39話 ウォークライ
ここから2章です
アスタロトを倒してから一ヶ月、新たにプレイヤーボスを2体倒し、プレイヤーたちは次なる街へと歩み続けた。
その2体は決して弱かったわけではない。
新たなプレイヤーボス――エリゴスとアムドゥスキアスはそれぞれ厄介さではアスタロトと同列であった。
エリゴスはアスタロトと同じく弓使い。
だが、その二つ名は『無限弾頭』。攻撃に毒などいらない。止むことなく放たれる矢で多くのプレイヤーはその身体を射抜かれていた。その配下らしき『ボーンソルジャー』がエリゴスを守るようにして動いていたため容易に近づくことはできなかった。
アムドゥスキアスは10mはあるかという楽器使いの男。
楽器使いとはいえ音使いというわけではなく、金管楽器から放たれる金属音でこちらの戦意を挫き、楽器での物理攻撃をしてくるという敵であった。10mの男が扱う数mの金管楽器はプレイヤーの思っている数倍のダメージと速度があった。
これらのプレイヤーボスを倒せたのはダラークたち攻略組が力をつけ倒したからではない。もちろん、強くなっているというのは事実であるが、それ以前に新規に入ってきた小中学生のプレイヤーが育ってきたからであった。
DNOにおいて二つ名以上に戦闘を左右するものはない。
100人いるプレイヤーのうち闘える二つ名は半分以下。その中でも攻略組のような能力はさらに半分以下。
シズネの神とつくような破格の二つ名は1000人の中にいるかいないかである。……その1000人の中でも、いくら神と名のついた二つ名があろうとも闘えるかどうかは別であるが。
一ヶ月が過ぎリュウキ達も職業レベルは30に、二つ名レベルも4となりそろそろ固有スキルに手が届きそうになってきていた。
「格闘家がレベル30になった! これで転職だな」
「……私も」
「私も30!」
示し合わせていたわけではないが、3人とも同日中に職業レベルが30になった。
職業レベルはそれぞれの職業で30が上限だ。そこからは転職をし、別の職業になる必要がある。全く違う職業になるもよし、30になった職業の上級職になるもよしだ。
上級職は同系統の職業であるが、これまでの職業をさらに強くしたものである。
戦士なら凶戦士や兵士に、僧侶ならば修道士といったように、さらに強化された職業に就くことができる。
「格闘家の上級職は拳法家、拳闘士、無手流か」
再び冒険者ギルドで転職の手続きを受けるとこの3つの職業を示された。
拳法家はスキルが豊富であるがステータス的にはそこまでの強化はない。
拳闘士はスキルこそ少ないがステータスが大幅に強化されている。
無手流は主に蹴り技を使うスキルを覚えられる職業である。
「無手流は難しいし、拳法家か拳闘士ってとこだな」
今まで蹴り技はほとんど使っていない。
ならば慣れた拳のスキルのある職業を選んだほうが無難であろう。
「上級職の特徴は無言でもスキルを発動できるんだ」
ふとリュウキの目に入ったのは上級職についての説明。知っていた情報ばかりであるため流し見していたが、このようなことが書いてあったとは。
「もしかしてダラークさんたちはすでに上級職だったのかもしれないな」
思い出すのはダラークたちの闘い。PvPでもそうであるし、アスタロトとの闘いでも誰もスキル名を言っていなかった。不思議だとは思っていたがこれが理由だったのかとリュウキは納得した。
「うーん……格闘家のスキルも使えるみたいだし、ステータスの上昇値が高い拳闘士にしておこうかな」
スキルが多くなっても使い切れないであろうし、それよりもステータスが高くなったほうが戦闘を有利に持っていけるだろうと判断したのだ。
拳闘士を次の職業に選んだリュウキはすでに転職を終えたシズネとマカの元へと戻る。
「待たせたな。二人はどんな職業にしたの?」
他の職業の上級職はリュウキのところには表示されていなかった。そのためどのような職業になったのか想像もつかなかった。
「……私はテイムリーダー。……パッシブでテイムモンスターのステータス強化ができる」
「私は騎士! ちょっとだけATKとDEFが上がったよ!」
テイム系の職業はテイムモンスターに関わるものになるのは分かっていたが、モンスター強化か。シズネ自身の能力も上がってほしいところであるが、シズネが考えた末に出した結論だ。その方が有益だとシズネが判断したのだろう。
そしてマカは騎士か。このままいけば聖騎士にでもなれるのではないだろうか。剣技を磨いてマカには前・中距離での闘いを任せたい。
「じゃあ転職をしたところで次の街に行こうか」
エリゴスを倒して移動可能となった街はイケアム。湖が近くにある綺麗な街であった。釣り師という職業が新たに解放され、転職する者も多くいた。料理スキル持ちのプレイヤーのレシピにも魚料理が加わった。今リュウキたちがいるのはこの街だ。
アムドゥスキアスを倒したのは昨日。リュウキたちは参加していないが、かなりの激戦だったらしい。倒したのはダラークたち『フレクション』以外のギルド。新規プレイヤーを多く取り込んだギルドで、質よりも量というスタイルのギルドであった。
多種多様な二つ名の持ち主がおり、状況に対応し、弱点を突いて闘うことができる。
そのギルドはアムドゥスキアスの音を相殺し、武器を巨大化できる二つ名の能力を使って辛くも勝利したらしい。
次の街はアムドゥスキアスを倒したことにより封鎖されていた道が開かれ、移動できるようになった。
ダラークたち攻略組はすでに向かっているが、前日の夜中に攻略されたためリュウキ達は翌日の朝にログインをし、初めてアムドゥスキアスが攻略されたことを知った。
あと少しで職業レベルが30になり転職ができそうだということで転職後に出発しようということになったのだ。
移動までの道は短い。ボス部屋まで辿り着ければそこからは数分歩いたところで次の街へと辿り着ける。
「ここがウォークライか。自然だらけだ」
森の街ウォークライ。
森を街の一部としているウォークライでは今まで見られなかったもの――人を見ることができる。
森に住む人々――
「耳が尖ってる。エルフだ!」
アムドゥスキアスって名前わりと好きです
もっと別の場所で使いたかった……




