34話 岩と剣と鉄vs鱗と炎と爪 前編
久しぶりの一人称視点です
やっぱりこちらのほうが書きやすいですね(なぜ最初からこうしなかった)
【シズネ視点】
私はきっと訳の分からないやつだとみんなに思われているに違いない。
表情の変わりにくい顔、感情が表に出ないのは仕方ないとしても、そもそもで感情の起伏が乏しいのだ。
両親ですら私の感情を読み取ってくれないだろう。まあ他人と同じくらいにしか関わってこなかったのだから仕方ない。
私の感情を知っているのは私だけ、そう思っていた……リュウキと出会うまでは。
リュウキと付き合いだしてから――あくまで友人として――私は少しずつ感情が顔に出るようになったと思う。出ていなくても私の言葉や仕草からリュウキは私の感情を読み取ってくれた。私のしたいこと、食べたいもの、見たいもの、何でもリュウキは叶えようとしてくれた。
リュウキを通じてマカとも知り合えた。私を慕い姉と呼んでくれる存在。ちょこちょこと後を付いてくる姿は可愛くていじらしい。たまにリュウキと喧嘩をしたときに私に向ける視線は思わず味方になってしまうほどだ。それがマカの作戦なのだろうとしても抱きしめて味方にならずにはいられない。私も本当の妹同然のように感じている。
リュウキとマカ、二人がいてくれたから私はここまでやってこれたのだろう。
DNOをやろうと言い出したのはリュウキ。私もやりたいと思っていた矢先であった。きっと私の胸の内を読んでくれたのだと思う。本人は違う、俺がやりたかったんだと言うかもしれないけど。
リュウキとマカに知り合えたことで私は色々な場所に行った。色々なものを食べた。色々なものを見た。色々なもので遊んだ。
だからこれも遊びの延長線上なのだとしても私はリュウキとマカにこれまでに感じた思いを返すのだ。
「……『ロックインパクト』」
「グ……ギャウウウ!!」
私の最大の岩魔法をなんでもないように受け止めるドラゴン。本当に硬い。
今の攻撃でもドラゴンのHPは1%減ったか減っていないかというくらいだろう。
『ブラッドラビット』のようなダメージ軽減とは違う純粋な防御力。そしてHPが中々減らないのは防御力だけではない。膨大なHPもだ。もしドラゴンの体力が10で私の魔法で与えられるダメージが1なら10回繰り返せばいいだけ。だが、100なら、1000なら……先が見えないくらいの作業になる。
「……単純作業ならどんなに楽か」
ドラゴンにただ攻撃だけをすればいいというだけではない。そんなのは家などのただのオブジェクトだ。
モンスターであるドラゴンは当然のごとく反撃をしてくる。
「グラァァァ」
「シズネお姉さま、マカちゃん、こちらに!」
ドラゴンの攻撃のうち、もっとも威力の高く最も面倒くさいのがドラゴンの口から吐かれる炎だ。当たればダメージだけではなく火傷のステータス異常。じわじわとダメージを受ける他、火傷のステータス異常は今のところ時間経過でしか治らない。炎によるダメージと火傷のダメージ、それを回復しているうちに次の攻撃で死んでしまったプレイヤーは多いそうだ。
だが、その攻撃動作は非常に分かりやすく遅いため対処しやすい。
まずドラゴンは大きく息を吸う。それとともに頭を後ろまで下げる。それから頭を前に突き出して炎を吐くのだ。息を吸ってから炎を吐くまで5秒。その時間を僅か5秒と捉えるか、5秒もあると捉えるかは……少なくても私にとっては5秒もある、だ。
「アリア、全身を盾に」
「もちろんですわ!『全点突破』!」
アリアの両腕両足、それどころか顔もお腹からも盾が広がっていく。アリアのDEFに基づいた盾、アリアの身体そのものといってもいいほどである。一つ一つが堅固である上に、アリアは背が高いため私とマカは広がった盾の後ろに余裕で隠れられるため攻撃が掠ることもない。
「お前ら、大丈夫か!?」
こちらを心配したジュガさんが声をかけてくる。
「大丈夫だよ!アリアちゃんのおかげでダメージなし!」
「よし、なら俺はまたこれから突撃してくる。お前らはそのまま遠くから攻撃を続けててくれ。キウイ、俺のHP管理は任せた」
「は、はいぃ……」
ジュガの言葉に眼鏡をかけた気弱そうな女性が答える。
彼女、キウイさんがこの6人の生命線。回復魔法が使える職業である僧侶である彼女は先ほどから全体回復とジュガを対象とした回復を行っているためみな常にHPはフルである。唯一、アリアだけは機械であるため回復できないという弱点が発覚し、シズネのテイマースキルでしか回復できていない。最も、アリアの身体は武器となり、失った部位だけは自分でパーツをつくって欠損を補うことしかできないらしいが……失えばそれだけ『全点突破』の効果が高まるからいいのだろう。
ジュガさんが再びドラゴンを攪乱しようと前へ出ていく。
私は守りは完全にアリアに任せ、ただ後ろから『ロックインパクト』を放つ砲台となっている。
「『スイングラッシュ』×6!」
マカは回転する剣をドラゴンへと飛ばしている。その剣は止まるまで回転し続けるらしく電動のこぎりのようにドラゴンの鱗を削っている。
「グギャアアア」
ドラゴンもこの攻撃は嫌みたいで、剣を叩き落とそうとしているのだが、マカが巧みに操ってそれを許さない。
そして私も……
「……MP150使用『ロックインパクト』」
マカの剣を叩き落とそうと態勢を変えたドラゴンの鼻っ柱に魔法を叩きこむ。1,5倍を上乗せされた威力でさらには顔面の軟らかそうな部分だ。
ドラゴンはたまらず怯み、そこに他のプレイヤーたちの魔法が放たれる。
「グ……ギャ……」
自然回復だけでは到底MPが追い付かない。ただの岩魔法であれば私はMPを消費しないが、それでは大したダメージにならない。ラビとアリアを召喚したときのと合わせてこれでMPはすっからかんだ。私はMP回復のポーションを飲み干す。
「しず姉、残り7割だよ!」
……本当に気が遠くなる。私は気が長いほうだとは思うけどいい加減集中力というものが切れそうだ。
だがそれはジュガさんにも当てはまる。一番前へ出て一番攻撃を受けて一番死にやすいところにいる。掠ったくらいではジュガさんにはダメージがないが、まともに当たれば装甲が拉げることになるかもしれない。
ジュガさんが私たちの負担を減らしていてくれる。それを考えれば弱音なんて吐けないだろう。
それが起きたのは何回目のMPを使用した『ロックインパクト』を放ったときであっただろう。ドラゴンのHPにようやく終わりが見えてきた。残り2割ほど。これなら壁箱の使用時間である1時間に間に合いそうだ。そう思った矢先だった。
「食らえ!」
ジュガさんの砲弾がドラゴンに当たる。それはドラゴンのHPからすれば微々たるもの。だが、その攻撃がなければ私たちのほうにドラゴンはすぐにでもやってくるだろう。囮をするためにジュガさんは攻撃をしている。
ドラゴンが爪を振るう。
「ギリギリだが……避けられる!」
ジュガさんはあえて懐に飛び込むことでドラゴンの爪を避けた。だが、それによりジュガさんは逆に危機的な状況へと陥った。
「ジュガ、前へ出すぎだ!」
大きな盾を構え、キウイさんとアラダさんを守っていた男性――富田さんが叫ぶ。
「……なっ!?」
続けてきた爪を避けるために後方へと下がったジュガさんだが、前方を見たまま下がったのが災いした。
「落とし穴ってわけか……」
ドラゴンが振るっていた爪、それが何回も同じ場所を、地面を抉るうちにその抉られた箇所は段々深い溝へとなり、ジュガさんはその溝に落ちてしまった。
「ジュガ、早く上がってこい!」
「ちくしょう、そうしたいんだが、キャタピラと砲台が……」
ジュガさんのキャタピラは多少の凸凹した道でも安定して走れるが、溝はほぼ垂直である。これではキャタピラで走るどころではない。
加えて、ジュガさんの両腕は砲台となっているために溝の縁に手をかけて昇ることができないでいる。
「こうなったら解除するしかないか……」
ジュガさんが『重機戦車』の能力を解き、人間の姿へと戻る。
だが、それを待ち構えていたかのようにドラゴンは息を吸う。
「っ!?ジュガ、早くしろ!やつは炎を吐く気だ!」
ドラゴンが息を吸ってから炎を吐くまで5秒それを僅かと捉えるか5秒もあると捉えるかは、今回ばっかりは5秒しかないと捉えるしかない。
ジュガさんが溝から身体を出した、その時にドラゴンの炎がジュガさん含め私たちに襲い掛かった。
「シズネお姉さま、マカちゃん!」
アリアが私とアリアを覆い隠すように盾を広げる。アリアの盾も数が少なくなってきた。残りは両腕にある盾だけ、か。ちなみにラビは先ほどからちょくちょく炎のダメージを負っている。ラビには好きにするよう命じているので何か考えがあって動いているのだろうか……分からない。
「ジュガ、返事をしろぉぉぉ」
ジュガさんは炎に包まれていた。戦車の装甲もなく盾もない状態で……。
富田さんが必死に叫ぶなか、炎が消えジュガさんの声が聞こえる。
「ゲホッ、なんとか生きてるが……」
ジュガさんのHPはきっともう僅かだろう。そして火傷のステータス異常。はやく回復しなければまずい。
「は、はやく回復しなくては」
キウイさんが回復魔法を使う。だが、その前にジュガさんに迫るものがあった。
「ジュガ、まだ来てる!爪が来てるぞ!」
ジュガさんの態勢が整わないうちにドラゴンの前足が浮き上がる。爪で攻撃しようとしているのだろう。これを食らえば確実にジュガさんのHPは無くなる。
ジュガさんは避けようとするが、戦車でない状態で、キャタピラなくしての足では思うように走れないようだ。
ドラゴンの爪が振り下ろされる。その爪は鋭くはなく、どちらかというと切れ味はなさそうだ。だが、分厚い爪は質量でもって叩き潰すには十分。
ジュガさんの避けようとする気合の声、キウイさんの悲鳴、富田さんの叫び声、アラダさんだけは無口なようでしゃべることはないがそれでも顔が強張っている。
「避けろジュガー!!」
シズネ視点のジュガ主人公な話となってしまいましたが主人公は壁の向こう側で闘ってますよ!
話しの区切り方ってどうやればいいんでしょうかね…




