16話 PK
「おお。さっきの今でもう集めたのか。……昨日始めたばっかなんだよな?」
「まあ、LUKが高いからですかね」
「そうだよー。私は今日から!」
『オオハリネズミ』を除いた防具に必要な素材はこれですべて集まった。
さっそく造ってもらうためにギャブー鍛冶店を訪れたが、リュウキ達のモンスターを狩る速度は一般のそれよりも速かったらしい。
ギャブーは明日中に来られれば良いと思っていたようだが、リュウキ達がギャブーの元に再び訪れたのはまだその日のうちの午後。学生であるリュウキたちでもまだゲームができる時間だ。
「……まあ俺は素材さえあればそれでいいけどよ。兄ちゃんたちはこれから第二の街――ゼギエルに行くんだろう?」
ゼギエル、それはガラクサの次に訪れる予定の街であり、ここに最初のボスがいる……らしい。一か月の時間が経とうとも誰も倒せず未だDNOの最前線はそこで止まっている。今ゼギエルに訪れらればかろうじて最前線の仲間入りを果たせる可能性もある。
「うーん。どうしようか悩んでるんですよね。ここの街でレベルを上げてからにしようか……」
「レベル上げか。ならなおさらゼギエルに向かった方がいいぞ。ここの街でレベルを上げるならレベル12が良いとこだ。それ以上は次の街に行かねえと全然上がらねえ。俺らみたいな商売に関わるってんなら別だけどな」
実は『ウルフ』の大群を相手にしているときからレベルが全く上がらなくなってきたことに疑問を持っていたのだ。
「それでも兄ちゃんたちは結構早いんだぜ?普通なら一週間はかかるはずなんだが……よっぽど戦闘に全力を使っているのか?」
DNOでの戦闘での経験値はいかに戦闘ができたか、だ。戦闘を作業化してしまえば入ってくる経験値は減る。逆に格下相手でも戦闘に全力を注げば経験値は多く入ってくるという仕組みだ。だが、格下相手でもステータス差でどうしても戦闘は楽になってしまい作業化してしまう。そのためある程度の実力差が出たら今よりも強いモンスターと戦うのが通例であるのだが……。
「ゼギエルのやつらはボスが倒せないわ、モンスターよりは強くなっちまったからレベルが上がらないわでかなり大変らしいぞ」
「じゃあ俺らが今向かってもボス戦に参加させてもらえるのかな」
「さあなあ。俺はそこら辺はわからんからな。防具は明日には渡せるようにはしておくが、兄ちゃんたちは今日にでもゼギエルに向かうのか?」
「とりあえず『オオハリネズミ』を倒しに行こうかと。それで一端戻ってマカの剣もお願いしたいんですが、大丈夫ですか?」
「そうだな……まあ大丈夫だろ。兄ちゃんたちが早くゼギエルに行ってボスを倒せるためだと思えば俺も張り切ってやるさ!」
「おおー。ギャブーさんありがとう!」
「……かっこいい」
すかさずマカとシズネが褒める。美少女二人に褒められればやる気が上がるというのは万国共通、男なら誰でも同じだ。
上機嫌のギャブーを残し、三人はゼギエルへと続く道に向かう。
ゼギエルへはガラクサをさらに北へと進んだ先にある。
そこから先は道は一本道。分かれ道はないが、道を邪魔してくる者たちがいる。それはモンスターだけでなく、人が――プレイヤーがプレイヤーを殺しに来る。
PKという行為であるが、基本的に彼らは弱者を狩りに来る。であればモンスターとの闘いで強者であることを示せばよい。そうすれば金銭、アイテムを目的とするPKは減る。
「お前らこの辺では見ないな?最近始めたプレイヤーにしちゃあ強そうじゃねえか」
だが、PKには三通りの者がいる。
金銭やアイテムをプレイヤーから奪い取ることを目的とする者。
弱者をいたぶり殺すことを目的とする者。
最後に、強者と闘うことを目的とする者である。
リュウキ達は新たなモンスターたちに対しても順調であった
『オオハリネズミ』の攻撃にもすぐさま対応し、飛ばされる針を打ち落としながら着実にHPを減らし、確実に倒した。
焦ることもなく、自分たちの力と特性を分かった上で最善の立ち回りをしたため彼らの目に留まることとなった。
「俺らと闘おうぜぇ? 丁度三人ずつだ。俺らは闘うのが好きでなあ。相手してくれよ?」
リュウキ達の前には三人の男女。いずれも人相は悪く、その中でも話しかけてくるリーダーらしき男はこちらを逃がさないとばかりに眼光を鋭くし睨みつけていた。
「俺たちが闘うメリットがあるかな?」
「ああ、あるぜ。俺らに勝てばここからゼギエルまでは誰も手出ししないように言い聞かせておくぞ。俺らはPKであると同時に最前線でボスにも挑んでいるからな。安心しろよ、勝てなくてもいい勝負できれば手出しはさせねえよ。また強くなったら再戦しに来てくれればなあ?」
ゼギエルまでにいるPKの数はその日によるが総数で100を超す。PKギルドであったり、個人でPKを楽しむ者がいたりとそれぞれであるが、彼らは互いに互いの獲物への手出しはしないという決まりがつくられていた――目の前の男によって。
「まあ最前線の力を見たかったし闘ってみるかな。シズネ、マカもいい」
「……リュウキがそれでいいなら」
「この人たちと闘うの?楽しみ!」
「はっはっは。威勢がいいな。俺はダラークだ。兄ちゃんが三人のうちで一番強いんだろ?最後に俺と派手に闘おうや」
リュウキ達は運が良かった。ダラークという男。PKと名乗ってはいるが、彼の性根は決して腐っているわけではなく、むしろ誠実に近い。約束すると言ったらほぼ確実にそれは守られる。
「俺はリュウキだ。PKなのに名乗るなんて変だね」
「まあ俺たちは変人奇人で通ってるからな」
「そりゃ酷いぜ」
「まあ私は別にPKには興味ないんだけど……ダラークがどうしてもって言うから」
「ん?アザリカは乗り気じゃなかったのか?無理させてたんなら……」
「いい!いいから、私もPKやるから!そこのツインテールのお嬢ちゃん?私が相手してあげるわ」
「お姉さんが私の相手?よろしく!」
「じゃあ俺がそこの嬢ちゃんか。俺はジュガ。実は俺らは幼馴染でな。ダラークがどうしても悪役ロールしたいっていうからこうしてるんだ」
「おい、ジュガ!ばらすなよ!」
いつの間にか和気あいあいとした雰囲気となってしまった。
リュウキ達にもはや敵意はない。今は最前線で闘うプレイヤーに手ほどきをしてもらうくらいにしか考えていなかった。
「PVPはやったことあるか?」
「いえ、ないです。モンスターとしか闘ったことがなくて……」
「じゃあ今回は俺らが申請してやるよ。PVPは普通の辻斬りみたいなPKとは違って簡易的な結界が生み出される。その中は当事者二人以外は手出しできないようになっててどっちかが倒れるまでは解除されない。まあ実際にやってみりゃ分かるだろ。ジュガ、お前からやってやれ」
「はいよ。しかし結局PKじゃなくて親切なお兄さんになっちゃってるじゃねえか」
「うるせえ!こいつらが強かったら逃がす手はねえだろ。それへの投資だ、投資!」
「嬢ちゃん、PVPの申請が来たらOKしてくれ。ルールは俺が設定しておく。HPが2割以下になった方が負け。アイテムの使用なし。それでいいか?」
「……構わない」
シズネとジュガの周りに半透明の箱が出現する。PVPをするプレイヤーと周りの空間を断絶する結界。この中で起きたことは結界が解ければ無かったことになるため、PKではなくPVPを好む者に使われる。
「シズネ、頑張れよ」
「……ん。任せて」
静かに、だが力強くシズネは頷く。
ボス戦のことしか考えてなかったからもはや思い付き。
まあ対人戦やりたかったからいいんですけどね




