18話 才能と技量
「ったく、ジュガは真面目すぎんだよな。あの嬢ちゃんの魔法、何も真正面から受けなくてもいいってのによ」
「もっと違う闘い方があったんですか?」
「ああ。ジュガのあの状態はああ見えて機動力もあるんだ。キャタピラだからどんな地形でも動けるし、転ぶことはない。動きながら砲弾を撃つってのがあいつにとって正しい闘い方なんだが……どうもPvPでは嫌がってな」
今の闘いではジュガの砲台、装甲は使われていたが、キャタピラは全くと言っていいほど使われていなかった。レベル1からあるキャタピラは本来はジュガが一番使いこなしているはずの能力であるにも関わらず。
岩魔法は速度よりも威力のほうが重視される傾向が強い。ならば避けるのではなく、受ける方が実力を見るのにふさわしいだろうとジュガは考えた。そしてこの結果となってしまった。
「それでもあのお嬢ちゃんはヤバいわね。二つ名に神って入ってたじゃない。攻撃系の二つ名で神とか……この時点でこの三人は合格にしてもいいんじゃないの?」
「そうだろうな。たぶんだが、この二人もそれなりに闘えるやつだ。……だが、俺がそれでこれでさよならできると思ってねえよな?」
「……まあそうよね。じゃあツインテールのお嬢ちゃん?次は私たちの番よ?」
「うん!」
そしてマカとアザリカが結界に覆われていった。
「じゃあ行くわよ?『初見看破』」
「いっくよー!『舞空剣技』」
アザリカの目が光り、マカの周りに2本の剣が浮かぶ。
「へえ。剣を浮かばせる二つ名なのね。そして一分間にMPが10が消費される。ということは時間を稼ぎながら闘ったほうが良さそうね」
アザリカの二つ名である『初見看破』はステータスの補正も、特に闘いに有利になるような能力はない。相手の能力を知ることができる能力。使用法、制限、弱点など二つ名の持ち主ですら知らないようなことを見抜ける。
マカが飛ばす剣をアザリカは紙一重で避けていく。
右肩に飛ばされる剣をわずかに左に避ける。身体の中央に飛ばされる剣を自らの持つ剣で叩き落とす。
「うう~」
どこに飛ばしても剣が当たらないためにマカは唸る。
ならば、と1本の剣をアザリカの周りに飛ばし、注意を向けさせる。
少しでも隙あらば斬りかかろうとする剣にアザリカは目を離せない。
「『スラッシュ』」
目の前の剣に注意を向けさせ、背後にもう1本の剣をまわして剣スキルを使う。
確実にアザリカは気づいていない。そうマカは確信した。
だが、
「ふふっ。甘いわね」
アザリカは元々持っていた剣を右手に持ち、腰に差さっていた2本目の剣を左手に取る。そして、後ろを見もせずに剣を受け止める。
「なっ⁉」
死角から飛ばしてもまるで後ろから見えているかのようにアザリカは避ける。己との技量に差を感じてしまう。
「アザリカさんって後ろも見えてるんですか?」
「いや、アザリカの二つ名は攻撃の種類や質が分かるって言ったほうが正しいな。あいつには分かるんだ、後ろからも攻撃が来るって。あいつは能力的にもステータスにも特別すごいものはねえ。だが、無いものを少しでも減らし、今あるものを磨いた末に今みたいになった。技量なら俺らの中じゃ一番だろうよ」
「それはすごいですね。でも、マカもこんなものじゃないですよ?」
「いや、それは分かるよ。なんだあのでたらめな力は。いや、二つ名としての能力ならああいうのは見たことはある。ただ、使いこなすのはかなり難しいはずだ。本当に昨日今日始めたっつうんなら……。お前ら何もんなんだよ、さっきの嬢ちゃんといい」
「マカは……天才ですよ。俺なんかと違って。俺の自慢の妹です」
当たらない攻撃にじれったくなったマカは全身全力を使う。
今の『舞空剣技』の限界である、武器4本の浮遊。大剣と片手剣を2本ずつ浮遊させそれぞれでスキルを発動できるように空中で待機させる。
その上でマカ自身も一本の大剣を装備し、大技を使う。
「『スラッシュ』『スイングスラッシュ』『スラッシュバーン』『スラッシュブライド』……『トルネードスラッシュ』!」
剣スキルの連発。普通ならばこれだけのスキルはそれに応じた人数が必要。それを一人で扱えるマカの才能はやはり天才と呼ぶ以外なにも表せない。
だが、合計5つのスキルを使える天才であろうとも、結局天才は一人であった。
全く同時に5つのスキルを使えるのは強みであるが、弱点でもある。
アザリカは一気に速度を上げる。
今まではそこまでの速度でアザリカは動いていなかった。だからそれに合わせた場所に向けてスキルを放ったのだが、それが仇となった。
アザリカの背後でスキルが発動し、全く意味のない場所で剣が動く。
「これで……終わりね!」
アザリカの2本の剣がマカの身体に斬りかかる。マカも必死に応戦はするが、手数の違い、そして経験の違いから追い付けない。
スキルの発動がようやく終わった4本の剣がマカの元へ戻ってきたころには……マカのHPは2割以下となっていた。
「もうちょっと能力任せな闘い以外も学んだ方がいいわね。次の街に着いたら私の元を訪ねなさい。もっと強くしてあげるから」
「むー。わかりました!」
マカは気づいた。能力を使いこなしたと思っていたが、肝心の自分自身がまだまだ弱いということに。
結界が解けていく。
新たな結界がつくられる中、リュウキはダラークに一つ伝える。
「俺がたぶん一番弱いですよ。シズネのような冷静さも威力のある攻撃もない。マカのように天才でも能力を使いこなせるわけでもない。だから、精一杯やらせていただきます!」
「おう、来いよ。鍛えてやるぜ」




