51話 離別の転位
「じゃあ頼むぜショウブ」
次に敵が攻めてくるであろう街、ゼギエルにてダラークを中心として20人前後のプレイヤーが集まる。
ダラークを始めとした『フレクション』のメンバーやリュウキ達のような闘いに必要な戦力、そしてこの闘いの舞台を用意する二人である。
「任せてください。『クリエイト・ポジション』」
ショウブと呼ばれた常に笑顔を絶やさない若者の二つ名である『陣地作成』。この二つ名は本来、モンスターの寄り付かない簡易的な休憩場所を作れるものであった。戦闘には一切関わることはなかったが、彼は戦闘よりも採取を主に行っているためむしろ安全に採取ができる二つ名はありがたいものであった。
そして、『陣地作成』の固有スキルである『クリエイト・ポジション』。これは自分の思った通りのフィールドを作り出す能力。まだ覚えたてであるため使い慣れておらず、同時に展開できるフィールドは5つまで、5つ展開した場合には思い通りにはできずどこにどのフィールドが展開されたのか把握できなくなる。
本人いわくここまで使えるようになったのさえ最近であり、この固有スキルが発現した当初は3つ展開させるのさえできなかったらしい。
「いや、内容は問わねえ。ここまでできれば上等だ。んで、次は士道。お前の番だ」
「ふっ、分かっていますとも」
士道と呼ばれた眼鏡をかけたプレイヤーが地面に円を描く。直径2mほどの大きな円を5つ。士道は眼鏡の位置を直しながら、
「ショウブのつくるフィールドの出入り口に繋げておきました。私が二つ名の能力を発動すればいつでも行き来は可能です……が、ここに私の固有スキルを加えていいんですね?」
「構わねえ。やってくれ」
「では、『トンネル・リミッター』を使います」
士道の二つ名『大型転位』は大人数を移動させる能力。時間もかかり、大雑把な移動しかできないため、細かな動きを必要とする戦闘には不向き。相手が大人数もしくは大型であったときに隔離するために使う二つ名である。
そして『トンネル・リミッター』はその不向きな点を改善した固有スキルである。移動させる生物、物体に制約と制限をかけることで例えば乱戦状態でもモンスターだけ、パーティーメンバー以外と制限をかければそれ以外の者たちが能力の対象となる。また、行き来できる条件も付けることができるため、○○の行動をした者のみ移動可能とすることもできる。
「ここにいる人たちの帰還条件は敵の死亡。敵の帰還条件は同様にここの人たちの死亡です。この制約をかけてしまうと私でも解徐はできません。まあフィールド自体が無くなってしまえば別ですが」
「最悪の場合はそうします……」
ショウブは下を向く。彼は数少ない『五行同盟』とプレイヤーの闘いの目撃者でもあった。
あれはもはや人の力ではない。何か、人ならざる力のようでもあった。
「いつもの笑顔を見せろや」
ポン、とショウブの肩に手を置く者がいた。
顔を上げるとそこにはダラークがこちらを見ていた。
「最悪の場合を考えるな。まああいつらを生かしてここから出しやしねえよ。……そうだな、最悪をもし考えるとしたら相打ちだ。それが俺たちの最低ライン。全員生還が最高ラインだな」
「ダラークさん……」
全員が死すらを覚悟してなお挑もうとしている。
いくらゲームとはいえ、その恐怖は簡単に消し去ることはできないだろう。
ダラークの元へとメッセージが届く。それは『五行同盟』が現れたという報告。
まだ暴れ始めてはいないが、プレイヤーのホームは各地にある。それは『フレクション』のギルドホーム兼喫茶店も同様だ。
「よし、始めるぞ。お前らこの円の中に入れ。あらかじめ決めておいたチームでな」
5つの円にそれぞれ人が入っていく。2mという円は3,4人で入るにはやや狭い。ぎゅうぎゅうになりながら何とか入るが、少しバランスを崩せば円から出てしまうだろう。
「私の力ではこれで精いっぱいでしてね、申し訳ない。では、行きます。移動には10秒ほどかかるため、その間はそこから動かないでください」
円を引く線が光り始める。
リュウキ、シズネ、マカにはこれに見覚えがあった。
「あれ? もしかして……」
「……『ウルフ』と闘ったとき、いた?」
『ウルフ』の群れと闘ったとき、リュウキ達はこのような円を見た気がする。『ウルフ』をまとめて移動させ大技の着地点へと導いていた。
「ええ。あの時、マカさんでしたか? あなたの二つ名を見まして。あれを見なければ私も闘おうなどとは思わなかったかもしれません。今回もあなた方がいるからこそ私も力を貸そうと思いました。あの時真っ先に初心者を助けに行ったあなた方なら……きっと終わらせてくれると」
円が一層強く光り出す。
10秒経ったのだろう、そこで士道は二つ名の名前を発した。
「『大型――』
「おいおい、ちょぉぉっと待ってくれよぉ」
そう言って割り込んできたのは10名ほどのプレイヤー。リュウキの知っているプレイヤーではないため、戸惑う。
そのプレイヤー達はそのまま円の中に入ると、
「よっしゃあ、行くぜ!」
「ひゃっほう!」
「ちょ、押さないでよ」
「ふむ、これが転移というものか」
「あ、ちょぉぉぉっ!?」
バタンと一人が倒れこむとそれにつられて何人も倒れていく。
「――転位』」
そして士道の二つ名の能力が発動し、円の中にいたプレイヤー達は一瞬で消え去った。
「えーと……」
そして残ったプレイヤー達。フィールドを維持するため残ったショウブ、今転位を行った士道、そして『フレクション』の面々である。
「誰だ今の……」
「私、何人か見覚えあるわ……」
「って、アザリカさんも残されちまったんですか!?」
「……俺もだ」
「ジュガさんも!?」
木を操る男と闘えるのは二つ名により皮膚が装甲になるジュガ、まだ能力の不明な修道女にはアザリカが行くはずであった。二人がいない時点で状況はかなり不味いと言えるであろう。これは誰か1人強い者がいたとしても勝てない。少なくとも5人は必要であったのだ。
「あの……しかもさらに厄介なことが」
士道が汗を額から垂らしている。
「こ、これ以上何が……」
「私の能力では同時に移動できるのは合計ならば20人、30人でも問題ないのですが、1つの円にすると4人まででした。今回の作戦では1チーム4人までだったので何も言わなかったのですが……いくつかの円で5人以上になったところがあります」
「お、おい。今何人残っている?」
サーっとジュガとアザリカの顔から血の気が引く。
数えると残っているのは16人ほど。
「後から押しかけてきた人って何人いたのかしら……もしかすると」
「ああ、下手すると2人……いや、1人になったところもあるかもしれねえ。5人を超えたところがある分、他のチームの人数が減っちまった可能性は捨てきれねえ」
一瞬のことであった。そして残された者のほとんどが地面に倒れてしまっていた。
転移していく状況を見ていた者はこの場にはいなかった。
「いえ、私が言いたかったのはそれではないです……」
と、士道は続ける。もはや彼の顔は青ざめている。
「転位地点もずれています。こちらも、相手も。最悪、こちらはバラバラの場所に転位している可能性もあります」
「確か、フィールドには森林もあったよな。そんなとこでバラバラにされちゃあ……」
「ええ、協力もできなくただ相手にやられてしまうかもしれません……」
こうして対『五行同盟』との闘いは最悪から最適を導き出し、そして最低な状況から始まったのであった。
策を崩し、輪も崩し、戦力さえ崩す。
闘いに臨もうとした彼らに混じった乱入者の実力は未知数。
確かに言えることはただ1つ。ここで負ければ後はない。これ以上の戦力は望めない。これが最終防衛ラインであった。
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