85話 4人目
いやぁぁぁ台風来てるぅぅぅ
週末に控えた大事なイベントがぁぁぁ
その前に木曜日の水着イベですな!
石も呼符もばっちしですぞ
『ロック・ザ・タートー』を倒せたリュウキであったが、それとは別のことが気になっていた。
中ボスを倒したことによるレアアイテムや装備のドロップや膨大なゴールドの分配、入手した経験値についてではない。リアルでも関係の良好である3人はそれらは共有財産であり戦闘スタイルも被っていないため、例えば速度に関係するアイテムであればリュウキ、と分配している。
中ボスを倒してもまだ次の街への道のりが半分残っていることでの憂鬱感でも、HPやMPだけでなく集中力を使い切った現在新たなモンスターが現れても対処しきれないことでもない。むしろリュウキは半分終わったと喜べるタイプの人間だ。そしてこの場は『ロック・ザ・タートー』の縄張りであったためすぐさま他のモンスターが押し寄せるといったことは無い。休憩するくらいの時間ならあるだろう。
ならば何を悩んでいるか。それは良く言えば助力者、悪く言えば乱入者である竹田のことである。勿論、助けてもらったことには感謝している。マカともかつて敵対していたはずなのに――マカだけでなくリュウキやシズネといった全プレイヤーと敵対していたが――今はなぜかマカも懐いていることから悪い人間ではないようだが、それでも気がかりといえば気がかりである。
「あの……竹田さんでしたよね?」
「ああ、そうだ。そういう君は……一度会ったことがあったね」
「リュウキです。こっちはシズネ」
「……よろしく?」
「よろしく。ふむ、なぜ私がここにいるか、それが気になっているのかね?」
「え、ええ。まあ……」
『五行同盟』のメンバーは全プレイヤーの敵であった。
だから対峙された。
だから退治された。
多くがその顔を見たくもないと思い、『五行同盟』のメンバー自体も暴れに暴れたことでかつての居場所すらも無くし、すでにこのDNOという世界から去っていると思っていた。
「竹田さんは何でゲームを止めなかったの?」
と、マカがストレートに質問した。
リュウキは内心冷や汗を掻きながらも、ナイス質問と思いながらその返答を待つ。
「なぜ私がゲームを止めていないか、か……それはねマカ君。私だけが、他の『五行同盟』の彼らとは明確に目的が違っていたからだよ」
「目的……?」
目的といえば彼らはひたすらに暴れていた。
多くのプレイヤーを殺し、多くのプレイヤーの財産を破壊していった。
暴れることこそが、殺すことこそが目的であるとリュウキは思い込んでいた。根っからの悪人であるから……もしくは何かしらの復讐があったから暴れていたのだと。
「マカ君に止められて思い直した今となっては恥ずかしいのだがね……私の目的はあくまでも人探しだ。娘を探している。その手掛かりがこのDNOにいるということ。だから、私はこのゲーム内であえて名乗りをあげることで娘から見つけてもらおうと思っていたのだよ」
殺すことも壊すこともあくまでも目的のための結果に過ぎず、そこに意思はないと竹田は言う。
殺すことに楽しみを覚えず、壊すことに快楽を感じない。
「ただ、強い者と闘った時はさすがに心が躍らざるを得なかった……そう、君のようにねマカ君」
「えへへー」
褒められたマカは体をくねらせる。
「そういえば娘さんを探しているってアスタロトに挑戦する前……初対面の時に言っていましたね」
「……有名になれば娘が竹田さんを見つけてくれるってこと?」
「ああ、そうだよリュウキ君、シズネ君。だが、それも無駄だったようだ。日本を出た娘のいるサーバーは昨日までは日本サーバーと繋がってはいなかった。出会えるわけが無かったのだ」
サーバーの管理上の問題。
竹田の娘がどの国のサーバー上で遊んでいるにしろ、それが日本でないのならサーバーも縁も繋がりようがなかった。
「今日からだよね! 色んな国の人たちと遊べるの」
「聞けば翻訳システムすら仕上げたと言う。次第に繋がるサーバーも増えるはずだ。私が娘に出会える日もそう遠くはないはずだ……尤もこちらも向こうも見つけられるかが問題だがね」
すでに竹田は『五行同盟』ではなく、力も以前より衰えている。オセとの闘いは日本のサーバーでは有名になったかもしれないが、他国では話のうちの1つに過ぎず、『五行同盟』くらいは知られようとその1人1人は知られていないかもしれない。
「だったら、これから有名になろうよ! 最前線で闘うとっても強いプレイヤーとして!」
マカが提案する。
かつての敵対者が最前線として活躍する。それは見ようによっては竹田にとっても、他のプレイヤーにとっても願っても無いことかもしれない。
だが……
「とっても強いプレイヤー、か……しかし今の私は弱体化している。多くのプレイヤーを倒したことで得た経験値は私の中に残っているが、オセから貰った経験値はすでに返還され、特注品であった木の苗もマカ君との闘いで使い切ってしまった。今の私は木々を操る程度は出来てもそれ以上のことは出来ないよ」
「木々を操る程度って、それであれだけ強かったじゃないですか。それに、今だって俺達を助けてくれて、『ロックラビット』相手に完勝したのだって竹田さんが強いからじゃ……」
「完勝とは言えね、リュウキ君。私のMPはすでに空さ。全力を使い切っての勝利だ。君達を探すためにここまで1人で来ることだって正直、困難だったよ」
竹田の能力は本来、連戦に向いていない。
当たり前のことではあるが、木は動かない。その場に生えるだけだ。
闘いに使用した木の苗は使い捨てであるし、使ったあげく残った木はその場に残していかなければならない。
「手持ちの残りの苗も僅か。帰ることも進むことさえも出来ない私だ。全力で逃げればあるいはどちらかに進めるかもしれないが、掴まったら最後。前衛でも後衛でも無い非戦闘職の私にはどうすることもできない」
多くのプレイヤーは竹田の強さから戦闘職と勘違いするが、竹田はあくまでも木を育てる樵である。
木を育て木を操る。それ以上でもそれ以下でもなく、それ以外のことは出来ない。
「じゃあ……」
リュウキはシズネをマカの顔を見る。
シズネは小さく頷き、マカは大きく笑っている。
「俺達と一緒に行きませんか? 俺達だってまだまだ弱いです。スピード重視の俺に攻撃重視のシズネ、それに手数重視のマカ。そこに木を万能に操れる竹田さんがいれば俺達にとってもありがたいです」
「うん、一緒に行こー!」
「……私1人だとこの2人を制御するのは大変」
リュウキに続いてマカとシズネも賛同する。
「いいのかい?……なんて返すのは野暮だな。ありがとう……これだけは言わせてくれ……本当にありがとう」
こうして3人は4人となった。
竹田は涙は見せなかったが、心の中で深く感謝をする。
「さて、私はMPだけならある程度は回復したが……君達はどうだね?」
「俺はあまりMPを使わないんでHPさえ回復し終えたら大丈夫です」
「私も回復したー!」
「……私も。……体力は使わなかったし、MPも使わなくても闘える」
アリアとラビはすでにシズネが仕舞っており、今頃は回復に専念しているだろう。何だかんだで最も活躍したのはこの1体と1匹のテイムモンスターであり、彼らがいなければあそこまで『ロック・ザ・タートー』の体力を削ることも、モンスターからの攻撃を防ぐこともできなかったはずだ。
「そうか、では出発と行こうか」
リュウキ達は腰を上げる。
残り半分。これがようやく半分と感じるか、それとももう半分と感じるか。どちらにせよ残りの距離は変わらない。
毎回サブタイトルが一番苦労している
そしてその結果、これでいいやって(投げやりな)感じで決める
そして久しぶりに会話だけで一話書けたか
バトりてえ、早くバトりてぇよ……




