58話 金属光沢
前回の、話数間違えてましたね……
攻撃とは最大の防御。おかしいとは思わないか?
防御こそが最大の防御だろう。攻撃をするよりも防御をするほうが防御をしている。それなのに攻撃こそが最大などどうかしている。
だから俺が選んだ職業は剣士であるが、武器は大盾のみ。完全にオーダーメイドの俺だけの攻撃判定のついた大盾である。俺は大盾を振り回し、受け止め、弾き、吹き蹴飛ばす。
「さあ、どこからでもかかってこい!」
今俺の目の前にいるのは『オオハリネズミ』。身体から無数の針が生え、それを飛ばして攻撃、または体当たりをして針で串刺しにしてくる厄介なモンスターである。
「『金属保護』」
だが、俺には関係ない。
『オオハリネズミ』の針は確かに鋭く硬い。そして全身が針で守られているため近づけば容易に串刺しにされてしまうだろう。
だが、俺の二つ名、『金属保護』は金属製の武器防具の防御力、耐久力を上昇させる能力がある。
「おらぁ!」
俺はそのまま『オオハリネズミ』へと突っ込む。針が俺の鎧に突き刺さろうとするがすべて弾かれていく。俺の鎧には傷一つつかない。
そのまま大盾を振り回して『オオハリネズミ』にダメージを与える。相手が怯んだら連続でダメージを与える。
「……どうだ」
10回ほど攻撃したところで一度大盾を地面へと下ろす。特注で攻撃判定を付けたから重いのだ。
「グキュ」
『オオハリネズミ』は未だ健在であった。HPは1割減ったかどうかくらいであろう。
「……クソッ」
これが俺の限界であった。
防御に専念しすぎたことで、特化しすぎてしまったことで攻めてに欠けているのである。
『金属保護』レベル1
アクティブスキル:武器と防具の防御力と耐久力を上昇させる
パッシブスキル:ATKが減少する
このパッシブスキルのATK減少。この減少する値が大きいのだ。今の俺の最大ATKのちょうど半分が減っている。しかもこれは職業レベルが上がり、ATKが上昇した後も同様に半分が減り続ける。50%減少が固定なのである。
そして大盾は攻撃判定がついたところで元々攻撃力のあるものではない。改良改造を重ねればもっと攻撃力のある大盾になるのかもしれないが、今の段階ではこれが手に入る最上級の大盾だ。
タンクとしてどこかのパーティに入れてもらえれば攻撃役を任せ防御に専念できるであろう。実際に声はかかってきている。だが、俺はこのスタイル、防御に特化した上で攻撃をして勝ちたいだ。
「だから、まずはお前を倒して俺の糧になってもらう」
そして再び俺は『オオハリネズミ』に向かって行った。
30分後、ようやく『オオハリネズミ』を一体倒すことができた。苦労した甲斐があったのか、経験値が大量に入りレベルが上がった。
「……何か攻撃手段があればいいんだけどな。大盾を持ったままできる攻撃手段はないものか」
大盾は両手で扱う装備であるため剣などの片手で扱う武器を持つことはできない。
魔法使いになって魔法を使えれば大盾を持ったまま攻撃できるかもと考えたこともあったが、それではステータスにおける防御力が大幅に下がってしまう。俺は防御力をそのままに何とか攻撃したいのだ。
「うーん……」
何かないかと辺りを見まわす。……何もない。しいていうなら森がある。
ヒントになりそうなものが景色にはないから今度はアイテムボックスを眺める。
「こいつのこの攻撃……俺でもできそうだな」
一つ、思いついたことがあったので、さっそく鍛冶屋のところで赴く。
「たーのもー」
「おう、何だい? こないだの大盾と金属鎧の調子はどうだ?」
ここは最初の街、ガラクサにある鍛冶屋だ。NPCの店であるが、俺にはプレイヤーとNPCの区別がつかない。とりあえず腕がいいなら問題ないな。
「実はこういう武器をだな――」
「ほうほう。たまに俺もつくるが、まあお前さんにはこれくらいしか使えないものな」
きっと練習は必要になるだろう。だが、これが俺なりのプレイスタイルであり、俺にしかできない闘い方だ。
さて、そろそろ実戦でもそれなりに闘えてきたのではないだろうか。
今まで30分かかった『オオハリネズミ』も20分で倒せるようになってきた。
この闘い方の弱点はあれだ、『オオハリネズミ』を定期的に狩らなければいけないことだ。
しばらくはここで闘うとしよう。
30体ほど倒したところでそろそろゲームを止める時間となった。一体20分かかって30体。後半はもう少しペースが上がったから8時間ちょっとか。
もういいだろう。俺の防御力に関する信仰心にも似た意地とも言えるこだわりは、もはやどうにもできない。
このまま闘いにくい闘い方を俺は自分で自分に課していくのだ。
「いいや、君は強くなれる」
突如背後から声がした。
「っ!? 『金属保護』!」
振り向きざまに……いや、振り向く前に俺は最も信頼を寄せる二つ名の能力を発動する。
振り向くとそこには一人の男が立っていた。顔は分からない。豹の仮面をつけていたからだ。
「……誰だ」
見るからに怪しい男。PKというやつだろうか。
「名前が必要かい? それは後で教えるよ。それよりも、君が防御力を主体とした闘い方を好んでいるのは理解した。だけど、それでは明らかに効率が悪い」
効率が悪いか。薄々分かっていた。こんな方法を思い浮かばなくてもただ剣を持って戦ったほうが遥かに闘いやすいことも強くなれることも。
そこで、と男は提案してきた。
「君の手助けをさせてほしい。なあに、対価として少しばかり僕のために働いてくれればいいのだから。これはほんの挨拶だよ」
俺に大量の、『オオハリネズミ』を一体何匹倒せば手に入るのか分からないほどの経験値が入ってきた。
「これは……」
「これで君は転職して次の高みを目指せるさ。どうだい? 君が望むならさらに力をあげるよ?」
今までの苦労が水の泡のように消えていく。だが、決してそれはマイナスとして消えていかない。今あるのはただ大量の経験値が入って強くなったという事実のみ。
「分かった」
そしてさらに与えられる甘い誘惑に俺は勝てなかった。
「うんうん。素直なのはよろしいことだよ。僕はオセ。よろしく、オルナイフ君」
俺の二つ名のレベルが上がり新たなスキルを覚えたのを確認すると俺は静かにオセに向け傅いた。




