47話 五行同盟水金
うわ、何か少しだけどブクマ増えてる!?
なんかあったっけ? やったっけ?
悪いことはしてないはず……
DNOにおける最大勢力とも呼べる『フレクション』というギルドの長であるダラーク、そしてアザリカ、ジュガの3人がいないことにより多くの勢力がつくられては消え、消えてはつくられた。
『フレクション』はメンバーの質においてはトップであったが、人数の面では他の大手のギルドがつくられたことで、攻略における発言権は段々と『フレクション』だけが占めることはなくなった。加えて3人の不在。
新たにつくられたギルドの面々が我こそが次のプレイヤーボスを攻略するぞと一目散に木々の迷宮へと駆けだしていた。数に任せた攻略法を測るギルドや、少数精鋭で攻略していくギルド、最終的には何ら特徴のないギルドの1パーティーのみがボス部屋へと辿り着くこととなったが、それはまだこのプレイヤーボスとの闘いの始まりに過ぎなかった。
プレイヤーボスであるオセ。彼は姿を現すことはなく、翌日の朝、己の配下である5人の災厄をばらまいた。
『今日から一日おきに、時間はとりあえず今日のところは10時にしておこう。僕の配下である彼らに君たちを殺しに行ってもらう。止めないと大変だよ? なにせ彼らは強い。僕の力の一部を与えているのだからね』
全フィールド、街にいるプレイヤー達に声が聞こえた。これと似た状況を思い浮かべたのはほんの一握りの者たちだけ。DNOサービス開始当初、彼らのこれからのゲーム生活についての注意事項などの事務連絡を伝える機械質な声。音の高低も口調も何もかもが違っているが、全プレイヤーに向けたものであることは同じである。
そして――、とオセの声は続く。
『NPCとその所有物は一時的に別空間に閉まっておくから十分に暴れるといいよ。もちろん君達プレイヤーの所有物は別だ。いいかい? 僕が避難させるのはNPCに関連するものだけ。そして今日はウォークライだけど、明日は違う場所ってことを覚えておいてね』
それはプレイヤーの所有物、もっと言えばプレイヤーホームなどの高価なものであっても容赦なく壊される恐れがあるということ。ウォークライでもこの美しい風景に惹かれ、プレイヤーホームを購入した者は少なくない。そしてそれはプレイヤーを支援する非戦闘職である商人や生産職にも言える。自分の店を潰されれば戦闘職と違いそこで未来はなくなる。一から作り上げてきたものを全て失うことになる。なけなしの金を、友人達から借り金をかき集めた者などせっかくの苦労を水の泡にされるわけにはいかない者は多くいる。
『それじゃあ後20分ってところかな。ウォークライの地図は上げるからこれ見て印のついているところに行ってみて。ここにいる彼らを倒せば僕の攻略は終了だよ』
全プレイヤーにメールでアイテムが届く。そこには『五行同盟』の所在地と書いてある地図が入っていた。『五行同盟』、それが敵の名前であろう。
「やってやんぜ!」
「俺らの結束力見せてやろうぜ!」
「昨日できたばっかりのギルドだけど力試しにはいいな」
「お前のことは俺が守ってやるよ。だから、力を貸してくれ!」
「俺1人でも勝てるんじゃねえのか?」
そして、この危機をチャンスと捉えた者も数多くいる。これを機に自分の力を示そうとする新参者たちだ。攻略組は油断せずに敵勢力に向けて編成をしていたが、先走った者達、そしてダラーク達がいなくなったことにより首輪の解かれたPKプレイヤー達の邪魔が入り足止めされてしまっていた。
そして10時よりもほんの少し前。
『ああ言い忘れてた。彼らに殺されたプレイヤーには何かペナルティを用意しなくては。何せ彼らは1人で闘っている。そこに大人数で押しかけても君らには緊張感ってものがないでしょ? うーん……よし、殺されたプレイヤーは一週間のログイン禁止! もちろんペナルティを受けたくないプレイヤーは逃げてもいいからね』
闘いに臨もうと士気を上げていた声がピタリと止んだ。一週間という長期間ログインできないことに対してではない。敵が1人で闘うということに対してだ。彼らと言うからには敵も複数人だと思っていた。だが、敵が1人であればどうとでも対処できるのではないか。
闘いの経験が浅いがゆえに彼らはそう判断してしまった。
かくして新たにつくられたギルド、それもボス戦などの強敵と闘い慣れておらずそこまで強くもないモンスターとの闘いだけで経験値を稼ぎ自分の力を過信しているプレイヤー達が先陣を切っていった。
彼らは知らない。どうあがいても勝てない存在に。
彼らは知らない。攻撃するだけが闘いでないことを。
彼らは知らない。あがくことの重要性を。
彼らは知らない。心が折れるとはどういうことかを。
彼らは知らなかったのだ。情報を集め、常に最適な行動を取ってきたからこそ自分の力だけで対処しなければいけない状況があることを。自分で考えて行動することがどれだけできていないということを。
ウォークライの東西南北、そして中央。
オセの力を分け与えられた彼ら『五行同盟』はそこでただ待ち伏せていた。堂々と、己の力を誇示しようとするプレイヤーを何の障害とも思っていないように。
【ウォークライ北】
「ああ、なんてことでしょう。私を見て皆さんどうしてそのように落ち着いていられるのか……」
修道服を着た女がそう呟く。彼女こそが五行同盟の水担当。だが、その実態は非戦闘職であり、回復専門の職業であるように見える。
周囲には幾人ものプレイヤー。近辺にいたこともあり、すぐに集まることができたのだ。
「てめえを倒せばプレイヤーボスを攻略したことになるらしいじゃねえか」
「なあ、姉ちゃんもプレイヤーだろ? 俺らにやられてくれや」
彼らは決して弱いわけではない。今行ける街の中でも最前線であるウォークライに辿り着けるほどの最低限の力量はある。
だが、相手が女性であること、それに修道女という非戦闘職であることから彼女がサポートの長けたプレイヤーであると考え、善意からそう促していたのだ。
「なぜ? 私はこの力を使ってあなたがたを倒せるのですよ。なぜ私よりも弱い者に降伏しなくてはいけないのです?」
だが、プレイヤー達の善意とは裏腹に女は挑発をもって返す。
曲がりなりにも自分の力に自信を持っていたプレイヤー達だ。その言葉に怒りを覚えたようで、
「しゃあねえお前ら、こいつは俺がやる! お前らは手出すんじゃねえぞ」
1人の大斧を持ったプレイヤーが飛び出した。
「『粉砕爆撃』!!」
プレイヤーの斧に火が走る。
この男の名はバラガサ。メンバー全てが物理攻撃に特化した『スパルタ』と呼ばれるギルドの1人であり、その実力はギルド内でもギルド長に次ぐと言われていた。
そのバラガサの二つ名である『粉砕爆撃』は攻撃に爆発を乗せるというもの。剣であれば斬った箇所が爆発し、ハンマーであれば叩きつけた個所が爆発する。斧は剣と同様に斬りつけた個所が爆発するが、力任せに振り回した攻撃は防御など容易く掻い潜って爆発していく。
「あらあら、怖いですね。ですが、そのような大ぶりの攻撃でしたら……『ディスパラライズ』」
バラガサの大斧が振り下ろされる直前、女性が1つの魔法を使った。
それを聞いた1人のプレイヤーは疑問に思う。なぜ、戦闘中に、誰も麻痺になっていないのに麻痺解除の魔法を使うのだろうか。しかも、対象をバラガサにして。
「オラァァッ……!?」
ピタリとバラガサの身体が止まった。
それはまるであるステータス異常になったときと同じように。
「お、お前ら……気をつけろ。こいつは……」
バラガサの言葉に待機していたプレイヤー達に緊張感が走る。そこでようやく女の異様さに気づいたのだ。大斧が振り下ろされても動じない態度。その顔は涼し気にバラガサを見つめていた。
「……一斉に行くぞ!」
女1人に、非戦闘職に戦闘職のプレイヤーに集団で挑むなど、とは言っていられない。そんなプライドはすでに消え去っていた。
それぞれが持てる最大限の攻撃を仕掛けに女へと走り寄る。
「――」
数分後、そこに立っているのは2人だけであった。
「フフフ。あなただけはまだ生かしてありますのよ」
立っているのは修道服を着た女とローブを羽織った魔法使いの男。
「な、なぜ俺だけ……」
男は魔法使いということもあり、あまり近づかなかった。だが、それでも男のステータスには麻痺と確かに記されており、動けなくなっていた。
「私、魔法の使い過ぎでもうMPがありませんの。だから、いただきますね」
さらに数分後、立っているのは1人になっていた。
【ウォークライ西】
「囲め囲め! 相手は1人だ」
そう指揮するのは最近ようやくギルドを設立することができた剣士のスドル。
彼は中学のクラス全員をDNOに誘い見事全員こちらの道へと引きずり込むことができ、喜んでいた。そして資金もたまり念願叶ってギルドを設立できたというわけだ。
中学生でありながら37人全員を纏めるその姿は将来性があるなと他のプレイヤーを関心させるほど。実際に彼を慕うクラスメイトは多い。学校面でもプライベートでも。
「剣士、戦士で最大のスキルを! ……よし、一度下がって魔法使いは魔法を放て!」
事前に打ち合わせもなかったのにも関わらず集まってくれたクラスメイト15人を束ね、彼は西にいるという五行同盟の1人を倒しに来ていた。索敵を得意とするクラスメイトからの報告があり駆け付けたときにはすでにクラスメイトは死んでいた。
代わりにいたのは全身に金属製の煌びやかなプレートメイルを装備したプレイヤーであった。
兜を被っているため、性別の区別がつかないが、背丈が180を超えているから男であろうと推測する。
「ああ、お前、さっきのやつの友達か? 悪いけど先に攻撃をしてきたのはあいつだからな。俺は悪くない。まあ一撃で倒されるような雑魚だったんだけどな。俺は五行同盟の金担当、オルナイフだ。まあお前らも短い付き合いになりそうだ。だって強そうなやつが一人もいないんだもんな」
その言葉が開戦の合図であった。ストルの指揮のもと、総勢16人のプレイヤー対五行同盟オルナイフの闘いが始まる。
『最適弁舌』という二つ名を持つストルの能力は、ストルの指示に従ったプレイヤーのステータス上昇である。人数が多くなれば指示できる内容が狭まりそれだけ効果が薄くなるが、この人数差だ。元々いらないとストルは考えていた。
だが、
「な、なぜだ。もう10分以上、俺の仲間たちが攻撃をしているんだぞ……」
10分経って減ったオルナイフのHPは僅か1割。16人の10分の攻撃の成果としては明らかに少なすぎる。
「さて、回復させてもらおうかな」
オルナイフが回復アイテムを使い、減った体力がすぐさま戻っていく。
ストルは必死に考える。もはや相手はただのプレイヤーではない。……そうだ、この男はきっとDEFに特化しているんだ。ならば、ステータス異常で……
「あいつを毒にしてくれ!」
ストルの指示でオルナイフへと毒魔法が放たれる。
これで毒になればいくらDEFが高くても関係なくHPが減っていくはずだ。
「まさか俺がそんなのを予想していないと思っていないよなあ?」
だが、オルナイフは毒にはならない。
「俺の弱点は俺が一番分かっているんだよ。だから俺はあらかじめステータス異常に耐性を持つ装備を使っている。所詮はガキの浅知恵だな」
もはや足止めしかできないのか……。せめて1人もかけないように戦線を維持しなければ。そうストルが思っていたときである。
「もういいか。お前らは防御力ってのを軽んじすぎてんだよ」
「グギャ」
隣から異音がした。恐る恐る隣を見てみると、ストルの隣にいた魔法使いの少年の顔に深く針のようなものが刺さっている。
「ぐっ」
「ぐげっ」
次々と友人たちに針が刺さっていく。顔や胸など身体の中央に刺さっては友人たちのHPを減らし……いや、全て吹き蹴飛ばしている。
微塵もHPが減らなかった防御力、友人のHPを易々と奪っていく針の攻撃にストルの顔には恐怖が張り付き、足がガクガクと震える。
ストルに背を向け、逃げ出そうとした瞬間、
「はあ……これだからガキってのは……」
16人の友人がいなくなり、最後にはストルの背中から貫通し胸に1本の巨大な針が刺さってそこでストルの意識は消えた。
ようやくですよ
ようやく第二章の本当の闘いが始まりますよ
しばらく主人公たちいないのはここで死なさせないためだったりもします笑
まずは雑魚たちで様子見させないと
まあ雑魚以外もそれなりに混ざっているようですが




