31話 受け継ぎ
機械人形アリア、モンスター名『ドールマター』が一日のリセット・再起動の間に新たな性格や人格を作り出す際に参考にしたのは人の強さの比類であった。
男と女のうち力で勝るのは男であろう。
老人と子供よりも若者が強い。
健常者と障碍者であれば健常者の方が強い。
金持ちと貧しい者であれば金持ちの方が強い。
人を二つに分けろと言われたときにその分け方は幾通りもあるが、必ずしも平等には別れず、そこには強弱の関係が付く。
人と関わる上で最も最適な行動は人の信頼を得て、親密な関係になること。そうなるためには弱き者を助け強き者から守ることが必要だと結論付けられた。計算に基づく演算と精算の結果、この結論に辿り着いたわけだが、そこには当然『クラッシュタイラント』ですら予想だにしていなかったことがあった。
『ドールマター』の材料はモンスターのドロップ品である。それらを『クラッシュタイラント』の配下の機械たちが集め、『ドールマター』を形作るカプセルへと繋がる炉へと放り込んでいた。
材料は万全。環境も十全。だが、足りないものが一つだけあった。
それは時間。リュウキ達の来訪により『クラッシュタイラント』は『ドールマター』の完成を急がせた。無理であろうとも、無茶であろうとも、侵入者たちに壊されるよりかははるかにマシであるためだ。
完成はした。だが、少し思考における回線回路に異常が生じた。
人としては当たり前なのかもしれない。だが、機械であればそれは異常であり異質。
機械は公平であり平等であり全てを等しく判断しなくてはならない。人などに優劣はなく大小の違いがあろうともそれは誤差の範囲。
だが、異常で異質な『ドールマター』アリアは人に優劣をつけ大小の違いから人の格差を判断した。
その結果、こうなった。
『ああもう、シズネお姉さま!なんて凛々しいお顔立ちなのかしら!』
アリアはシズネに抱き着き頬ずりをし始めた。
「……よしよし」
シズネはまんざらでもなさそうにアリアの頭を撫でている。
ペットに懐かれているのだとでも思っているのだろう。
しばらくシズネに撫でられていたアリアだが、バッとマカのほうを向くと、
『マカちゃんも何て可愛らしいのかしら!この、守ってあげたくなる気持ちは……もしかして恋?』
「たぶん違うんじゃないかなー?私はアリアちゃん好きだけどお友達としてかなー」
『お友達?そう、それもいいわ!』
アリアはマカの手を握りしめぶんぶんと振り回す。
マカは困ったような苦笑いでアリアの手を握り返している。
「よろしくな、アリア」
マカの手を握ったままでいるアリアの顔を見ながらリュウキは挨拶をする。一応リーダーのような立ち位置にいるわけだ。新しい仲間にはまず挨拶だろう。
『……』
「あれ、アリア?」
聞こえなかったのかと思いリュウキは再び挨拶する。
『……はあ』
「え?」
『聞こえてますよ。まあ、あなたはシズネお姉さまやマカちゃんの仲間だから話してあげますけどね。私は女の子以外とは基本仲良くしないつもりなので、そこのところ理解しておいてください』
弱き者(女性)を守り、強き者(男性)を排除するという考えに至ったアリアは見事な女尊男卑の思考へと至っていた。リュウキのように例外はあるようだが、それでも態度は冷たい。
「……アリア」
『はい、何でしょうシズネお姉さま!』
行け!言ってくれ!とリュウキは心の中でシズネを応援するが、その願いは届かなかった。
「……リュウキのことはどうでもいいから、それよりもあなたの能力を教えて」
「……あの、シズネさん?どうでもいいって……」
「アリアちゃんも二つ名あるの?」
抗議しようかと思ったが、マカによりリュウキの声は打ち消される。
『私の能力、ですか。シズネお姉さまなら私のステータスを見れるのではないですか?』
テイマーはテイムモンスターのステータスを把握することは可能だ。
そしてパーティメンバーであるリュウキとマカもシズネを通じてアリアのステータスを見ることができた。
だが、二つ名に関する情報はあくまで端的に書いてあるため詳しい情報は分からない。そのため本人から直接聞く必要があるのだ。
ちなみに、アリアはのステータスはこうなっていた。
アリア ドールマター LV9
『全点突破』 LV3
HP 170
MP 40
ATK 20
DEF 80
INT 30
AGI 10
DEX 10
LUK 10
『全点突破』LV1
アクティブスキル:身体の武器化
パッシブスキル:武器防具が破壊されるたびに攻撃力が上がる
ここから分かることはアリアは身体、手足を武器や防具にできること、そしてそれらが壊されるたびに攻撃力が上がることらしいが、もっと詳しく知りたいとシズネは言っているのだ。
ステータスに関しては防御特化型。シズネを守るにふさわしいステータスであり、二つ名の説明に間違いがないなら低い攻撃力は二つ名の能力で補えるのだろう。
『そうですね……私の手足はこの通り、剣や盾に変えられます』
そう言ってアリアは右腕を剣に、左腕を盾に変形させる。
それは初心者が使うのよりは物が良さそうだが、リュウキ達が使ってるのよりは劣るように見えた。
『私のステータスに比例するので今はそこまで良い装備にはならないんですけどね』
そう言ってアリアは苦笑する。
やはり女の子と話す分には普通に良い子のようだ。
『例えばこの盾が壊されたとします。そうすると盾に使われていた私のステータス分のエネルギーは剣に移動するわけです。剣は盾の分の力を得て威力が上昇するわけです。この辺りは父から受け継がれた能力ですね』
『クラッシュタイラント』の『四点突破』。それは武器を壊すたびに他の武器の攻撃力や性能を上昇させていくものであった。
『一つ違う点があるとすれば、父は他の機械を身体につけて武器にすることができたことです。私は残念ながらそれは叶いませんでした……。しかし、4つの武器しか使えなかった父とは違い、私は全身を武器に変えられます。どちらが良いのかは……私には分かりかねますね』
「……そう。……数日後にボスと闘う。……たぶん『クラッシュタイラント』よりも強い。……一緒に闘ってくれる?」
『もちろんです!』
ボスと闘う際にシズネを守りながら闘うことはリュウキには難しい。おそらくマカも。自分の身を守るだけで精一杯だろう。
「アリア、俺からも頼む。シズネを、できればマカも守ってやってくれ。俺は前に出て闘うことしかできないからね」
リュウキからの素直なお願いにアリアは驚いたのか一瞬固まる。
少し顔を赤くしながら、
『しょうがないですね。せいぜいボスとやらにあなただけボコられてなさい。シズネお姉さまとマカちゃんは私の全身を以て守りますから』
そしてアリアは少し咳をするような仕草をした後、
「んんっ!これで人の声は真似できましたわね。リュウキさん、私の仲間を名乗るならば……無様な真似は許しませんからね?」
ニコリとリュウキにとっては背筋が冷たくなるような笑顔でそう言った。
別作品がすいすい進め過ぎたため闘いしかやらなかったなーと反省した結果、こっちは全然進まない…




