52話 決意の剣
久しぶりの一人称視点~
【マカ視点】
「い、たたた……」
もう、誰だろう!? 突然割って入るなんてひどいよ! 割り込んでくるのは駄目って小学校の時点でも習ったはずなのに!
士道さんの能力が上手くいかなかったのかな? 何か思ったよりも乱暴な移動になっちゃったみたいだけど。空中に放り投げだされたときはびっくりしちゃった。地面は硬い土だったからお尻痛い……。
「ここ、どこだろう……」
周りを見渡してもあるのは土ばっかり。草原じゃなくて……こういうのなんて言うんだっけ。一度学んだことは忘れないけど、見たことはないから結びつかないなあ。
「砂漠って言うほど砂ないしなー」
何か良い言い方無かったかなあ。
お兄か、しず姉なら分かるかな。お兄はこういうの分かんないか。というか、しず姉どこ行ったのかな? 確か一緒に……いや、よく思い出したらしず姉、あの時押されて隣の円に入っちゃったっけ。
「不毛地帯……焦土……うーん……」
「こういうのはね、荒野と言うのだよ」
「だ、誰!?」
慌てて後ろを振り向くと、そこには知っている顔が。
一度だけしか会ってないけど、結構印象が強い。
「竹田さん! 竹田さんも一緒に闘うの!? あれ……でも、あの時竹田さんいたっけ?」
アスタロトと闘う直前に私を子供を間違えて声をかけてきた竹田さん。
あの割り込んできた人たちの中にいたっけ? 全員見たわけでもないから見落としてたのかな。
「マカちゃん、だったね。ここはどこなんだい?」
そっか、そうだよね。竹田さんは説明もなしに突然ここに来ちゃったからここがどこか分からないか。
「ここはね、『五行同盟』って人を懲らしめるためにつくられたフィールドなんだー。あ、『五行同盟』って知ってる?」
「……ああ、よく知っているよ」
知ってるよね。今、DNO中のプレイヤーに攻撃してるらしいし。それに、知ってるから一緒に闘いに来てくれたんだった。ああ、私ってやっぱり馬鹿だ。
「ここから出るにはその『五行同盟』の人をやっつけなくちゃいけないらしいんだ。それまではここから出られないみたい」
この辺の説明の時に竹田さんはいなかったんだよね。なら、私が説明してあげなくちゃ。言われたことは全部覚えているからね!
「えっとね、ここのフィールド以外にも4つ、合計5つのフィールドがつくられているんだ。それでね、別の人の二つ名の能力なんだけど、その人の力でここに来たんだ。それで戻ってくるのには条件があって、それが『五行同盟』の人をやっつけるということ」
これでいいのかな? あんまし説明することがなかった。
「あ、でもね、大丈夫だよ! ちょっと手違いでみんなバラバラになっちゃったけど強い人たぁっくさんここに来てるはずなんだ!」
さっきの説明だけだと不安になっちゃうかな?
でも私以外にも人がいるって分かれば安心だよね!
「ふむ、それで『五行同盟』の人たちはどうすれば出られるのだね? もしかしてずっとここに閉じ込められたままなのかな?」
ん? どうしてそんなこと聞くんだろ。
「あっちは私たちを全員倒したらって言ってたかなー。まあ私もだけど、簡単にはやられないよ! 竹田さんも一緒にがんばって『五行同盟』の人倒そうね!」
あれ? でも竹田さんって闘えるんだっけ?
実はあんまりこの人のこと知らないや。ここに来たくらいだから強いんだろうけど。
「残念ながら……それは無理な話だ」
「え? どういう……」
その時、突風が吹いてきた。バサバサと髪が風で揺られ、視界が塞がる。木々も風によって枝が揺られ葉っぱが落ちてくる。
「うわ、すっごい風……あれ?」
ここに木なんか生えてたっけ?
荒野だったよね? 木も草も生えていなかったはずなのに……。
「マカちゃん。君の倒そうとしている『五行同盟』。その人たちの特徴を知っているかい?」
何でそんなこと突然言うんだろう? 私の勉強力でも試しているのかな。
「炎の人でしょ、修道女の人、鎧の人、砂魔法の人、そして――」
そして……あれ、この状況って。
「そして、木々を操る男だ」
ってことは……まずい!?
「竹田さん、近くに『五行同盟』の人がいるかもしれない! 気を付けて!」
「何にだい?」
「何って、だから『五行同盟』の……」
いや、違う。周りをいくら見ても人はいない。
いるのは私と……
「私だよ、マカちゃん」
私と竹田さんしかここにはいない。
私は私。でも竹田さんは『フレクション』の人でもなくて、あの時の割り込みにもいなくて……。
「私が『五行同盟』木担当、竹田だ。二つ名はこの通り、木々を操る『植木職人』。成長を速めるくらいならどうとでもない」
「何で……竹田さんは悪い人なの?」
「悪い人、か。まあ君達からすればそうなのだろう。だが私たちには目的がある。それは名声や力、地位、それぞれであるがね。私が名声と言ったところか」
そんなこと……。有名になりたいなんて見えないのに。
「私はね、娘を探しているんだ。大事な大事な私の愛する一人娘。探しても探しても一向に見つからない。だが、このDNOというゲームをやっていることをある日知ったんだ。だから私は有名になることで私がここにいることを娘に知らせたいんだ。分かってくれるだろう?」
「分かんないよ。そんなことで人に迷惑をかけたの?」
「そんなことか……君はまだ誰かと別れたことはないんだろうね。こうなったら仕方ないよ。私と君は敵同士。君は私を倒せばここから出られる。私は君を倒して……まあ他にいる君の仲間も倒してここから出るとしよう。さあ剣を取りたまえ」
「嫌だよ! 竹田さんと闘いたくない……」
きっと本当はいい人のはずだ。だって誰かのためにこんなに一生懸命なんだもん。
「そうか……ならば死ぬがいい!」
近くに生えていた木から枝が伸びてくる。
私は腰から剣を抜くとそれを弾き返した。
「そうだ、そのままその剣を私に突き刺すだけでいいんだ。それで私を、『五行同盟』の一角を終わらせられる」
やるしかないのかな。
私は馬鹿だ。
記憶力は良いかもしれない。ちょっとだけ計算能力も高いかもしれない。だから時折お兄は私を天才と呼ぶ。
でも私は人を疑うことができない。人と仲良くなりたい。だからこうして騙されてしまうんだ。人と争うことができないんだ。
1人ではまともに闘うこともできない。もちろん模擬戦とかなら別。モンスター相手の闘いも別。
だけどこうして知っている人と闘うことはどうしても私の中の何かが拒否しちゃう。感情的になってしまう。合理的に動けない。
こういう時、お兄とかしず姉なら上手くできるんだろうな。
でも、ここには私しかいない。
きっと今の竹田さんは自分ではもうどうしようもないくらいの場所に行っちゃってるんだ。
「私が止める! そして連れ戻す! それでいいんだよね」
これはやっつけるための闘いじゃない。竹田さんを救うための闘いだ。




