56話 囲いを囲え! 何度でも立ち上がる土人形!
そういやまた投稿忘れてた
個人的に書いてて楽しかった話その2
砂使いにとって最も力を発揮するのは砂が多い場所であろう。そして砂が多い場所とはすなわち……砂漠だ。元から砂があるのであれば新たに出す砂は少なくて済むうえに、操れる砂が多い。
『五行同盟』土担当、『土砂流砂』のユークリッドが転移された場所は海岸であった。砂漠ほど砂が多いわけではないが、それでも岩石地帯や草原、森よりも砂が踏みしめる地面に直接出ているため、砂は多い。
海岸ということは海がある。砂と海がこのフィールドを作り上げる全てであった。
白い砂浜は照り付けられ太陽の熱を持ち、海は太陽の光をギラギラと反射していた。
「さてー。ここはどこなんでしょうかねー。まあ恐らくはここにいる皆さんを倒せば出られる、ということでしょう」
そう言ってユークリッドは周囲を見回す。
数人の男女がユークリッドを囲んでいた。
全員が殺意に満ちた目でユークリッドを睨んでいた。
「てめえ……ギリストさんをよくも死なせてくれたなぁ!」
その中の1人がユークリッドに怒気を込めて叫ぶ。
「ギリスト……? はて、誰だったでしょうか。記憶に残ってませんねー」
本当に忘れている様子でユークリッドは首を傾げる。
「ギリストさんは私たち『キングオブナイツ』のリーダーよ! あなたが砂に埋めたのでしょう!?」
別の女がユークリッドに言うことでようやく思い出したようで、
「ああ、あの方ですか。私に何もできていませんでしたけどねー。あなたたちはあの人の部下か何かですか?」
「そうだ!」
「私たちのリーダーの敵、取らせてもらうわ!」
「リーダーでも紙一重で届かなかった相手だ。全員で行くぞ!」
『キングオブナイツ』リーダーである『万物切断』のギリストが紙一重でユークリッドに届かなかったのかどうかはさておき、ギルドメンバーである彼らは全員剣を構えた。
彼らのギルドは全員剣に関わる二つ名を持つ者で構成されている。
砂魔法で足元を崩す相手に剣で挑むのは無謀であるかもしれない。
だが、
「俺は『キングオブナイツ』副リーダー、ブレッシュ。ギリストはな、俺のライバルだったんだ。あいつに勝ちこされてはいたが、それでも力は同じだと俺は思っている。だから、お前を倒して俺はあいつを迎えに行く!」
ブレッシュを始めとした『キングオブナイツ』の面々が二つ名を使用し始める。
「『剣聖抜粋』」
ブレッシュが二つ名を発動し、ユークリッドへ駆ける。
「うーん。思い出しましたけど、魔法一回で終わっちゃった記憶しかないですねー。■■■■『サンドカーペット』」
ブレッシュ達の地面が、底の無い砂浜へと変わる。これまでの砂場とは違った、さらに柔らかな砂。
「キナネ、今だ!」
「はい、『一刀追尾』」
声を掛けられたキナネという少女はこの時のために浅瀬にいた。足元が海水で濡れることもいとわずに。
キナネは見の丈もある剣を背中まで振りかぶると、そのまま振り下ろした。
目的はユークリッドを斬ることではない。
剣を海に埋め、剣を振り上げることで、海水を砂にまき散らすことが目的であった。
『一刀追尾』。その二つ名の能力は武器に触れた対象をそのまま剣の後に追わせるという能力である。
剣を伝って海水が砂にまき散らされる。砂は水を吸収し、土へと変わる。
柔らかであった砂は重くなり、硬い土となり地面となる。
「これで――」
「終わりだ! 『雷刀迅雷』」
剣に雷を纏わせた男が体勢を立て直しユークリッドに斬りかかろうとする。
「あらー。砂魔法を水で無効化してきましたかー」
「ふん、これで貴様の自慢の魔法も意味がないだろう」
『キングオブナイツ』はギリストの死からただひたすらユークリッドと闘うことに執着していた。
そのためいくつもの対抗策を考えていた。
そのうちの1つ、水を以て砂を無効化する、という策が見事にはまり、こうしてユークリッドに近づくことができた。
「んー。まあ私は確かに近接戦は苦手ですけどねー」
雷の剣、触れれば感電すること間違いなしの攻撃を受け止めたのは一体の土人形であった。
「私は砂使いではありますけど、砂だけを使うわけではありませんよ? 砂魔法と土魔法を使えるようになる二つ名、それが『土砂流砂』です。砂では土人形はつくれませんでしたが、こうしてあなた方が砂に水を吸わせ土にしてくれました。だから、大量につくれますよ。■■■■『マッド・ゴーレム』」
地面が動き、あちらこちらから土人形が生まれ出てくる。
ユークリッドを囲んでいたはずの『キングオブナイツ』はいつの間にか土人形に囲まれていた。
「慌てずに対処しろ! どうせこいつら、一体一体は強くないはずだ!」
冷静にブレッシュは命じる。
だが、まず1人目が死んだ。
死因は土人形数体による圧殺死であった。
そして次に殺されたのは雷を剣に纏わせていた男。
彼の二つ名は土人形に対して全く効果を発揮しなかった。雷は土に当たっても地面へと吸い取られ、土人形は生物でないため感電することもなく、ただ剣を振るう事しかできなかった。次第に追い詰められ、最後には数の暴力により殺された。
1人死ぬごとに他のメンバーへの負担は増えていく。
さらに質の悪いことに、土人形はたとえ破壊しても再び復活する。
土であるため彼らの元は不定形だ。
壊しても壊しても復活する。復活しないのはプレイヤーだけだ。
「これではジリ貧……しかもあの女は今、何もしていない。誰か……これでは手が足りない」
現在生きているのは敵を除けばブレッシュとキナネのみ。
キナネはその二つ名の特性上、地面を巻き上げることで範囲攻撃をすることができる。そして、ブレッシュの二つ名、『剣聖抜粋』は剣聖よろしく常に最適の行動を取れるようになる能力を持つ。
右から来た土人形を一刀に伏して、別の土人形を袈裟斬りにする。
足元を斬り、次に来る土人形への障害物とすることで時間を稼ぎ、別の土人形の首をはねる。
いったい何体の土人形を破壊しただろうか。それも破壊された土人形が残されていないため数えることはできない。数える余裕も暇もないのだが。
「副リーダー、もう無理です!」
「諦めるな、きっと勝機はあるはずだ!」
斬る斬る斬る。
終わりは見えないが斬り続ける。
いつか自分の死以外での終わりが来ると信じて。
そして終わりは来た。
増援による救済という形で。
「『サイドクロウ』」
突然の乱入者の拳が土人形を砕いた。
一撃で、その黒い拳は土人形を貫き壊していた。
だが、
「そいつはいくらでも再生する! ただ壊しても駄目なんだ!」
そう、壊しても無駄なのだ。なにか、この無限の再生者を終わらせることができないのだろうか。
「壊したら海に投げ込むんだ。海水に混ざればそれで大丈夫のはずだ」
だが、黒き腕と足を持つ乱入者は壊した土人形の欠片全てを海に放り込んだ。
さながら海にゴミを捨てる不法投棄のように。
そして、海に投げられた土人形は……再生しなかった。
「!? 分かった、ありがとう」
土人形は土でできている。砂に水が混ざったことにより固まり、多少であれば動いても壊れずにまた固まり直せる。それは砂と水のバランスが土というものに上手く変わっているからである。
だが、海に入ってしまえば、土は溶け、大部分が水分になる。それはもはや土ではなく泥を通り越して海水の一部となってしまった。
壊した先から土人形を海に放り込み、やがて数を減らした土人形は動きを止めた。
「いやー。まさか土人形を攻略されるとはー。あなた、名前はなんというんですか?」
「俺はリュウキ。ちょっとばっかし遅れてしまったけど、あなたを倒すためにやってきた。みんな、力を貸してほしい。相手は……1人じゃ倒せない」




