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二つ名オンライン  作者: そらからり
2章 同盟者
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66話 剣と木

ん? 何かブクマちょっと増えてる

投稿してなかったんだけどな、最近

 私に今足りないのは覚悟とか理屈とかそんな精神的なものではなく、ただただ攻撃力の問題だけ。

 『舞空剣技』は手数とそれぞれでスキルを使えることが良いところだけど、能力の関わった防御とかには通用しなくなっちゃう。手数は強固な個の前ではただの有象無象ってこと。

 私が勝てるのは手数だけ。そして手数で勝てない相手には決して闘いでも勝てないと思う。だって、


「今がそんな状況だから」


「違うぞ小娘よ。勝てない状況だった。だった、だ。勝てないのは過去のことであり今は違う。我と組んだのであろう? ならばこそ貴様の力を存分に振るえ。我は守りに徹しよう。小娘一人くらいならば守るのは容易い」


 私の固有スキルを知っているの……?

 でも、たぶんだけどアレを使わなきゃ勝てない。

 剣客さん?はさっき竹田さんの木を斬っていたけど、あの竹田さんに巻き付いているのだけは斬れていなかった。


「うん、わかった! だけど私の名前は小娘じゃないよ。私の名前はマカ! 二つ名は『舞空剣技』、こうして空飛ぶ剣を操れるから手数だけは負けない!」


「……」


 あれ? 黙っちゃった。

 寡黙な人なのかな? でもさっきはたくさん喋ってたし……。


「……二つ名の名はともかくその詳細は他人に明かすな。我と貴様、マカはあくまで共闘しているだけであって、仲間などでは決してない。PKであると言ったであろう? ここを出たら貴様が次は我の獲物になるかもしれんのだぞ」


 ああ、そうだった。

 ダラークさん達が優しいから忘れてたけど、PKって怖い人たちの集団だった。

 でも、大丈夫な気がする。上手く言えないけど、剣客さんは良い人だ。


「それでも、闘う時は1対1で闘うんだよね? なら大丈夫! 私も強い人と闘ってみたいし!」


 人に迷惑をかけないなら闘うのだって構わないはず!


「ふん、まずは目の前の敵だ。マカ、貴様の力は近距離の方が力を発揮するのか?」


「中距離でも大丈夫……だけど、もう少し近づきたい。ここじゃあ少し遠い」


「分かった。貴様はただ進め。我が道を切り開く」


 そう言って剣客さんは蠢く木々を切り払って進んでいく。

 不思議なことに切り払った木々はその後こっちに近寄ってこない。

 まさか、剣客さんを怖がっているわけじゃないよね……?





「ここ! ここなら竹田さんに届く。剣客さん、1分だけ私を守ってて!」


「ふむ、心得た。『刀身残心』」


 剣客さんが刀を振るう。それに合わせて木々の動きが止まる。

 止まる? でも、後から伸びてくるから止まるはずはないんだけど……ううん、まずは自分のことをやらなきゃ。


 アイテムボックスからさっき置いてきた剣の代わりを取り出す。

 いや、これは代わりなんて言えない。

 片手剣もなく両手剣でもなく、これは大剣。

 両手で持っても十分に振れないほど重くて、普段は使うことを躊躇う。


 『ウェイト・ブレイド』。それがこの剣の名前だ。

 普通の剣と違うところはこの剣には1つの能力があるところ。

 使用者の筋力、つまりはATKを超えた値を必要とし、移動能力を大きく失わせる代わりに大きく攻撃力を増すという能力。

 ちなみに私の二つ名で装備したけどその場から動こうとしてくれなかった。どうも私自身が持たなくちゃダメだったみたい。


 なんで今、この剣を装備したか。

 それは私の固有スキルの大元がこの剣であるからだ。


「固有スキル、『コレクターズ・ウェポン』!」


 重くて振り上げることすらつらい大剣を真上に持ち上げる。

 すると、大剣に引き寄せられるかのように空中を舞っていた8本の剣が1本ずつ大剣の剣先にくっついていく。くっついては大剣に吸収されて長さと重さが増していく。それもそのはず、この固有スキルは『舞空剣技』という二つ名とは正反対のスキル。

 一撃にかける、そのための能力である。

 速さも防御も手数も技術も、何もかもを捨てて攻撃力だけに……いや、くっついていくから長さも増えるけど、とにかく『舞空剣技』とは違って使いづらいスキルである。


 『舞空剣技』の最大の特徴である空を舞う剣が全て大剣に吸収されたとき、大剣の長さは元の9倍になっていた。


「完成! ……剣客さん!?」


 思わず叫んでしまっていた。

 剣客さんの真正面から1本、そして左右から2本の木々が剣客さんを貫こうと迫っていたから。

 あの木々を間近で見ていた私には分かる。竹田さんの能力は私と同じく手数で勝るもの。

 私だから対応できたけど、剣客さんが危ない!

 真正面の木を斬り落とした剣客さんの左右から、木々が貫こうと鋭く捻じられていく。


「案ずるな、小娘よ……いや、マカか」


 剣客さんは全く左右を見ていなかった。そして刀を振るってもいなかった。

 だけど、2本の木々は剣客さんの手前、1mくらい前で絶たれた。


「先ほど貴様が能力を言ってしまったからな、我も言わないと闘いはできん。……我の二つ名、『刀身残心』は刀の軌跡を残す能力を持つ。残せる時間は軌跡の数、長さにもよるが、左右の2つくらいならしばらくは持つ。さあ、決着をつけるがよい。その剣でなら十分だろう」


 剣客さんは私の大剣を見る。

 ……腕が震えてきた。元の大剣よりも更に8本分の剣が加わっているから当たり前だけど、早いところこれを振り下ろさなくちゃ。


「竹田さん。娘さんはきっと竹田さんのことが好きだと思うよ。だけどね……やっていいことと、やっちゃいけないことがあるんだよ!」


 大剣を振り下ろす。


「しかし……外国へと旅立ってしまった娘に会うにはこの世界だけなんだ。だから……『植木職人』!」


 地面から幾本……100を超えるくらいの木々が伸び、私の振り下ろした大剣を受け止めようとする。

 だけど、そのくらいじゃ私の剣は止められない!


「『コレクション・ウェポン』で伸びた大剣の長さは9倍!」


 私と竹田さんの間の距離は20m。これなら届く!

 そして、


「上昇した攻撃力も9倍!」


 手数があるという事はその分、力がバラバラだということ。

 私の場合は剣スキルで補ってきたけど、この固有スキルはそれら全てを纏め上げる。


「いっけえええええ! 『スラッシュバーン』‼」


 さっきの竹田さんの言葉で気づいてしまった。

 竹田さんは少なくとも今すぐに娘さんにこの世界では会うことができない。

 悲しいけどこのDNOでどれだけ強くなっても娘さんに会うことは叶わない。


 だから、この一撃で終わらせる!

 大剣は斬る、というよりもその質量で竹田さんを守る木々を押しつぶしていく。


「ぐ、うぉぉぉぉぉ‼」


「うりゃぁぁぁぁぁ‼」


 剣と木がぶつかり、少し押し返され、それでも必死に力を込めていたら……抵抗がなくなった。


「勝った……」


 あれだけあった木々が消えていく。

 森にいるかと思っていたけど、ここは荒野だったっけ。


「また会おうね竹田さん……」


 つくられたフィールドである荒野が崩れ行く中で私は思う。

 やっぱりちゃんと伝えておいた方が良かったのかな。


「このゲームはまだ海外サーバーとは連結してないから娘さんには会えないって……」


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