43話 第二の試練
山を登りさらに新しく開けた場所へでた。
『テジュ・ジャグア』が第一の試練であったが、まだ後に控えている2体のモンスターは同列の強さなのか、それともさらに強いモンスターが出てくるのか。いずれにせよ今日中に倒し試練を乗り越えティアンヌの元に『メディックフラワー』を届けなければいけない。
最後には全身から顔を生やしていた気味の悪い『テジュ・ジャグア』のようなモンスターとはあまり闘いたくはない。だが、フィールド、それにそこに出現させるモンスターというのは運営の人間たちが決めている。意地の悪い人間がプログラムしたフィールドでは罠だらけ、初見殺しの能力を持つモンスターの多いフィールドとなる可能性が高い。
「……出てきたな」
『テジュ・ジャグア』が現れたときと同様に煙が立ち込める。濃度の濃い白い煙のせいで全く先が見えない。果たして何が現れるのか、期待などできない。
「ケーン!」
現れたモンスターの鳴き声が響いた瞬間、リュウキの身体を一発の銃声が掠めた。
「仕組みは分かった! あのモンスターが鳴いたらあいつ目掛けて銃弾が飛んでくるんだ」
モンスターが鳴いたら銃弾が飛んでくるのは出会いがしらの攻撃で分かってはいた。
だが、銃弾が飛んでくる方向の法則性が分からないでいた。
モンスター名『ライフル・フェゼント』。見た目は鳥型のモンスターである。空中を飛び回り、時折「ケーン」と甲高い鳴き声を発するとリュウキ達に銃弾が飛んできていた。背後から飛ばされることが多いためいくつかの銃弾が当たりダメージが入っていく。
背後から銃弾が飛ばされてきたらどうしても背後を振り返ってしまう。銃弾の飛んできた方向ならばともかくその後の行方など見ようともしていなかった。
銃弾の行方を見れたのは偶然であった。動きを攪乱しようとリュウキがシズネ、マカと『ライフル・フェゼント』を挟んで反対側に回ったとき、マカの背後からマカを掠めた銃弾が『ライフル・フェゼント』まで飛ばされそれを翼で叩き落としたのを目撃したことでその能力の一端を知ることができた。そう、一端をだ。
「ケーン!」
「また来るぞ!」
背後から銃弾が飛んでくる。それを避けるには背後を見るしかない。『ライフル・フェゼント』から目を離す他ないのである。
「うっ!?」
マカが撃たれた。ダメージは少なからず受けているようだがまだ危険域までHPは減っていない。
これで次に鳴く時までは銃弾は飛んでこない、そう思ったリュウキは『ライフル・フェゼント』に向き直るその瞬間、
「なっ!?」
背後から飛んできた銃弾がリュウキに食い込んだ。
「……2発目?」
一鳴きで一発の銃弾のはずであった。今までの傾向から外れた攻撃はリュウキの油断を見事に狙っていた。
しかも時間差での銃弾であったためわざと油断を誘ったのかと思わせる。
「お兄、私が引き付けてるから回復して! しず姉、防御の岩魔法使えないの?」
「……駄目。……なぜか一発で壊される」
シズネは遠距離攻撃をしてくる相手と分かるや否や『ロックプロテクト』により周囲に岩を配置しておいた。だが、その岩も銃弾によりすぐに壊された。岩を一撃で壊すほどの威力を秘めた銃弾。それなのになぜかリュウキ達へのダメージはそこまで高くない。
「……まだ大した攻撃ができていない。……何か攻略法みたいなのがある?」
「ケーン!」
銃弾が飛ばされてくる。今度はシズネの肩を掠め『ライフル・フェゼント』がその銃弾を叩き落とした。
銃弾だけに集中して『ライフル・フェゼント』に背を向けていると『ライフル・フェゼント』が羽を飛ばしてくるのだ。そしてその羽の威力は銃弾の比ではないほどの威力がある。そのため銃弾に背を向けた状態、『ライフル・フェゼント』を見ていなければいけない。
「……リュウキ、銃弾避けることはできる?」
「一発くらいなら大丈夫。銃弾に向き合ってればだけど」
「……そう。……なら、羽からは私が守るから頑張って避けて。……リュウキはリュウキ、もしくは私に銃弾が来たら避けて」
「何か考えがあるんだな。分かった!」
リュウキはシズネの近くへと走る。
「私は?」
「……マカはなるべくモンスターを引き寄せておいて。……羽が飛んでこないならそれだけでありがたいから」
「わかったー。『スラッシュ』!」
マカはMPを節約するために二つ名の能力を使用していない。そのため空中にいる『ライフル・フェゼント』に直接斬りかかっていった。
空中に跳躍し斬りかかるが、相手は跳んでいるのではなく飛んでいる。避けるのは容易く、反撃も容易かった。
「……マカ、ちょっとだけ頑張って」
シズネは小さく応援する。マカは二つ名を使用することを前提に闘うことが多い。そのため慣れない近接戦闘を任せてしまうことになってしまう。
「俺が後ろを向いていればいいんだね。シズネ、背中は任せたよ」
リュウキが後ろ手に拳を出す。
「……私の後ろも任せた。……銃弾はリュウキにしか見切れない」
シズネも振り返ることなく拳を出して突き合わせた。
「ケーン!」
『ライフル・フェゼント』が鳴く、と同時に羽を飛ばしてくる。
「……『ロックプロテクト』」
銃弾も羽の攻撃も『ロックプロテクト』の岩を一撃で破壊する。だが、一撃だけならば防ぐことはできるのだ。羽は全て浮かんだ岩に辺り対消滅していった。
「くっ……、こっちだ、シズネ!」
リュウキがシズネの手を引き銃弾の弾道から外れようとする。
「……リュウキ、避けたらそのままモンスターの方に全速力で最速の攻撃して」
「……? 分かった。『悪鬼変身』」
銃弾を避け、銃弾が飛んでいくその先を目指してリュウキは走る。
走り銃弾に追い付き追い越し『ライフル・フェゼント』へ辿り着く。
「『ジャブ』」
最速と言われたので最も予備動作の少ない拳闘士スキルを放つ。
おそらく『ライフル・フェゼント』にはその拳を見ることもできなかったであろう。胸部に拳を突き入れられ、『ライフル・フェゼント』はよろめく。速度重視であるためダメージ自体は少ない。これで良かったのだろうかとシズネの方を振り向こうとした瞬間、銃弾が飛んできた。
「うおっと」
軌道はリュウキではなく『ライフル・フェゼント』を狙ったものであったため驚いただけとなったが、その当の本人である『ライフル・フェゼント』は違う。リュウキの攻撃でよろめいたところへの銃弾は避けることも叩き落とすこともできず、奇しくも先ほどリュウキが攻撃したのと全く同じ箇所へと銃弾が突き刺さった。
「ケ、ケェン……」
銃弾は深く食い込み、そのたった一発の銃弾だけで『ライフル・フェゼント』のHPは0となった。
「……やっぱり。……あの銃弾は『ライフル・フェゼント』の攻撃じゃない。……『ライフル・フェゼント』を狙った攻撃だった。……だから私たちにはダメージが低かったんだ。……同じモンスターを倒す協力者だったから」
『ライフル・フェゼント』は鳥型のモンスターであるが、鳥の種類はキジであった。『雉声銃声』という二つ名を持つモンスターは銃弾により倒れた。
鳴かなければ撃たれなかったのに。そうシズネは一人思う。
ちょっとだけ能力の説明します!
『雉声銃声』
『ライフル・フェゼント』が鳴くたびにプレイヤー以外特攻効果のある銃弾が『ライフル・フェゼント』目掛け飛んでくるというモンスターにしては珍しい自身を傷つける能力。だが、銃弾の場所は指定できるためプレイヤーの背後から飛ばすようにし使っていた。真正面から来れば叩き落とすことができるほど『ライフル・フェゼント』のステータスは高く、ほぼ正攻法で倒すことはできない。銃弾が味方であることに気づければ『ライフル・フェゼント』に銃弾から目を背けさせ銃弾を当てるための行動を取れる。
思ったよりも長くなりましたがこんな感じの能力です。
前話の犬の能力もいりますかね?
話の都合上、二つ名は最後のほうにあっさりと紹介させていただきました
皆さんは「雉も鳴かずば撃たれまい」というお話を知っていますか? けっこう悲しいお話ですよ
次のモンスターが何か、もう分かりますよね
ヒントは山の名前、そしてこれまでのモンスターです




