30話 攻略への糸口?
アリアが仲間となった翌日、リュウキ達はは再びゼギエルへと向かっていた。
リュウキの同行者は3人。仲間であるシズネ、マカ。アリアはまだシズネの中で眠っているためでてきてはいない。残りの一人は仲間ではなく、依頼者だ。
現在、彼らはプレイヤーによる個人的な依頼を受けていた。理由は知り合いであったこと、そしてゼギエルまでの道のりでPKに襲われないと言うことを依頼者が知っていたということである。
PKを生業とするプレイヤーの目的はただ他のプレイヤーと闘うだけではない。
他のプレイヤーからアイテムや金銭を強奪することを楽しむプレイヤーもいる。そのため、生産系プレイヤーは戦闘に携わる者に護衛をつけて街から街へ、フィールドへと採集へ出かけることがある。
「悪いな兄ちゃんたち。戦闘なんか転職前が最後だからよ」
「いえいえ。ギャブーさんにはこれまでにお世話になってますし。それに、ギャブーさんがゼギエルに来てくれるならきっと攻略も進みますよ!」
ギャブー鍛冶店の店主であるギャブー。彼はガラクサからゼギエルへと店を移動しようとしていた。だが、向かうまでに襲ってくるであろうPKに対抗できるようなプレイヤーの知り合いはほとんどがゼギエルの方に行ってしまっているため新たに有望なプレイヤーを見つける必要があった。
そのようなときにギャブーの店へと来たのがリュウキとシズネ。二人は闘いに向いている二つ名である上に、戦闘に関するセンスも良い。ゼギエルに辿り着いた暁には依頼しようかと思っていたのだ。翌日には新たな仲間を連れ、さらにその日のうちにゼギエルに着いたと聞いたときには驚いたが、闘い方を聞く限り、確かに経験値ボーナスは多そうだと頷けた。
さらにはあのダラークからPKに襲われないように守られていると聞く。
彼らに依頼する以外の道はないとギャブーは結論付けた。
「ギャブーさん、こんなに剣もらっていいの?」
「ああ。マカの嬢ちゃんにはこうして守ってもらってるんだからよ。その剣も俺の失敗作みたいなもんだから持て余してたんだが、嬢ちゃんなら剣はいくらあっても困らないだろ?」
「うん!ありがとうギャブーさん!」
ギャブーは護衛の報酬として三人に新たな武器を造る約束をしていた。
リュウキには籠手を、シズネには杖を、マカには大量の剣を。それぞれ渡す約束をした。
マカに関しては店を移動させるときに廃棄するはずであった大量の剣を譲り受けることで双方納得した。
「新たな門出に失敗作はなるべく少なくしたいからな。こんなもんで良いなら俺としても助かるぜ」
ギャブーから譲り受けた剣は10本。ライフ工場での闘いで耐久値が大きく下がっていたマカの武器の補給ができたというわけである。
マカの闘い方は武器の数を利用したスキルの連発が多い。それがマカの強みであり、特徴であるのだが、強力なスキルを使えばそれだけ武器は傷ついていく。
数が多いため、それほど強くない数打ちの剣を消耗品としているマカにとって剣は壊れたら次の剣を装備すればいいや程度なのであった。
鍛冶師としてマカの考え方はあまりよろしくないのだが、それがギャブーにとっては思い入れの少ない失敗作であるため、使ってくれるだけありがたいというのもある。
マカは渡された中で一番良い剣だけ自分が装備し、他は『舞空剣技』の装備にセットした。
「いやー、助かった。まさかこんなに早くゼギエルに来れるとは思わなかったぜ。本当ならもっと高い報酬を払わなきゃいけないところだが、今は手持ちがなくてな……」
「だから大丈夫ですって。それに俺たちの装備が初期装備だった時だってギャブーさんはもっと強いのを貸してくれたじゃないですか。これはその時のお礼と思ってください」
「そうだな……そう思うことにするか。……と、ここまでだな。ありがとうな」
「またお店ができたら教えてください。見に行きますので」
「ああ。兄ちゃんたちが使っている装備はここのボスにも通用するものだ。少なくとも装備面で他のプレイヤーに劣ることはないはずだ。しっかり闘ってくれよな」
ゼギエルに到着するとギャブーは自分の店を見に行った。どうやら契約等は済ましてあったらしいが、実際には見たことはなかったらしい。
報酬とは別に渡されたシズネとマカの新たな装備は以前から頼んでおいたものだ。昨日はライフ工場での闘いで受け取ってすぐログアウトしてしまったためまだちゃんと装備の性能は見ていなかった。先ほどゼギエルまでの道のりでモンスターからの攻撃をうけたところ、確かに防御力は上がっていた。特にシズネは岩魔法での防御力の底上げもできるため相当な硬さになるだろう。
「とりあえずダラークさんのところに……いや、あの人のとこに行こうか」
「……そうだね」
リュウキ達が向かったのはライフ工場で命を落とした男の妻、ダラークが受けたクエストにおける依頼者の家である。
『クラッシュタイラント』から預かったアイテム。それを渡すためだ。
依頼者であるNPC――カザラは夫の遺品である指輪を渡した途端、泣き出してしまった。
数分で落ち着いたが、それでも目元は涙目である。
「これは私たちの結婚指輪です……。あの人ったら……」
そしてまた泣き出す。
「すいません、しばらく一人にさせてください。……あの、夫がどこからか拾ってきたものですが、これをどうぞ」
最後にカザラから送られてきたのは四角い箱であった。中身を開けようとしたが、開かない。
「なんだこれ」
「さあ。鑑定スキルを持っている人に見せてみてください」
カザラはそれからは泣き続け、リュウキ達の言葉に反応しなくなった。
「鑑定スキルって何だろ?」
「分からないな。聞いたこともないし」
スキルの多くは職業に由来する。少なくとも格闘家、戦士、テイマーのスキルではない。
「……ダラークさんに聞いてみよう」
「そうだね。元々ライフ工場のことを報告するつもりだったし行こうか」
ダラークたちは普段はPKを、それ以外は喫茶店にいると言っていた。
果たしているのだろうか。まずはフレンドメッセージで聞いてみることにした。
「あ、今なら大丈夫だってさ。ダラークさんもライフ工場は気になってたみたい」
「よーし出発だ!」
昨日歩いただけで道は覚えたのだろう。マカが走り出す。学んだことは忘れない、マカの天才性は記憶力に基づくためこういうところでマカは強い。
勢いよく走り出そうとするマカを押さえながらリュウキ達は追いかけた。
「――ということがあったんです」
「ほう、そりゃあやるじゃねえか。初見のネームドモンスターを倒すなんざあんまし出来ねえからよ。そんなことできるのは俺ら攻略組プレイヤーの上位層や……まあ後は他の一部くらいだ。そんでアリアだったか?新しいテイムモンスターが増えて良かったじゃねえか」
「……まだ眠っている。一日経過って言ってた」
「なら24時間後ってことかしらね。機械だし」
「なあに、どうせ今日中には分かることなんだろ。それより、あの奥さんから預かったってアイテムだがな、多分だがプレイヤーボスに関わるアイテムだ」
確信を持っているかのようにダラークは言う。
「そうなんですか?」
「ああ。あのイベントで俺らがもらった報酬はプレイヤーボスへの行き方だった。なら今回もボスに何かしら関わるアイテムのはずだ。攻略の仕方かあるいは……」
「これ、ダラークさんに預けてもいいですか?鑑定スキルっていうのを持っている知り合いがいなくて」
ダラークは最前線で闘うプレイヤー。知り合いもたくさんいるだろう。そう考えてリュウキはダラークに謎のアイテムを託した。
「任されたぞ。まあ違ったら返すしよ。お前ら、次はどこに行くか決めたのか?」
「今日は昨日の闘いで消費したアイテムの補充だけですね。冒険は明日また行こうかと」
ライフ工場での大量のモンスターとの闘い、『エッジワイヤー』や『クラッシュタイラント』との死闘でリュウキ達の持っているアイテムはほとんど底をついてしまった。
なので今日は補充に専念し、持っているアイテムをどこかで清算しようかと思っていた。
「そうか、休むことも重要だからな。俺らはこれから出かけるから何かあったら明日また来い」
「はい、ありがとうございます」
下位ポーションのアイテムの補充の前にギルドにてクエストの確認をすることになった。
ライフ工場に向かう前にクエストを受けていたことを思い出したのだ。
「いっぱいクリアできたねー!」
「……だいぶお金とアイテム増えた」
機械型モンスターの群れを何度も相手にしたことが良かったのだろう。
討伐クエストや採集クエストがいくつもクリアされており大量の金とアイテムを報酬として受け取ることができた。
「これなら下位ポーションとかの補充は大丈夫そうだな。時間もあるし、どこかで時間をつぶそうか」
今日は闘わずに一日休むと決めてある。
ゼギエルの観光は初めて訪れた際に少し散策した程度だ。まだまだ行ってない場所がたくさんある。
「やったー!お兄、私食べたいものがあるんだ」
「……私も、甘いもの食べたい」
「……二人とも、こないだ食べ過ぎてログアウトした後に苦しそうだったのもう忘れたの?」
街を歩いていれば時間などすぐに過ぎていった。見るものすべてではないが、見たことないものが多いこの街では観光に飽きることはなかった。
とはいえ、アリアが目覚めるといった一日が経過した。
「……召喚可能になってる」
「よし、じゃあ呼び出そう」
「アリアちゃん、人格?性格?が変わるって言ってたよね。どんな子になるんだろう」
アリアは元々は機械であるからか無表情、無感情で会話をしていた。
だが、眠りにつくときにそれらはリセットされ新たに生まれ変わるらしい。
「……召喚、『アリア』」
シズネのテイムモンスター召喚によりアリアが呼び出される。
跪いた状態で召喚されたアリアの外見に変化はない。
だが、こちらを向いたときにその変化は顕著に表れた。まず、シズネを見るやニコリと笑い、
「笑った⁉」
シズネに飛びつき、抱きしめた。
『シズネお姉さま、会いたかったです!』
「変わりすぎでしょ!」
無表情、無感情の機械人形は笑顔で感情豊かな機械人形になっていた。
場面転換というか、人と別れる場面ってどう書けばいいんでしょうか




