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二つ名オンライン  作者: そらからり
2章 同盟者
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61話 植木職人

ようやく家に帰れたから植木職人さんの話投稿できたー

 私は自然を愛している。とりわけ植物を。木を。

 人は植物の大切さを忘れている。その偉大さを。雄大さを。壮大さを。


 考えてみてほしい。地球上からもし植物が消えたら、人は……いや、全ての動物は死に絶える。人が空気中から酸素を奪い二酸化炭素を吐き出しているのとは逆に、植物は空気中に酸素を供給してくれているのだ。

 動物が誕生する以前から地球を支配していたのは植物だ。だが、その支配者は静かに、ただ後に増殖してきた我々動物を見守ってきただけ。

 後からやってきたくせに先駆者をなんとも思わず、燃やし、無意味に伐採し、害してきた動物……とりわけそれは人間であるが、植物はそれでも何も訴えない。


 私が植物を愛するきっかけとなったのはやはり私の家系が代々行ってきた仕事のせいだろう。

 植林活動を生業としてきた私の家はとても貧しかった。

 ほとんどボランティア同然であり、山に棲む獣を狩り、実った果実を植物から分けてもらうことで生計を立ててきた。


 私は生まれたときからこの生活の中にいた。だからこの生き方に困ることはなかったし、誇りにさえ思っていた。

 だから、妻もこの生活を気に入ってくれるものだと思っていた。


 出会いは今となっては大したものではない。登山に来ていた彼女が転倒し怪我していたのを私が助けただけだ。私の人生の大半は山の中だ。だからこういったこともよくある。足を捻った彼女を私はそのまま山の下まで運んでやり、別れた。

 これで、終わりだと思っていた。だが、その後再び彼女は山に訪れた。私に会いに来てくれたのだと言う。初めてであった。この時、私も恋に落ちていたのだろう。


 両親の反対や価値観の違いなど紆余曲折あったが、それでも私たちは結婚した。自分でも思っている以上に私は彼女のことを好きになっていたようだ。

 それからは子供を授かり、順風満帆なこれ以上ないほどの幸せな生活を送っていると言えた――そう思っていたのは私だけであったようだ。


 ある日、また今日も自然が増えたという達成感とともに帰宅した私を待っていたのは二枚の紙きれであった。

 一枚目は離婚届であった。妻の名と印鑑がそこにはあり、私は突然の出来事に呆然としていた。そして二枚目は、


『あなたの自然を愛する姿を私は好きになりました。だけどあなたが私のどこを好きになったのかが分かりません。一度別れ、それでも私を好きでいてくれているのならまたやり直しましょう』


 そう、書いてあるのみであった。

 おかしい。そう思った。私は間違いなく妻を愛していた。娘を愛していた。

 分からない。なぜこうなったのか分からない。



 しかし私は妻を探しに行くことはできなかった。山を離れるわけにはいかない。私がいなくなれば誰がこの山を、自然を守るというのだろうか。

 山から動けないまま10年余りが経った。

 実は妻とは連絡がその後取れていた。向こうから一通の手紙が届いたのだ。

 私はすぐに返事を書いて記載されていた住所に送り返した。

 少し遠いが、それでも私のことをまだ覚えていてくれて嬉しかった。


 手紙には自分たちは元気でやっている。まだ自分たちのことを愛しているのなら返事を返してくれと書いてあった。

 私は彼女と娘に対しての愛情を込めた手紙をそれから何通もやり取りをした。 

 離婚届はまだ出していないためまだ彼女とは妻。そう私は思っていた。彼女もきっとそう思っていてくれているのだろう。


 妻との仲は概ね良好であった。住む場所さえ違えどそこに愛情があったのだから。きっと生活に馴染むことはできないのだろう。だけど問題はない。愛し合っているのだから、文さえ届けばそれでいい。

 それだけでよかったのだ。


 

『そろそろあの子は留学します』


 その一文と同伴された娘の写真を見たとき、ふと思ったのだ。私は娘とどのくらい関わったのだろうか。手紙は妻と。愛を伝えあったのも妻とだ。

 ならば娘に対して私は何をした? 何もしていないのだ。

 返事には今度会えないかと書いてみた。娘と3人で。また昔みたいに食事でもどうかと。


 そして再び返ってきた妻からの手紙。それは余りにも無情であった。


『残念ですが、娘はもう日本にはいません。あの子は最後まであなたに会いたいと思っていたようです。手紙ではなく、あなたが会いに来てくれれば間に合ったのではないでしょうか?』


 まさにその通りであった。なぜ手紙で伺ってしまったのだ。

 私と娘は親子。会いたいときに会いに行けばいいではないか。


 私は娘との絆を失ってしまった。同時に妻からも失望されてしまっただろう。


 大切な者を再び失い、毎日を退屈に感じていた。

 失ってから気づくとは小説の中だけの話だと思っていた。


『あなたの生活には変化が無さすぎるのだと思います。たまには娯楽の趣味を持ってはどうですか? あの子も最近ゲームを始めたそうです。あなたも同じゲームを始めてあの子が驚くぐらい強くなって会いに行ってあげてください』


 あるとき、こんな手紙が妻から届いた。

 ゲームか。私の家には電気は流れているが、ほとんど使われていない。

 だが、電気などの問題よりも金銭的な問題もあった。毎日の生活すら何とかやっているのだ。10万近くも出せる余裕などなかった。

 だが後日、そのゲーム機器が妻から送られてきた。

 一緒についてきた手紙には、


『あなたが毎月欠かさず送ってくれたお金で勝手ながら買わせてもらいました。これで、あの子と遊んでやってください』


 私が送って金など微々たるものだ。毎月送っていたとはいえ、それもこの機器を買ったのなら帳消しになってしまうほどに。


 だがありがたく使わせてもらおう。これで私はようやく私は娘に会えるのだ。





 ……おかしい。娘に一向に会える気配がない。

 ログインすることはできた。名前も苗字をそのまま使った。二つ名も得た。職業も得た。

 だが娘はどこにもいない。

 プレイヤーボスというものは倒せなかったが、少しは闘えるようになった。いつでも娘に会える準備はできた。


「だめだね、全然見つからないよ」


 最近、友人になった豹の仮面をつけたオセというプレイヤー。

 彼は情報収集能力に長けているらしく、一緒に私の娘を探してくれていた。


「ごめんよ、僕の力が及ばなくて」


「いや、君はこんな私のために良くやってくれている。きっとまだ探していない場所があるのだろう」


 むしろなぜ一緒に探してくれるのか。

 分からない。

 いつの間にかこの男は私と友人になっていたのだが、まあ娘を探すのを手伝ってくれるのなら問題ない。


「いつか君にもこの恩を返さなくてはな……」


「ん?」


 独り言が聞こえてしまったようだ。


「恩を返してほしくて手伝ってたわけではないのだけどね……そうだ! 君に1つ僕のやっていることを手伝ってほしい。なに、君にももちろん利益はある」


「利益とは? 別にそんなものなくとも手伝うが」


「いや、実は君にはもっと強くなってもらわなくては僕の手伝いにはならない。だから君には僕の力を貸すよ。僕の、プレイヤーボスとしての力を」


「何をさせる気だね。それに、プレイヤーボス? ……いや、そこに関しては聞くまい。君にも事情があるのだろう」


「ありがとう。さすがは僕の友人だ。少し闘いをしてもらう。相手はこの世界のプレイヤー達。仲間もいる。君も簡単には負けないだろう」


「……さすがにプレイヤー全員を相手にするには私には無理ではないかね?」


「そのために力を貸すんだよ。それに、君が闘って強いと知られれば君の娘さんにもそれは知られるんじゃないかい?


 それは……そうかもしれない。

 私が会いに行くのではなく、向こうから会いに来てくれるのを待つ、か。


「分かった。やろう。微力ながら、私の力を使ってくれ」


 そう言って私とオセは硬い握手をしたのであった。


できればこのまま闘いまで書きたい…というか書けてるんだけどね。諸事情あって書き写さなければならない

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