81話 岩兎
なんだか三連休ともあってたくさんの方にお読みいただいているご様子で
あ、ここから新章です
「確か今日からだったっけ? 海外サーバーとの統合って」
「……そのはず。……でも一気に同じ街にプレイヤーが増えないように、別の街から海外のプレイヤーはスタートするって」
「すぐ会えるわけじゃないんだー」
「まあそうなるよね。海外でも、国によって攻略状況は違ってたらしいけど、それはどうなるの?」
「あ、それ私聞いたことあるよー。日本と同じにするんだって! だからみんなオセまでは倒したことになるの」
「へえ。でもそれじゃぁ、オセと闘えないプレイヤーもいるってことになるのかな」
まああのオセと闘いたいかって言われるとそれは別の話になるけど。
『五行同盟』のそれぞれのプレイヤーならまだいざ知らず、オセ自体は隠れていたっていう話だから、もし闘うとなったらオセを探すところから始まるんじゃないだろうか。それどこか、それが一番の難題かもしれない。
「えっとねー、オセもだけど、今までのプレイヤーボスぜーんぶが、AI化してボス部屋にいるんだってー」
「ってことは、アスタロトのステータスと二つ名をそのままにしてもう一度闘うことができるってことか」
「……あれを。……次こそは私1人でドラゴンを倒したい」
シズネは何かに燃えるように拳を堅く握りしめていた。
……うん、まああの時一番活躍したらしいからね。ジュガさんを辛くも助けたとかで。
俺達は今、新たに解放された街を目指している。
その途中に現れるモンスターは『五行同盟』に比べたらどれも強敵とは言えないけども、いくらでも湧いてくるため、キリがない。
まあそれでレベルを上げられるならいいのだけれど。
「……リュウキ、次のモンスターが来た」
「ええっと、あれは……兎か?」
「ラビみたいなふわふわしたやつじゃなーい! なんかゴツゴツしてる!?」
モンスター名は『ロックラビット』か。
兎の敏捷性と岩ならではの頑強さを持ち合わせているようだ。
「『サイドクロウ』」
「『ロックバースト』」
「『スラッシュ』!」
俺の拳をすり抜け、シズネの岩を躱し、マカの剣を避ける。
「うー! すばしっこすぎるよー」
「……地図上ではここが次の街との中間地点」
「なるほどね。こいつが中ボスってことか」
次の街までに立ちはだかるモンスターか。
ラビもとい、『ブラッドラビット』のように二つ名を持っているのかは分からないけど、ここは全力で行かなきゃ倒せないようだ。
「俺が二つ名を使って牽制するから2人は止めをよろしく」
「……分かった」
「おっけー!」
2人に指示すると、すぐさま了承を得られた。シズネもマカも、このままじゃ勝てないくらいには相手が強敵だということを分かっていたのだろう。
「『悪鬼変身』」
俺の両腕両足が黒く染まる。
また一段と黒く、暗くなり、そしてその侵食している箇所も増えている。
これは二つ名のレベルが上がったことと、そしてこの間ユークリッドとの闘いで固有スキルと使った影響なのだろう。
……いや、こんな言い方してしまうとまるでこの黒い箇所が伝染病か何かみたくなってしまうけど、これは良いことだ。黒く染まった箇所に応じて攻撃力は増え、更にはその箇所の防御力も上がっている。つまりは、防御できる箇所が増えているのだ。
ただ1つ、懸念材料があるとすれば、
「この翼、走る時には邪魔なんだよなぁ」
固有スキルを使い生やした翼。
飛ばないときは折りたたんでいるが、それでも空気抵抗が増え、それだけ走る際に体を重くしていた。
「お兄、前! 前!」
「っとと」
翼を見ていたら『ロックラビット』がこちらへと弾丸のように突っ込んできた。
「……なら、力勝負だ。『サイドクロウ』」
『ロックラビット』の頭部がリュウキに衝突する……瞬間に、俺の拳が『ロックラビット』の腹を叩いた。
「ごめんね。力勝負って言ったけど、俺の攻撃力と、君の防御力の話だから」
俺の拳が『ロックラビット』の腹にめり込む。同時にその背中が盛り上がる。
「ここだ!」
そのままアッパーと同じ要領で『ロックラビット』を空中へと撃ちだす。
「シズネ! マカ!」
「まずは私から! 『スラッシュバーン』!」
マカの剣が『ロックラビット』を捉える。
先ほどは避けられたその剣も今は空中にいる身としてはジタバタと手足を泳がせてもどこへも動けない。
剣が『ロックラビット』の体を削り、HPを減らす。その量は僅かというべきか2割ほどであったが、それで十分であった。
剣と岩が衝突すれば大小なり衝撃が走る。そして『スラッシュバーン』によって生み出された剣の威力は『ロックラビット』の体に走らされる衝撃を存分に大きくしていた。
衝撃によって『ロックラビット』の体が固まる。
「……そして私が。……『ロックインパクト』」
動けない『ロックラビット』の体へと巨石が降る。
岩と岩が衝突すれば、それは共に砕け散る。
シズネの放った巨石が砕け、その下にいた『ロックラビット』の体も同様に砕けポリゴンと化していた。
「なんだか悪いことしちゃった気分だなー」
「……兎を倒すのって罪悪感がある」
「あれ? 散々『ブラックラビット』刈らなかったっけ?」
「……あれはテイムするためだから仕方なかった。……そのおかげでラビを仲間にできたし」
「……だね」
話ながらも『ロックラビット』からドロップしたアイテムを確認していく。
見たことも無い素材や、どこかで似たようなものを見た気がするような素材まで、恐らくはこのフィールドでしか手に入らないものが手に入る。
これこそが冒険というやつなのだろう。
「ようし、じゃあ次々にモンスターを倒して新しい街に行こう!」
「おー!」
「……おー!」
掛け声に合わせてマカとシズネも拳を掲げる。
でもこの中ボスを倒したから次に現れるのは一般的なモンスターなんだろうな。
そう思っていると、
「……ん?」
「あれー?」
「……たくさん出た」
モンスター名を知らせるカーソルには
『ロックラビット』
『ロックラビット』
『ロックラビット』
『ロックラビット』
『ロックラビット』
……合計5体の『ロックラビット』が現れた。
「ちょ、まっ!?」
さっきあれだけ苦戦したモンスターが5体。
「もっかい! 『悪鬼変身』」
「……『地底神王』」
「『舞空剣技』!」
はい、二つ名を全員使わざるを得ない状況となりました。
シズネに至っては固有スキルを使うかすら検討し始めていた。
「いやー強かったねー」
「……マジでやばかった」
「……リュウキ、囮の役割お疲れ様」
「……5体を同時に相手するのって無理だね。2匹にまで減った時の幸せといったら」
「これなら1体だけ現れてもへっちゃらだねー!」
俺のHPだけはあわや全損するのではないかと思うまでには減っていたため、一時休憩を取ることにした。
丁度大きな岩場があり、そこが椅子のようになっていたためそれぞれ腰を降ろす。
「でも結構アイテム集まったな。装備品そろそろ強化しようかな」
俺が今装備しているのはラビをテイムした時に作った『スカーレットメイル』というものだ。ちょくちょく素材アイテムをギャブーさんという鍛冶職のプレイヤーに持って行って強化してもらっているのだが、そういえば最近は訪れていない。
「確かギャブーさんって次の街にいるんだっけ?」
フットワークがとてつもなく広い。
ちなみにこれまでに解放された街にも支店という形で店は残してあるとか。卸店の役割しかないらしいけど、それでもあのピーキーな性能の装備は売れているらしい。
まあ魔法使いにATKは防御力よりもMPだし、タンクはMPよりも防御力だしで、いらないステータスはマイナスになってでも長所を伸ばせる装備を求めるプレイヤーは多いのだろう。
「……ん。……どちらにしても行く道のモンスターは倒すし、そのアイテムで強化してもらおう」
「3人分だからたっくさん集めないとねー」
まああるに越したことはないか。
それにここが最前線に近いフィールドなのだから、それから作られる装備も当然ながら良いものに仕上がるはず。
ラビの時のように、ボスモンスターから……いや、ネームドモンスターからドロップするアイテムであれば更に強い装備になるかもしれない。
「……ん?」
「どうしたんだマカ」
「そういえば、あの岩のウサギさんってたくさんいたから中ボスとかじゃなかったんだよね?」
「あー、まあ。そうなるのかな」
あれだけいたのだから中ボスではないのかもしれない。ただの強いモンスターだったのかも。
「……だとすれば」
そこでシズネが何かに気づいたようだ。
「だとすればお兄、中ボスって別にいるんじゃないの?」
「……あ」
と、足元の岩場が揺れ出した。
「地震かな?」
自分で言って何だが、たぶんこれは地震ではない気がする。
「……リュウキ、マカ。……退避」
シズネが言うや否や、岩場から飛び出す。俺とマカも合わせて飛びのく。
「……これは」
「でっかいねー!」
「いや、でかすぎだろ!」
足元からせり上がってきた岩。俺達が今まで座っていた岩も、足元の岩場も全てソレの一部だった。
2階建ての一軒家にも匹敵する巨大なモンスター。
その名を『ロック・ザ・タートー』
タートルのところだけ何故か発音良く明記されているそのモンスターこそが中ボスであり、ネームドモンスターであった。
……私の一番力入れてる動物のお話をね、ぜひともね、読んでいただきたいのだけどね
URLとかって貼ってもいいのだろうか
貼っちゃうね
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