32話 指輪と親子と竜魔
タイトルどうしようかと悩みました
現在金曜日の6時半。授業も終わり帰宅をしたリュウキとマカ、それに共にリュウキ宅についてきたシズネはDNOをプレイする前に早めの夕食を取り、身支度を済ませていた。
「よし、時間だ。行くよ二人とも」
「……今こそ修行の成果を見せるとき」
「修行ぽいことしたっけ?とりあえず勝つぞー!」
本日はいよいよプレイヤーボスへと挑む日である。翌日は土曜日で休日であるためマカも時間を気にする必要はなく、長丁場の闘いができる。
アリアが仲間になってから数日、リュウキ達はゼギエル周辺のモンスターと戦い、職業レベル、二つ名レベルを上げることに励み、技術の向上を目指した。
結果、二つ名こそレベルは上がらなかったが、職業レベルはそれぞれ最前線組の平均程度には上げることができた。
とはいえ、これは最前線組のレベルがなかなか上がらないためここ一週間ほどは他のことに興じていたからである。
一定以上のレベルになればゼギエルのモンスターではいくら倒しても経験値の入りは悪くなる一方なのである。
「7時半にボスへと向かう洞窟入り口に集合だから……余裕は少しだけあるね。装備を見直して、アイテムが足りてるかも確認してから出発しようか」
「じゃあ部屋に戻るねー」
「……また後で」
三人が、シズネはリュウキと共にリュウキの部屋から、マカは自分の部屋からそれぞれログインする。
アイテムの補充が終わり、ダラークたちが待つ洞窟へと向かって歩いていると、マカが思い出したように、
「そういえばさお兄、『エッジワイヤー』を倒した後に宝箱見つけたじゃん」
と話を切り出した。
「ああ、地下に通じてた宝箱な」
ラビがあそこに飛び込まなければリュウキたちはあの宝箱の底が空いていることに気づかなかっただろう。
ライフ工場における裏ステージのような場所、それが地下での『クラッシュタイラント』との闘いの場であった。
「そこにさー、指輪あったの覚えてる?」
「指輪……確かあったな、そんなのが」
「……忘れてた。……これだっけ」
シズネが取り出したのは一つの指輪。リュウキとマカも一つずつ持っている。未鑑定品であり、鑑定スキルがある者に鑑定してもらわないと詳細が分からなく、その存在をすっかり忘れていた。
「こないだギャブーさんのところに行って鑑定してもらったんだ。そうしたらさ、経験値が増えるって効果なんだって!」
「へえー……って、それ俺らも一緒に鑑定してもらったほうが良かったんじゃないか?ボスからの経験値が増えるなら嬉しいけど、今からギャブーさんのとこに行く時間ないぞ」
マカは剣の補充をしにちょくちょくギャブーの元へ訪れていた。最初はリュウキとシズネも付いていこうとしたのだが、マカが二人はゆっくりデートでもしててという言葉にシズネがそうすると答えてしまい、一人で行かせる他なかったのだ。
リュウキとしてもマカが一人で行動できることは悪くないことだし、ギャブーさんなら安心だしでシズネとのデートを楽しんできた。
だが、その間に指輪を鑑定していたというなら話は別だ。デートも楽しかったが、鑑定だけならついでに一緒にできたはずだ。忘れていたリュウキが言えることではないのだが。
「ふっふーん、それなら大丈夫!なんと鑑定スキルをゲットしたんだー。……ひたすらアイテムを凝視するの大変だったけどね」
「おお!……おぉ」
お疲れさまとリュウキとシズネはマカをねぎらっていく。
職業や二つ名以外でスキルを得るにはひたすら反復作業をするしかないようだが、マカの様子からかなり時間がかかったようだ。
「じゃあお兄としず姉の指輪も鑑定するから見せて!」
リュウキとシズネはアイテムボックスから指輪を出しマカに渡す。
しばらくジッと見ていたマカだが、急にカッと目を見開き、
「おお、お兄のはDEFアップの効果があるね!しず姉の指輪はINTアップだー!」
リュウキの指輪はともかくとして、シズネの指輪はそのまま装備できそうである。
「俺、DEF低いけど、この指輪で防げるかな……」
リュウキはATK、AGI特化型ビルドであるため多少のDEFアップはそこまで意味がない。ないよりはマシ程度であろう。
「なら私にくださいませんか?」
そこで背後からヌッと手が伸びてリュウキの手から指輪を奪い取った。
「うおっ!?アリア、いたのか」
「ええ、いましたわよ。それよりも、DEFが上がると言うこの指輪頂いてもよろしいですか?代わりにこちらのを差し上げますから」
そう言ってアリアは元から指につけていた3つの指輪のうち1つを外してリュウキに渡す。
アリアはモンスターとして作られた機械人形であるが、最初からいくつかの装備を身に着けていた。とはいえ、初心者装備に毛の生えたようなものであり、今ではギャブーに製作してもらった装備を身に着け、そこいらのプレイヤーに負けないような装備となっている。
最初からつけていた装備のうち、指輪だけはそのままつけていた。理由は他に付け替えるものが無かったためである。指輪はオシャレアイテムとしての意味合いもあり、そこまで重視されていない。効果もないよりはマシ程度が多く、リュウキ達も指輪や首輪といった装備は気にしていなかった。
「別に構わないけど……こっちはどんな効果があるんだ?」
「これはですね……少しだけモンスターに襲われやすくなる効果のある指輪です」
「よし、アイテムボックスにしまっておこう」
アリアから受け取った指輪を嵌めずそのままアイテムボックスに投げ入れるようにしまった。
「ああ、酷い!せっかく私からのプレゼントですのに……これだから男は」
「いや酷いのはこの呪いみたいな指輪と、それを平然と俺に渡すアリアだからね!まあ、俺がタゲを取るときだけは使うから許してくれよ」
「それでしたらまあ。ところで、この指輪、リュウキさんから私に嵌めてくださいませんか?
「え?いいけど」
スッと何事もないようにアリアの白く細い指に指輪を嵌める。ちなみにさすがにリュウキも薬指に嵌めるという意味は理解しているため中指に嵌めた。
すでにステータス画面より装備はしているようでそのまま指に収まる。
「あら、動揺なさらないのですね。……では、シズネお姉さまも嵌めてもらってはいかがですか?」
え!?とリュウキは後ずさりする。
アリアはあくまで仲間としてしか見ていないため何の感情もなく指輪を嵌めることができた。だが、シズネ相手では、少なからず想っている相手では緊張してしまう。
「……ん」
シズネは右手に指輪を置き、左手を出す。
「よ、よし。嵌めるからな」
内心動揺し冷や汗だらだらなのを表に出さないようにしながらリュウキはシズネの指に指輪を嵌めようとする。
「……リュウキ、その指じゃない。……薬指に」
「……はい」
中指に嵌めようとしたがバレてしまった。
リュウキは誰も見ていませんように、とあたりを見渡してからええい、ままよ、と一気に薬指に指輪を通した。
「これで……いいな」
「……うん」
シズネは嬉しそうに指輪を見つめている。その様子を見ていると頑張った甲斐があったなとリュウキも嬉しくなる。
「お兄、私もー!」
「はいよ」
リュウキはスッとマカの指にも嵌めてやった。
「あれ!?何で私もアリアちゃんと同じ反応なの!」
せっかく嵌めてあげたのにぶーぶーとマカが文句を言う。
それをリュウキが宥めながら歩いていると、前から男が走り寄って来て
「もしかして灯か!なあ父さんだ、分かるか?」
と、マカの肩を掴んできた。
「……誰ですかあなた。マカちゃんに馴れ馴れしく触ってきて」
リュウキ達が動く前にアリアが剣に変形させた腕を男に突き出していた。
その見事な早業に男も、マカですら動けなくなってしまった。
「さあとっととマカちゃんから手を離しなさい。それともその手を斬り落としてあげましょうか?」
「え、あ、いや……ん?君は……どうやら違ったか……」
男は慌てたようにパッとマカから手を離して頭を下げた。
「すまない、娘と勘違いしていたようだ。実は別れた妻についていった娘がこのゲームをやっていると聞いてね。この写真の子なんだが、見たことはないかい?」
そう言って一枚の写真を見せる。
そこに写っていたのは5歳ほどの少女。髪を左右に結んで肩の辺りに下げている。
「7年前の写真なのだが、可愛いだろう?……いや本当にすまない。私の娘と同じ年頃だったから見間違えてしまってね。私は竹田。こちらではしがない樵をしている者だよ」
そう言って竹田は頭を上げる。年齢は40歳ほどの渋い顔をした中年の男性だ。顔は濃いわけではないが、身体全体を含めて見るとしっかりと筋肉が付いた男といった感じだ。
「もし見かけたら教えてほしい。……たぶん竹田という名の樵をこの街で探そうと思えばきっと私に辿り着くはずだ」
「分かりました。見つかったら連絡しますね」
「ありがとう。お嬢さんもすまなかったね。そちらのお姉さんにも改めて謝らないと」
「大丈夫だよ!それよりも早く見つかるといいね」
「まあ事情が事情ですしね。今回だけは許してさしあげますわ」
竹田はそのまま謝りながら他の人の元の所に行ってしまった。おそらく写真を手掛かりに娘をこれからも探していくのだろう。
「7年間会ってないようだったけど……そういえばシズネは何時にもまして無口だったな」
「……親が子供を探す気持ちが分からない。……子供にとっては迷惑になるかもしれない」
シズネは未だ両親との間に確執を抱いている。いや、そう思っているのはシズネだけで、シズネの両親は何とも思っていないのかもしれないが。
「親が子供を心配するのは当たり前だよ。きっと7年も会えなくて寂しくなったんじゃないかな。それは兄妹でも一緒さ。俺とマカがずっと会えなかったら俺が寂しくなる気持ち、これなら分かるだろ?」
「……うん」
「そんな気持ちをあの竹田さんは娘さんに抱いているんだよ」
娘と一緒にいた期間よりも離れていた期間の方が長い。それはどのような気持ちなのか、実はリュウキにも分からなかった。というよりも計り知れない。
「きっともう限界なんだねー。だから私を娘って勘違いしちゃったんだ」
マカが悲しそうにつぶやく。リュウキと離れ離れになったところを想像してしまったのだろう。
「まあ俺たちはいつでも3人一緒さ。きっとこの先も離れ離れになることはないよ」
「あら?私は入れてくださらないのですか?」
「アリアも入れれば……いや、ラビも入れて4人と1匹は一緒だ!」
アリアからの鋭い視線にリュウキは冷や汗が止まらなかった。
「おい、時間ギリギリだぞ。もっと余裕持ってこいよ」
「すいませんダラークさん。ちょっと色々ありまして……」
竹田と話していたおかげで走ったあげくに7時半ちょうどに洞窟に辿り着く結果になってしまった。
「まあいい。ここからは気を引き締めて行けよ。ボスまでの道は俺の今回は参戦しない仲間が引き受けてくれるから気にせず進んでいってくれ」
よく見るとボスは12人で挑むはずなのに20人強と人数が少し多い。
ダラークを含め9人、それに離れたところに10人ほどがおり、そちらを見ると武器をかかげて笑いかけてきた。
「おう、任せろよ!」
「俺らにできることはこのくらいだからな」
「こいつらもそれなりに闘えるが、二つ名含めるとお前らの方が強い。今回は勝つためにお前らを使うが、こいつらも一緒に闘っているということを忘れるなよ」
そう言ってダラークは洞窟内部に進み始めた。他の者たちも付いていく。
リュウキ達も遅れないようにダラークの後ろを歩く。
「それとお前らが見つけてくれたアイテムな。あれは俺がタイミングを見計らって使うからその辺は任せておけ」
歩く間にもコウモリ型のモンスターが群れで飛んでくる。
それら全てがダラークたちに近づく前にダラークの仲間が魔法で撃ち落としている。
「シズネはボスの部屋に入るまではテイムモンスターはしまっておけ。出しておくとパーティメンバーに数えられちまうからな。ボス部屋で出す分には大丈夫って報告がある」
「……わかった」
シズネはラビとアリアをしまう。
トカゲ型モンスターが火を吹きながら接近してくる。
盾を持ったプレイヤーが押しとどめているうちにボス攻略組は急いで突破する。
「よし、着いたぞ。ここまで来ればモンスターは近寄ってこないから回復が必要ならしておけ」
途中の道で攻撃を食らってしまった者、MPを消費した者が回復していく。
「じゃあ扉を開けるぞ。ここからは後戻りできない。次に街に戻れるのはこの部屋の主を倒したときか……死に戻ったときだ」
まずダラークが入り他の者も続いていく。
リュウキ達は一度深呼吸をし、最後に入る。
部屋の中は薄暗い。きょろきょろと中の様子を見まわすが近くはともかく部屋の端のほうまえでは見えない。
「よく来たな冒険者たちよ」
部屋にあかりが灯る。壁にいくつも松明があるようだ。
部屋の奥には一人のプレイヤーが見えた。鎧甲冑を来た、声から察するに男のプレイヤー。
この男がプレイヤーボスなのだろう。
「ほう、貴様たちは確か一番強き冒険者たちであったな。ここしばらく見かけなかったが、力をつけてきたのか?ならば見せてみよ。我が名はアスタロト、貴様らプレイヤーの最初の試練だ。さあ踊れ、我が竜魔とともに」
プレイヤーボス――アスタロトが地面に両手を付ける。
「『竜魔激闘』」
アスタロトが地面の中から何かを掴むように両手を握り引き上げる。
「我が能力は竜と悪魔を召喚せしもの。さあ倒して見せよ!」
アスタロトの両手にはそれぞれ小さなトカゲとコウモリが掴まれている。
「……弱そう?」
もっと恐ろしい、何か強大なものが出てくると思っていただけにその弱々しい二匹にシズネは思わずつぶやく。
「案ずるな娘よ。これだけではない、見よ我が二つなの固有スキルを!二つ名レベル10にして我が最大のスキル、『ストレイン・エボリューション』!」
アスタロトが手から二匹を放し、スキルを使用する。現在プレイヤーで確認されている二つ名レベルはダラークの5。それの倍のレベルの固有スキルである。生半可なものではない。
トカゲは見る見る膨らみ巨大かし、黒い鱗を持つドラゴンへと変化……否、進化していく。
対するコウモリも大きくなっていくが、人と同じくらいまで大きくなると、手足が生え身体が変形し、黒い悪魔、デーモンへと進化した。
「さあ来い冒険者たちよ!我にその知恵と勇気と力を見せてくれ!」
ようやく来れたぜボス攻略!
すいません、少し変更しました
後日、ステータスなどもここに追加していきます!




