28話 圧政からの解放
『クラッシュタイラント』との闘いが始まってからシズネは相手の武器を見ていた。
スタンガンや鎖、何かを挟む機械があるが、左腕には砲台らしきものがあるのを見逃さなかった。かつてジュガと闘ったシズネである。砲台を嫌というほど知っている。
何が発射されるのかは分からない。だが、巨体である高さゆえに一方的な攻撃となってしまう危険がある。
戦闘機があるように、空中からの遠距離攻撃ほど一方的な攻撃はない。
もしも範囲攻撃ならばリュウキやマカが危ない。そう考えたシズネは『クラッシュタイラント』に気づかれないように砲口に岩と砂を少しずつ詰めていた。
リュウキとマカはそれに気づいており、リュウキは鎖をなるべく長く食い止めることで、マカはある程度まで慎重にスタンガンを分解した後に圧殺機を分解し、その後にスタンガンを破壊した。。『クラッシュタイラント』はそれによりスタンガンの次は圧殺機を破壊しようと思い、砲台について何も考えなかった。
もし、『クラッシュタイラント』に違和感を感じる機能があれば気づいていたかもしれない。あるいは砲台に感覚を感じられれば……。だが、そんな機能はなく砲台を使用することでようやくその異常に気付いた。もう手遅れであったが……。
『よもや我自身の攻撃で我は倒れるとはな』
砲口を塞ぐことで砲台内部で弾を爆発させ、砲台を壊す。
砲台だけが破壊され、大元の『クラッシュタイラント』はまだ動きそうではあるのだが、HPの上では砲台の破壊でゼロとなり倒れた。
全ての武器を剥がされ、今や小さな1つの四角形状の機械だけとなった『クラッシュタイラント』に少し前まで闘っていたときの面影はない。
「人間の力も捨てたもんじゃないでしょ?」
『ああ。……貴様がいるうちは機械が最強とは言えぬな』
『クラッシュタイラント』は憑き物が落ちたかのような穏やかな声で答える。
「お前は……『クラッシュタイラント』はこのまま死ぬのか?」
HPがゼロとなっているのだ。モンスターであるがゆえにポリゴンとなって消えるのは免れないだろう。まだ消えないのはこれもクエストのうちであるからだろうか。
『死ぬという機能は我にはない。我の動力源、中枢コアが破壊されたから停止するだけだ。いずれ、自己修復機能により復活するであろう。だが、それには莫大な時間がかかる』
「そうか……」
リュウキは悩む。復活したとき、その時に『クラッシュタイラント』が再び人間に危害を加えるようなことがあるなら……それならば今ここで完全に止めを刺しておいたほうがよいのだろうか。
『安心しろ強き人間よ。我が人間を支配しようとしたのは人間が弱いからだ。だが、貴様のような強き人間はまだ地上には幾人もいるのであろう?ならば我は我を求める者が現れるまではここで眠るとしよう』
これは改心したと思っていいのだろうか。
いや、リュウキが『クラッシュタイラント』と闘ったのは人間を滅ぼそうとか支配しようとか考えていたのを阻止しようとしたわけではなく、ただ依頼者の夫を笑ったことを許せなかっただけだ。
「あの人に……前に来た男の人に謝ってくれ。例え死んでしまっていたとしてもあの人を大切に思っている人はいるんだ。……俺に、人間に少しでも敬意でも尊敬でも感嘆でも恐怖でも何でもいい。少しでも人間に対して良いと思うところがあれば……頼むから……」
でないと、壊すことになるかもしれないから。
『フ、ハ、ハ、我が貴様ら人間を少しでも上に見ているとでも?そんなわけはないだろうが』
やはり駄目か。そう思ったリュウキが拳に力を入れたとき
『貴様らは我と対等。だからこそ詫びよう、貴様らを、あの男を下に見ていたことを。貴様らは個により役割が違うのだったな。あの男は力ではない、家族とやらに対する優しさがあった。それを我の記憶媒体は記録していた』
『クラッシュタイラント』の扱っていた武器は全て工場内で造られたもの。ゆえに工場の怨念ともいえる何かの影響を受けていた。
4つの武器を破壊された『クラッシュタイラント』は怨念から解放された。少なからず人間に対して何か思うところはあるだろうが、それでも怨念のあった時ほどではない。
『ゆえに強き人間よ、我の友とならぬか?そして名を教えてほしい』
「友達?それは別にいいけど……名前はリュウキだ。こっちはシズネとマカ」
リュウキは戸惑っていた。
あれほど人間を嫌悪していたのではなかったのか?
『ならば我が友リュウキ、シズネ、マカよ。我の後方にある我が娘を世界へと解き放ってほしい。先ほど完成した我が娘は機体は完成しているが機能はまだ未完成。外の世界で鍛えてやってほしい。無理であるならば放つだけでも良い。あれで素の力はそこいらのモンスターでは相手にならないだろう』
「わかったよ。俺らが責任を持ってお前の娘を預かる。名前はあるの?」
ふむ、と『クラッシュタイラント』は少し迷った風に考えた後に
『それは貴様らが決めてくれ。我らが親愛の証が我が娘。これは貴様らへの信頼の証だ』
リュウキ達3人は話し合う。娘と言うなら女の子だろう。リュウキは無難な名を、マカは可愛いらしい名を、シズネは綺麗な名をそれぞれ提案した。
3人とも譲らず、まずはリュウキが当然のごとく折れた後にどちらも兼ね備えた名が決まった。
「アリア、はどうだ?これが俺たち3人からお前の娘への最初の贈り物だ」
『アリア、アリアか……。ありがとう我が友達よ。……さあ行くが良い。ここはいずれ崩れ砂に埋もれるだろう。我はともかく貴様らは危険だ。こんなつまらんとこで死ぬでない。後方の娘のいる場所から外へと出られるからさっさと出ていけ』
パラパラと頭上から砂礫が降り始める。『クラッシュタイラント』の言う通り、5分も絶てばここは砂と瓦礫の下敷きになることだろう。
「すまない!またいずれ会おうな!」
「……ばいばい」
「またね、大きな機械さん!」
3人がアリアのいる場所まで走り始める。
『ああ、また会おう友よ。……そうだ、これを持っていけ』
リュウキのアイテムボックスに何やらアイテムが送られてくる。
急いでいるため詳しくは見れないが金と報酬のようである。
『我からのせめてもの餞別と子守り代とでも思ってくれ。それとこれもだ』
さらにアイテムボックスへと送られてくる。
『これはあの男が死ぬ寸前まで大事に握りしめていたものだ。……あの男の家族にでも届けてやってくれ。我の謝罪とともにな』
そこで大きな岩と砂が降り『クラッシュタイラント』は完全に埋まってしまった。
「やばい、早くしないと……これどうやって開ければいいんだ」
アリアが入っているカプセルはボタンで開くようだが、そのボタンが多すぎてどれだけ分からない。
「んー、多分これかなー」
「あ、ちょ、マカ⁉」
プシュー、という音とともにカプセルが開き中から赤い液体と一人の少女が出てくる。
『ここは……』
「いいから出よう!ごめん、説明はここから出てからだ」
リュウキ達は少女を3人がかりで運び、近くにあったらせん階段を昇って工場地下から脱出した。
「……危なかった。……危機一髪」
階段を昇り切った瞬間、階段は崩れ落ち、後はただ砂と岩が落ちているだけであった。
ステータス表記はたぶん次話で




