20話 課題
「お前らの強さは十分分かった。それぞれのスタイルは間違ってはいねえ……が、まだまだ荒い。まあ、なんだ。鍛えがいがあるってことだ」
己の目で見て、身体で体感したダラークたちはリュウキたちにアドバイスをしていく。
「シズネの嬢ちゃんはテイマーなんだろ?なら闘えるテイムモンスターを早く探しておきな。俺よりも速い敵は嬢ちゃんの攻撃が当たるのは待ってくれねえぜ?嬢ちゃんの持ち味はその魔法の攻撃力とMP効率だ。嬢ちゃん自身がそれに特化していくんなら補助できるテイムモンスターが必要だわな」
「マカちゃんは剣の練習ね。自分自身の剣の腕を磨くこと。それに空中に浮かせた剣は確かに数は多いけど一本一本が一緒に動いてしまっているわね。もうちょっと独立して動かせるようになれば強くなるわ」
「んで、リュウキ。お前は特殊能力に対処できるようにしておけ。近接戦闘を磨きまくっても、ちょっとした小技でいくらでも破られる可能性がある。それさえも打ち破る絶対的な攻撃力、もしくは避けれる速さ。他にもいくらでも対処はできるんだ。格闘家と二つ名、それを上手く組み合わせろ」
それぞれがそれぞれに礼を言っていく。
これまで誰かに闘い方を指導されることはなかった。さらには誰かと闘うことすら考えていなかった。
人型のモンスターとはいずれ闘うかもしれないがその前にプレイヤーと闘えたのはきっと運が良かったのだろう。モンスターよりも技に優れ、知恵をまわすプレイヤーの方が圧倒的に手ごわいのだから。
「まあ、お前らは十分合格点だ。ゼギエルに来たら俺らを訪ねろ。フレンド登録しておくからな」
「ありがとうございました」
「よせよ、礼なんて。俺が良い奴みたくなるじゃねえか。俺はあくまでPKであり最前線プレイヤー。これもボスを倒すため、しいては俺のためだ。礼を言われる筋合いなんてねえよ」
「ダラーク、あなたそろそろ悪役ロールやめたら?全然悪者に見えないわよ」
「ただのツンデレだぞ。そんなのに喜ぶのはアザリカくらいだ」
「そうね、私ならキュンって……って、そんなわけないじゃない!」
「じゃあフレンド申請まとめてやっておいたからな」
「ちょっと、今の聞いてた?いえ、聞いてないならそれはそれでいいのだけど……」
「はいよ、後でな。じゃあなお前ら。俺らのギルドに入りたいんならいつでも歓迎してやるよ」
一通りの漫才のような会話を終え、最後にダラークは勧誘を始める。
ギルドとはパーティー以上の人数で構成されたグループのこと。ギルド単位でのクエストやギルドのホームを持てるなど利点は多いが、設立には決して少なくない金が必要となる。
「いえ、せっかくですが俺たちは……」
「そうだな、お前らはお前らで楽しめ。時々、その力を当てにはさせてもらうぞ?」
「ええ、その時はぜひ!」
こうしてリュウキたち三人はPK集団のトップであり最前線で闘う男であるダラークたちと別れた。この出会いは決して三人にとっても悪いものではなく、ダラークが言った通り、ゼギエルに向かうまでは一度もPKはやってこなかった。
「ここがゼギエルか」
ゼギエルは煙があちこちから上がる工場の多い街であった。空気には少しばかり煙臭さを感じつつも、嫌な感じはしない。それが武器や防具を打つために上がる煙ゆえなのか、不思議と害になるとは思えなかった。
街にいるプレイヤーたちの半分は生産系の職業。鍛冶師や細工師、薬師なんて言う職業もあり、プレイヤーの支援に徹している。
残り半分は闘う者たち。その数はガラクサにいたプレイヤーよりも少ない。だが、質は違う。サービス開始から己を鍛え続けた者、ゼギエルまでの道においてPKを跳ね除けここまで辿りつた者など実力はすでに折り紙付き。
そしてその確かな実力を持つ者たちでさえ倒せない第一のボス。一体いかなる力と能力を持つのか。リュウキは恐怖なのか武者震いなのか分からない感覚に襲われていた。
「時間はもうちょっとあるな。このまま一度ガラクサまで戻る?ギャブーさんに素材渡さなきゃいけないし」
「えー。明日でいいよ。それよりも観光しよ!」
「……私もこの街を見たい」
今日は観光をすることになった。
男一人であるリュウキが女の子二人に意見などできるはずもなかった。
まあ観光も楽しみにしていたことの一つだ。明日やろうと思っていたことが前倒しになっただけ。ならば全力で楽しむのみ。
「あれなにー?」
プレイヤーによる大道芸が開かれており、マカが吸い寄せられ、
「……これは綺麗」
露店にて売られていた水晶をシズネが見つめており、
「お兄、しず姉!どう?似合う?」
プレイヤーメイドの服をマカが着てリュウキとシズネに見せびらかし――なお、今のリュウキ達に手が出せる値段ではなかったため試着だけして帰った――褒めれば嬉しそうにくるくるとまわり、
「……リュウキ、遅い」
おいしそうな匂いのする店にシズネが引き付けられていく。
あっちに行ったりこっちに行ったりでリュウキはひたすらシズネとマカに着いていくのが精いっぱいであった。
「ちょ、っと、まって……いくらなんでも急ぎすぎ」
「だってあと30分しかないんだよ!お兄忘れたの?16歳未満はログアウトの時間が早いってことを」
忘れていた。ダラークたちとの闘いで残っていた興奮、ゼギエルという街の珍しさ。時間いっぱいまで見て回ろうと思っていたが、マカがまだ中学生だと忘れていた。
「……じゃあ最後にどこかでゆっくりしよう。そこの喫茶店みたいなのはどうだ?俺が奢るから」
「……じゃあ私ケーキとお茶」
「ほんと?やったー!私もケーキ食べたい!」
喫茶店というのは少し細まった裏道にある小さな店であった。
店の名は『フレクション』。英語で屈曲を意味するその店は外装は綺麗であったが、窓は鏡のように景色を反射し店内を見せなかった。
看板に喫茶店と書いてあることでかろうじて喫茶店ということが分かるが、無ければ裏路地にある店内を見せない怪しい店であっただろう。
怪しいとは言ってもここは街の中。よほどのことがなければ安全だろう。
「こんにちは。三人ですけど大丈夫ですか?」
「いらっしゃー……ってあなたたち」
「おう、お前らもうこっちに来たのか」
「待ってたぜ!さあ鍛えてやろう」
リュウキたちを出迎えたのはウエイトレス姿のアザリカ。カウンターでコップの中の液体を啜るジュガ。グラスを磨くダラークであった。
はやくボス戦やりたくてさくさく進めております




