21話 スキル
「よお、お前らもう俺らに会いに来たのか?」
『フレクション』という喫茶店、そこの従業員として働いていたのはPKとしてリュウキたちの前に現れ、DNOの先輩としてPvPを教え、最後にはアドバイスまでくれたダラークたちであった。
決してダラークたちに会いに来たわけではない。もう時間もないし最後にゆったりしようかと入った店がたまたまダラークたちの店であっただけだ。
まあわざわざ会いに来てくれたのだと勘違いして笑顔でいるダラークには間違いを正すなど恐ろしくてできない。
「ええ……まあ、もうマカが時間なのでその前に挨拶にと」
「そうかそうか。まあ茶と菓子くらいの時間はあるだろ?今の俺はPKのダラークじゃねえ。喫茶『フレクション』の店主、ダラークだ。コーヒーと紅茶、後は果実を使ったジュースがあるな。どれがいい?」
「えっと……俺は紅茶で」
「……私も紅茶」
「私はジュース!」
「はいよ。アザリカ、頼む。俺は茶菓子を用意してくる」
PKではなく、店主としてと言ったが、ここまで変わるものなのかとリュウキは驚く。
「まあ分かるよ。こいつは趣味が菓子作りでな。ちょうど攻略が行き詰ったのが先週。ギルドを造ったが持て余していたホームがあった。だからというわけでもないが、闘い以外にも興味を示せと俺が言ったらこうなったんだ」
なぜか店員ではなく客としてコーヒーらしき黒い飲み物を飲みながらジュガは笑う。
「味は常連客の俺が保証するよ。ダラークはリアルでもケーキやらクッキーやらを造ってるだけあって美味いぞ」
「は、はあ……」
数分と経たないうちに四人掛けのテーブルに座った三人の前に飲み物とケーキが用意された。紅茶はそこまで特筆すべき点はなかったが、マカの前に出されたジュースは赤かった。
「赤いな」
「ずー……オレンジよりも甘い?おいしー!」
「そいつはこの街の近くで採れる果実でな、オラッタという。まあマカの言った通りオレンジよりも甘く、それでいてさっぱりしているのが特徴だ。ケーキにしても美味いんだぜ。だから今日は、フルーツケーキだ」
飲み物と同時に出されたケーキは今言ったオラッタ、他にも近くで採れる果実をふんだんに使用されたものだった。
「おお、おいしいです」
「……ん」
「お代わりしてもいい?」
早々と食べてしまったマカがお代わりを要求する。
「おう、いいぞ」
ダラークもまんざらでもない様子でむしろ嬉々としてケーキをホールごと持ってくる。
「今日はお前らで店じまいだ。時間いっぱいまで俺らの聞きたいことがあったら聞いてけ」
とは言われてもすぐには出てこない。シズネもマカも目の前のケーキに夢中だ。
「ダラークさんは料理人の職業を持ってるんですか?」
だからこのような質問しか出てこなかった。
「いや、俺はちゃんと戦闘用の職業だ。菓子作りや料理、絵、鍛冶も頑張ればそうだが、生産系のスキルってのがあってな。職業に就かなくてもそのスキルさえあればある程度のものはつくれるんだ」
「あ、そのスキルなんですが、スキルってどうやって得るんですか?」
今リュウキが知っているスキルは格闘家になったときに得た格闘スキルといった職業によるスキル、シズネの二つ名により最初から得ていた岩魔法――これもスキルなのだろうか――、ダラークも二つ名がレベル5になったことにより固有スキルを得ていたと言っていた。リュウキが知っているスキルの会得方法はこの三つであり、どれも一朝一夕には得ることはできない。一番簡単なのは転職を繰り返すことだろうか。
「スキルってのはな、反復練習だ」
「反復練習、ですか」
「菓子作りならひたすら菓子をつくる。そうすると俺の場合は二日かかったが、製菓スキルってのを得た。剣や格闘スキルもそうだ。ひたすら練習しておけばスキルは得られる」
「魔法もスキルのうちに入ってるんですか?」
リュウキは魔法を使わないが、シズネは魔法に特化したスタイルだ。岩魔法だけでなく他の魔法を覚えられるならばそうした方が戦略も広がるだろう。
「魔法か。あれは色々あってな。シズネの魔法は二つ名で覚えたんだろ?んで、後は職業で覚える。他は……スクロールくらいだが」
「スクロールですか」
「一つの魔法を覚えられるアイテムだ。NPCが売ってるのは大抵しょぼい魔法だ。たまにモンスターが落とすのは強いと聞くが、まあ滅多に出回らねえだろうよ。俺も落ちたのを聞いたのは2回くらいだ。目立ちたくないからっていうやつを含めればもうちっといるんだろうけどな」
とりあえずはシズネが新たに戦闘に役立つような魔法を覚えるのは難しいらしい。
「シズネに魔法を覚えさせたいんだろ?まあ神って名の付く二つ名だ。何かしら特典はまだあるだろうよ」
すでにステータスの大幅な補正。それにMP無視と岩魔法の威力増加、これだけで十分な特典であるが、確かにまだこれだけとは思えない。今のところ二つ名のレベルが上がっても『地底神王』には変化がない。レベルが5になったときに一体どのような固有スキルを得られるのか……。
「そろそろ時間か……」
「子供は10時までなんだったか。そろそろ9時半になりそうだな。俺らはPKをしないときはほとんどここにいる。何かあったら来い、次は客としてな。いつでも茶菓子を用意しておいてやるからよ」
「ありがとうございます。ほら、何時までケーキ食べてるんだ」
見れば1ホールあったケーキはもうなくなりかけていた。
いくらなんでも食べ過ぎだろうと思ったがダラークは笑顔だ。おいしそうに自分のつくったものを食べてもらえるのは嬉しいのだろう。
「……おいしかった」
「また食べに来まーす」
「おう、また食べに来い!」
「またね」
「またなお前ら」
ログアウトすると目の前には同様にログアウトしたシズネがいた。
「一人で帰れるか?」
「……大丈夫。……すぐそこ」
すぐそこと言うが歩いて10分以上はかかる。昨日よりは遅い時間であるため責任を感じリュウキは送るよと言い、シズネも了承する。
「マカ、ちょっとシズネ送ってくるから」
「いってらっしゃーい。しず姉、また明日ね!……お腹いっぱいなのにお腹空いてる」
「……」
あれだけ食べれば当然だろ、と言いたかったがシズネも同様にお腹を押さえていたため何も言えなかった。DNOでの食事はあくまで満腹中枢に働きかけるだけなので胃を埋めているわけではない。リュウキはゲーム内での食事は制限させようと誓った。
ちょいちょいで設定を埋めていくスタイル




