35話 岩と鉄と剣vs鱗と炎と爪 後編
一応決着ですけど、まあ読みにくいでしょうね
どうやってこれを上手くまとめるのか、それを知りたい…
攻撃は最大の防御という言葉がある。攻撃をし続け、相手に防御だけをさせ反撃のチャンスを与えないようにするという意味の言葉。ドラゴンは溝をつくってから炎を吐き、そのまま爪で攻撃することでジュガさんを追い詰めている。
だが、攻撃をしている時こそ最も隙が出来ているともいう。防御態勢を取っていないから、攻撃を考えて防御のことを考えていないからこちらから攻撃できればそれはきっと成功するだろう――最も、第三者の攻撃に限るのだろうが。ピンチはチャンスならぬ、チャンスはピンチということだ。
「『スラッシュバーン』×6」
「ファイアーランス」
ジュガさんに迫りくるドラゴンの爪をマカとアラダさんが止めようとしている。だが、剣で斬りつけようとも、炎の槍で貫こうともドラゴンの爪は止まらない。回復魔法を使おうとしているキウイさんも間に合わない。
ジュガさんが死ねば近接戦に劣る私たちが不利になる、そう考えているのだろうか。
それを知っているマカたちもジュガさんから必死にドラゴンを引き剝がそうとしている。
だけど、それじゃダメだ。ドラゴンの爪にいくら攻撃しようともそれはもはや止まらない。
ドラゴンは今右前脚を持ち上げてその爪を振り下ろしている。その巨体を支えているのは後ろの二つの脚、そして左の前脚だ。
攻撃は止まらない。なら、攻撃そのものをジュガさんに当てないようにするしかない。
「……『サンドカーペット』
私はドラゴンの脚に向けて魔法を使う。右ではなく左脚に。ジュガさんを攻撃しようとしてる方ではなく身体を支えている方に。
『クラッシュタイラント』の時と同じだ。足元を砂にしてバランスを崩させる。
ドラゴンの身体が傾く。左脚に右脚分の体重をかけていたためにどんどん左に身体が傾いていく。ドラゴンはそれでも身体を起こそうとするが今のドラゴンの身体をまともに支えているのは後ろ脚のみ。
「グギャウウウウ」
不安定な態勢のままドラゴンは爪を振り下ろす。
「……『サンドカーペット』」
もう一度砂魔法である『サンドカーペット』を使いドラゴンの足元を砂状に変える。
この魔法は特定の場所を砂に変える。深さは人一人なら余裕で埋まるほど。ドラゴンを埋めるには物足りないが、それでも足元なら埋めることはできる。
今砂に変えたのはドラゴンの後ろの左脚が置かれている地面。これでドラゴンは左前脚、左後ろ脚で地面を踏みしめられていない状態となっている。
ドラゴンの身体が左に傾くにつれ、右は浮き始める。とはいえ、それも数メートルほど。だが、それでジュガさんの身体の上空で爪が振るわれる結果に繋がった。
「あっぶねえ……」
ジュガさんの身体には爪はかすりもしなかった。
「ま、間に合いました!『差別聖女』!え、えっと……6人中の1人」
キウイさんの二つ名が使われる。
『差別聖女』、それは回復系の能力を持つ二つ名である。ただし、使い勝手は本人いわく悪いらしい。
まず全体の人数を指定する。私たちは今6人だから、そのまま6人で設定だ。次にその中から回復させる人数を決める。この決める人数では使用するMPは変わらない。そのため普通なら6人全員と決めるだろう。だが、この二つ名の最大の特徴は全てを平等に扱うはずの聖女ではなく、差別をするという点。
『差別聖女』は設定人数の中から回復する人数が少なければ少ないほど回復量が上がるという。逆に人数が多いほど回復量は下がる。
「こ、これで大丈夫です……なので早く下がってきてください!」
キウイさんの回復によりジュガさんの体力は全快に近くなった。ドラゴンは今、態勢を直すのに必死だ。こちらも態勢を直すなら今のうちだろう。
「……いや、このまま仕留めるぞ。お前ら、全力で攻撃だ!ドラゴンのHPは2割くらい。このまま終わらせよう!」
ジュガさんの言葉にアラダさん、富田さんが頷く。
「へいへい。じゃあ俺のとっておきだ。受け取れ、『全力放射』……からの『ファイラーランス』!」
アラダさんのHPとMPが減っていく。アラダさんの二つ名である『全力放射』は自身のHPとMPを消費して魔法の威力を上げるものらしい。アラダさんの作り上げた炎の槍は先ほどのと比べると数倍の大きさだ。恐らく威力もそれ相応のものになっているはず。
下手に失敗するとHPがほとんど無くなったアラダさんは一撃でHPが吹き消される。だが、ここまでしないとドラゴンの桁違いな防御力と膨大なHPを残り2割とはいえ、消し飛ばしきれない。
これからアラダさんの文字通り命がけの攻撃が始まる。
「……そろそろだな。今こそ解放しよう。『障害返信』」
富田さんがここで初めて口を開いた。意外と声は高い。
……それはともかくとして、富田さんの身体が光っていく。蛍のような儚い光ではなく、全てを照らす眩しい光が富田さんを包む。その光はやがて一か所に集まっていく。富田さんの身体から右腕に、右腕から右手に、右手から富田さんの持つ大盾に隠されていた大剣に。
富田さんが大盾を捨てる。もはや守りはいらないとばかりに。
富田さんの二つ名は反撃する能力。今までに与えられたダメージを全て攻撃に変換するのだが、その時に防具や武器に与えられたダメージも一緒に変換されるらしい。とはいえ、別にダメージが回復するわけではなく、あくまで攻撃力が増加するようなもの。それでもこれまでドラゴンの炎、爪、尻尾から与えられたダメージは相当のもの。富田さんは大盾で防御していたものの、それでも受けきれずにダメージを負っていた。それを全て攻撃にして相手に返すのである。
富田さんにとっては攻撃こそ最大の防御ではない。防御を含めて最大の攻撃なのだ。
そして私も、マカも、そして私のテイムモンスターたちもそれぞれ今できる最大の攻撃の準備をする。
「……MPを全て使用『ロックインパクト』」
威力に全てのMPを費やす。純粋に威力が1,6倍をプラス。速度は変わらないが、それでも動きの遅いドラゴンには避けられないはずだ。
「『スラッシュバーン』×6!」
マカの攻撃は全てが必殺級のスキル。今更変わることもない。だが、威力が何も弱いわけではないのだ。6つの必殺級のスキルを秘めた剣がドラゴンへと向かって行く。
炎の槍、剣に灯る光、天井に浮かぶ大岩、回転する剣が見て、ドラゴンはせめてどれかでも避けようと身をよじろうとする。もう砂魔法の効果も切れて足元は自由。それなりに動くこともできるのだろう。だがそれを許さない者がいた。
「さっきはよくもやってくれたな!全弾喰らえ!」
再び戦車の姿となったジュガさんの両腕の砲台から砲弾が次々と撃ち放たれる。その砲弾は全てドラゴンの頭に命中。さらに爆破した箇所から上がる煙によりドラゴンの視界と嗅覚は一時的に塞がれた。
「グウ……グゥゥワァァァ」
ならば、とドラゴンは後ろ両足で身体を踏ん張って支え、前足を浮かせる。
前脚は身体の前でクロスされ、これで攻撃を防ぐつもりのようだ。だが、私たちの仲間はまだこれだけではない。
「私の身体……よくも壊してくれましたわね。あなたが雄であることはもう分かっていますわ。そして強者であることも……ならば遠慮はいりませんわね!『一点突破』」
「キュルルルル!」
いつの間にかドラゴンの足元にいたアリアとラビがドラゴンの前脚に向けそれぞれの二つ名で攻撃をする。
アリアは今や両足、腹部胸部頭部、左腕の盾が壊され残りは右腕の盾のみとなっている。その盾を銃へと変化させ、その銃身から一発、ドラゴンの腕に向けて弾丸を放った。
ラビのHPは残り僅か。自ら炎に飛び込みダメージを負っていたせいだ。
一歩間違えれば死んでいたその行為をラビはもちろんわざと行っていた――『赤黒毛皮』の真の力を解放するために。
ラビの身体が赤黒い色から真紅に染まっていく。角はまだない。恐らく力不足、いや二つ名のレベルが足りていないのだろう。あのときの、『ブラックラビット』として闘ったときの強さにはまだ遠い。だが、それでも十分。
ラビが高い位置にあるドラゴンの腕にまで跳躍する。
「シズネお姉さまとマカちゃんの攻撃、防がせませんよ?」
「キュルルルル!」
武器が減るにつれ威力が上がるアリアの攻撃とHPが一定にまで減ったときに使えるラビのステータスアップ。
ドラゴンの両腕はそれぞれアリアの弾丸とラビの頭突きで弾かれ、身体を守るものはなくなった。
「今の私にできることは少ないですが、せめて……」
回復能力の高い『差別聖女』だけど、そのデメリットを聞くとやはり使いづらいのかもしれない。一定時間の回復ができなくなるというデメリットが『差別聖女』での回復を行ったときに起きるらしく、今のキウイに回復は期待できない。だが、キウイさんの職業である僧侶には回復魔法以外にも能力上昇――バフのスキルがいくつか存在する。
「『アップアップ』」
私たちの身体が緑色に光る。おそらくこれでATKやINTが上昇したはず。
「食らえ!」
「今こそ解放せし我が剣よ!」
「いっけー!」
「……これで終わり」
炎の槍に身体を貫かれ、剣から放たれた光に包まれ、大岩に押しつぶされ、剣に切り刻まれて……ようやくドラゴンは倒れこの長い闘いは終わった。
富田さんの攻撃がビジュアルだけ某セイバーさんみたくなってますねえ




