィィィィ」
甲高い鳴き声を上げたそのモンスター――モグラは後ろ足のみで真上に跳ぶと、そのまま地面に向けダイブする。
モグラが地面に激突する瞬間、前足のドリルが地面にぶつかるとまるで地面が水であるかのように抵抗を無くし、モグラはそのまま地面へと潜っていった。
「……『ロックプロテクト』」
シズネは反射的に魔法を使っていた。指定する場所は四方。それぞれに岩を浮かべる。
「キイィ!?」
声は背後から聞こえた。
見ると、モグラの頭部とシズネの岩が激突し、その痛みによってモグラが悲鳴を上げたようである。
「……良かった」
シズネが安堵する。
だが、
「まだ安心するのは早いぞシズネ君」
竹田の操る木がシズネを引っ張った。
「キイィィ!!」
モグラのドリルがシズネの岩に当てる。すると、岩すらも地面と同様に抵抗を無くし、ドリルが進むままに砕け散った。
岩がモグラを阻むこともなく、強靭な後ろ足で加速したモグラはそのままドリルを構えシズネへと突進する。
それを竹田が防御ではなく木を使い避けることでモグラの攻撃を凌ぐ。
「……地面を泳いで」
「防御無視、か。シズネ、岩は魔法じゃなくて攻撃重視で行こう!」
「ドリルのとこ以外を攻撃すればいいんだねー!」
「なるほど、強い敵だ。強敵との闘いがこれほど心躍るものだとは……まだまだ私も若いということなのだろうか」
とりあえず明日は夏コミ行ってきまっす!




