25話 尖った針金
何か評価していただいたみたいで……ありがとうございます!
それとブクマが少しずつついてきて嬉しい限りです
この流れが止まらないことを祈ってます
厚さ数センチはある扉を開くとこれまでの入り組んだ工場内とは違い、大きな部屋となっていた。
かつては作り上げられた機械が置いてあったその部屋は今はネームドモンスターにしてライフ工場ボス『エッジワイヤー 』の待ち構える場所となっていた。
1mほどの球状のモンスターはウニのような鋭い、イソギンチャクのようなウネウネとした動きの先端が針のように尖ったワイヤーを体中から飛び出させていた。
「ダメージ食らっちゃうのは免れないか。シズネ、あいつはそこまで動きが速くないらしい。岩魔法で十分当てられる!」
「……『ロックインパクト』を使う」
「マカ、針が来たらシズネを守ってくれ!それ以外は中距離から剣を飛ばして牽制だ」
「はーい!」
リュウキは事前に用意しておいた作戦を伝えていく。リュウキが近距離でタゲを取る、マカが中距離にてシズネを守りながら牽制、シズネが遠距離から威力のある岩魔法を使う。
敵の動きが速ければ使えない策であるが、幸いにして『エッジワイヤー』は動かない。
「『悪鬼変身』」
二つ名はレベル3となり今や肘、膝までが黒い鬼と化していく。
「ほら、こっちだ!」
リュウキの声に反応するかのようにワイヤーがリュウキの元に飛ばされてくる。
リュウキは駆け出す。ワイヤーを避け、『エッジワイヤー』へと攻撃するために。
「キュリンキュリンキュリン」
『エッジワイヤー』は機械音を鳴り響きながらワイヤーを四方八方から飛ばしていく。
「『ナックルリボルバー』」
ワイヤーは正面から来るものは避けられるが、斜めから、真横からは避けづらい。確実に致命的なダメージになる箇所、特に首や顔、身体中央に来るワイヤーを拳で迎撃していく。
ワイヤーは一撃でポキンポキンと折れていくほどに脆い。そのためリュウキの突撃は止まることはないのだが、ワイヤーは無限に伸びるかのように折っても折っても次々に伸ばされる。その上、ワイヤーが細いため注意を払わないと攻撃を当てることすら困難なのだ。
『エッジワイヤー』の攻撃を潜り抜け、リュウキは本体のところにまで到着する。
ここまで受けたダメージはどうしても避けられずに掠ってしまったダメージが重なって残り9割弱。
リュウキの役割はあくまで遊撃でありシズネにタゲを移さないようにすることである。
攻撃をしようにも剣山の中央に触れるには針にざくざくと刺さらないいけない。悪鬼となっている部分ならワイヤーは刺さらないかもしれないが、とてもじゃないが足りない。さらには相手はワイヤーを伸ばすことができる。あまりにも近距離にいすぎるのは危険だ。
「……ジュガさんが羨ましいな」
鉄の装甲ならばワイヤーは通らないであろうし、砲弾は十分このモンスターにダメージを与えられるだろう。おそらくこのモンスターとの戦闘時にはジュガを基軸に立ちまわっていたはずだ。
「まあダラークさんが黙って見ていたはずもないか。ということはまだ俺にもやれることはあるかな」
ダラークたち三人は全員が全員、近距離で闘うことができる上にジュガは中距離でも、ダラークの固有スキルは射程範囲は分からないが触れる必要はないはずだ。『エッジワイヤー』と闘ったときに固有スキルを得ていたかは分からないがダラークの性格上、遊撃だけをするとは思えない。
「というかあの人、まだまだ全力じゃなさそうだったな……」
「……リュウキ、そろそろ使うよ」
「あ、ああ、分かった!ギリギリまで俺が引き付けておく」
シズネの岩魔法を避けるような速さはこの『エッジワイヤー』にはない。だが、ワイヤーで岩魔法を打ち破られる可能性はある。この『エッジワイヤー』の最大の攻撃とされるもので。
「……MP20使用『ロックインパクト』
「まだまだ俺と遊んでくれよ!」
『エッジワイヤー』本体に攻撃はできないが、伸びてきたワイヤーを片っ端から折ることはできる。そうすることでリュウキに注意を向けさせ、なおかつ余計な攻撃をシズネやマカ、たった今発動された岩魔法への迎撃をさせないようにする。
「キュインキュインキュイン」
どこか苛立つように、鬱陶し気に『エッジワイヤー』はリュウキをあしらおうとするが、リュウキは伸ばされるワイヤーを避け、打ち落とし、折っていく。
時折、剣が飛ばされて『エッジワイヤー』に刺さっていく。マカの『舞空剣技』はMP消費を伴う。余裕を持ちながら使ってくれと事前に言っておいた。
リュウキ自身は『エッジワイヤー』にダメージは与えずマカの剣のみで攻撃を加えることでここまで来たが、これでまだ8割近くのHPを相手は持っている。
「さあ、この魔法でどこまで削れるか」
ようやくシズネの岩魔法の準備が整った。今回は速度ではなく威力にMPでブーストをかけている。
リュウキは巻き込まれないようにギリギリまでワイヤーを折ったうえで飛び上がるように後退する。
『エッジワイヤー』はまだ無事な、新しく伸ばしたワイヤーで自身に降りかかる大岩に攻撃をするが虚しく刺さるだけでさらにはワイヤーは折れていくのみ。
『ブラッドラビット』と闘ったときと同じような一瞬の静寂。あの時は『ブラッドラビット』は真の力ともいうべき力を解放して危うくこちらが相打ちを覚悟するところだった。
今回はあの時とは違う。テイムはせずにきっちり倒しきる。
一応、あの時のようにテイムスキルで『エッジワイヤー』をテイムするかは話し合った。だが、『エッジワイヤー』は良くも悪くも攻撃主体のモンスター。攻撃役は足りているのだ。欲しいのはシズネの盾となるようなモンスター。もしくは全体を援護できるような能力を持つモンスターなのだ。
満足に動くこともできない『エッジワイヤー』は倒す方針となった。
『エッジワイヤー』のHPはまだ残っている。そこまで防御力は高くないはずだが、倒しきれなかったのには当然、このモンスターにまだ使っていなかった能力があったということだ。
「でたな、ワイヤーネクタイ」
『エッジワイヤー』はワイヤーを幾重にも重ねることでより強靭にし、岩からの直接的なダメージを軽減していた。ワイヤーは所々で折れているため完全には防げてはいないらしいが、それでもあの威力をここまで減らせたのだ。ワイヤーの強靭さは格段に上がっている。
実際にはスキルのようなものではなく、『エッジワイヤー』がワイヤーを扱うという能力の応用らしいのだが、ダラークはこう称していた。
この技はワイヤーを幾本も束ねているために攻撃できるワイヤーの本数は少なくなるが簡単には折れない上に攻撃力自体も上がる。
『ワイヤーを束ねたら決して三人で纏まるな、バラバラになれ』
そうアドバイスされた通りにマカはシズネの元から離れたようだ。リュウキも今までいた場所から動き、反対側――『エッジワイヤー』をシズネたちと挟むような位置――に移動する。
一か所になるとそれだけワイヤーは束ねられ太くなり強靭になり攻撃力も増す。
バラバラになることでワイヤーを分散させなければいけないというわけだ。
「来たぞ!みんなどうにか受けきってくれ!」
「……『ロックプロテクト』
シズネは『ブラッドベア』の角さえ防いだ岩の盾を己の目の前に出現させる。
小柄なシズネの身体がすっぽりと覆われるように、岩はより小さく分厚くなる。
「剣スキルって防御用の少ないんだよねー。んー、これかな?『スラッシュガード』×6!」
レベルが3になったことにより合計6本の剣を操れるようになったマカはそれぞれを重ねるようにしてワイヤーから身を守るべく防御用の剣スキルを使う。
「俺は……まじでどうしよう」
格闘スキルには防御スキルはない。防御するなら避けろが鉄則であり常識だからだ。
「やっぱりこうするしかないか。『セーブアッパー』」
溜めてから打つ。大きな隙を必要とするがその分だけ威力のある打撃系の格闘スキルだ。
格闘スキルに防御用のスキルがないならこちらの攻撃が相手の攻撃を打ち消すしかない。
岩にワイヤーが刺さっていき、剣がワイヤーを弾き返そうとし、拳とワイヤーがぶつかり合う。全てのワイヤーを三分割したとはいえ、それでもなお威力は凄まじく、一本ではあんなに簡単に折れていたのに今は少しずつヒビが入っていくのがやっとだ。
「……そういえば、格闘スキルって拳だけじゃないんだよな。『ハイキック』」
拳とワイヤーがぶつかり合う中、太いワイヤーに真横から蹴りを入れていく。
ガシガシと蹴っていくことでワイヤーの耐久値はどんどん下がっていっているようだ。
ついには根元から折れていく。他の二か所も防ぎ切ったようであれだけ『エッジワイヤー』を取り囲んでいたワイヤーは今は一本もなく丸裸となっていた。
「新しく生えてこないうちに倒させてもらうぞ。シズネ!マカ!」
「……『ロックシザース』」
「『スラッシュバーン』」
「『サイドクロウ』」
岩と剣と拳が『エッジワイヤー』に突き刺さり、ついにはHPを全て減らしきった。
『エッジワイヤー』の身体がポリゴンとなりアイテム、金、そして経験値がリュウキ達の元に入っていく。
「つ、疲れたよー」
「……私も」
「二人とも、お疲れ。でもまだ宝箱が残ってるぞ?」
座りこもうとした二人がすぐさま立ち上がる。
『エッジワイヤー』がかつていた場所の後方、そこには一つの宝箱が置いてあった。
中身はランダムだが、ボスを倒した場所にある宝箱だ。期待はしてもいいだろう。
「さて、中身は……あれ?」
「お兄どうしたの?」
「いや、その……」
「……何も入ってない」
宝箱の中には何も入っていない。それはダラークからの情報にはなかった。中身は最低でもレア度が3のものがあるから楽しみにしておけとあったのに。
「おかしいな……、あ、もしかしてこれか」
宝箱の四隅に小さく光る物が置いてあるのをリュウキは見つけた。手に取ってみるとそれは指輪。
「未鑑定ってなってるな。後でダラークさんに聞いてみるか」
「えー、これだけ?」
「……しょうがない。……また挑戦しよ?」
「うう~」
マカが唸っているがこればかりはしょうがない。
と、そのときラビが飛び跳ねた。万が一にでもシズネの元にワイヤーが飛んできたときの最後の砦として召喚しておいたのだが、予想外にこちらが優勢だったために今回は仕事がなかった。
「ちょ、ラビどうした……って、ああっ‼」
飛び跳ねたラビはそのまま宝箱に入った、と思ったらまるで宝箱に吸い込まれたかのように消えてしまった。
「ラビ!どこにいったの⁉」
マカが慌てて宝箱に手を突っ込むがラビはいない。
が、何かを発見したかのようにこちらを見る。
「お兄。この宝箱の底、ないよ!」
リュウキとシズネも底を触るように手を伸ばす。だが、まるでどこかに通じているかのように底は抜けている。
「……行ってみるか?罠かもしれないけど」
ラビはシズネのテイムモンスターであり、死んでしまえばすぐに分かる。だが、反応がないということは宝箱の下に通じる何かに落ちていったのだろう。
「……依頼のまだ解けていない謎が分かるかもしれないし行ってみたい」
「よし、行こー!」
念のため回復を十分に行ってから、リュウキ達は宝箱の底に飛び込んだ。
まだまだ闘い足りねえぜ
感想その他、いつでも待ってるぜ




