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二つ名オンライン  作者: そらからり
3章 アウトサイダーズ
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96話 2人での闘い方

 おにぎり兵士こと『ライス・ボール・ソルジャー』の最も最初に備わっていた能力は自身の体を構成する米粒の粘着性強化である。手足がもがれようとも、果ては頭部が胴から離れようとも米粒同士をその強力な粘着力で貼りつけることで何事もなかったかのように振る舞う。

 ついでとばかりに手足が離れた際に散らばる米粒は変わらずの粘着力で近づく者をその場に固定する罠となる。


 再生力と罠。この2つが体を構成する米粒を以てして使われる能力である。

 見た目はおにぎりに手足を無理やりくっつけたかのようなふざけたデザインであっても、十分に強敵と呼べる強さを持っていた。


 そして次に加えられた能力。

 米粒がデフォルト、大量生産用の能力だとしたら……同一である外見は同じだとしても中身はそれぞれで違う。具材はオリジナルの能力を持たされていた。

 マカと竹田が闘った相手は具材が梅干しであった。能力は腐食作用。『ライス・ボール・ソルジャー』を製作した者が幼少時に弁当箱に入れられていたおにぎりの米で隠しきれないほどの大きな梅干しがそれを包んでいたアルミホイルを溶かしていたことを思い出しその能力を付けられた。

 米粒の粘着性と梅干の腐食作用。接近戦においてこれらは強力に働く。遠距離戦を得意とする者であっても、モンスターの素のステータスで避けられてしまう。

 マカがその場から動かずとも、剣を大量に扱える二つ名であったから勝てた。そして、竹田が遠距離からサポート出来たことも一理あったことだろう。


 中距離と遠距離。両者が得意としている分野が違うからこの闘いは成立した。近距離潰しともいえる具材梅干しのおにぎり兵士とも闘うことが出来た。





「……リュウキ」


「うん、俺が前でシズネが後ろ。いつも通りだ」


 おにぎり兵士へとリュウキは拳を放つ。すでに『悪鬼変身』は使っている。どこが腰なのか分からないが、刀を下げていることから武器有りでの闘いになることは必然。それならば防御にも使える悪鬼の腕は使っておかなければならないだろう。

 リュウキの『悪鬼変身』はマカやダラークの二つ名と同じく継続的な効果を示すものではあるが、能力自体が自身のステータス強化だけであり、他に特殊な能力が無いためMPの消費は少ない。レベルもそれなりに上がっている今、少なくともMP切れで戦闘を行えなくなるということは無い。


「まずは刀をもらっていくよ」


 『悪鬼変身』のステータス強化の中でもとりわけ補正が高いのはAGIである。その速度はおにぎり兵士が動くよりも先に辿り着いており、気づいたおにぎり兵士が刀を掴もうとする瞬間には刀を遠くへと弾き飛ばしていた。


「侍の魂ともいうべき刀が……。吾輩の鍛錬不足というやつか」


「油断ってやつだよ。俺は手加減はしないし、あなたが力を出し惜しみしていようと遠慮なく叩き潰す」


 リュウキが刀をまず一番に狙った理由。

 それはおにぎり兵士を構成する米粒に違和感があったからである。まるで攻撃を誘っているような、攻撃されるためだけに米粒を体の構成材料としているような感じがしたため、武器を奪うことから始めた。


 そしてリュウキが今、全力で闘っている理由。

 それは後ろにシズネがいるからである。守るために、シズネに傷1つ付けさせないぞとばかりに相手を即座に倒すつもりでリュウキは闘っていた。


「油断……油断か! 吾輩にそのようなものがあったとはな。フハハ、ならば吾輩はこの時より力を隠すことなく全力で闘おう」


 おにぎり兵士が自らの腕を掴む、と同時にリュウキがその腕を蹴り飛ばしていた。


「言ったでしょ? 手加減はしないって」


 おにぎり兵士の腕が掴んでいた腕ごと彼方へと吹き飛んでいく。

 これで両腕ともおにぎり兵士は失った。刀も、腕も。武器は無く使う手段も無い。


「このまま倒す……」


 追撃をかけるべくリュウキは一歩踏み込んでおにぎり兵士の懐へと潜り込む。


「『サイドクロウ』」


 おにぎり兵士の腹部に穴を空け、盛大に米粒を撒き散らす。

 見ればHPも残り半分程度。相手が脆いことに加え、リュウキの二つ名が速度と攻撃に特化していたことがこの結果を作り出していた。


「……リュウキ、何か焦ってる?」


「そんなことはないけど……」


「……相手の能力を使わせる前に倒すのは良いことかもしれないけど、見極める前に迂闊に攻撃するのは良くない」


「うっ……そうだね……」


 確かに思い直して見ればいいところを見せようと、スキルを放ち相手の懐へと潜り込み過ぎていた。

 相手の攻撃手段を奪ったつもりではあるが、まだ相手の能力が分かってはいない。見た目通り刀を使うだけではないだろう。どう考えても小人の兵士達と共に闘ったカエル型モンスターと同格には思えない。


「……一度、ここまで戻って来て。……次は私が闘うから。……私も一緒にいるの忘れないで」


 むしろリュウキとしては一緒にいることを意識しての行動であったのだが、それで一人行動を取ってしまっては何も言えない。


「分かったよ……。相手のHPも後半分。俺よりも遅いみたいだし攻撃も通るから、俺が引き付けてシズネは魔法で倒すって作戦でいこう」


「……つまりはいつも通り?」


「そう!」


 おにぎり兵士は両腕を失ってからまだ動いていない。両腕が吹き飛んだ衝撃で後方へとよろめいていたが態勢を整えているが両腕を失ったことに呆然としているのか、それとも何かを待っているのか。能力をまだ見せていないことから何かしらこれから行われる可能性は高いため、それを見極めるためにもリュウキは一度シズネの元へと下がろうとして――その場から動けなかった。


「なに!?」


 リュウキの足はどちらとも悪鬼となっておりたとえ足に重りを繋げられようとも、それがトン単位でもない限りは動くことくらいなら出来るはずであった。ダラークの二つ名の能力である速度減少にしても今のリュウキなら歩くよりも遅くは出来ないだろうと自負していた。

 だが今リュウキが足元に感じる重さ。それはまるで床全体を繋がれているかのような感覚。持ち上げることも少しもずらすことすらも出来ないでいる。


「……リュウキ?」


 シズネが不審がるように動かなくなったリュウキに声をかける。


「シズネ、近づいちゃ駄目だ。この床、何かされてる!」


 何をされた。何も無かったらこうはならなかったはずだ。

最初に、おにぎり兵士へと迫った時は特に足元に違和感は無かった。二度目の両腕へと追撃をかけた時もだ。

リュウキは探す。今と戦闘開始時との差を。


 そして見つけた。悪鬼の足からはみ出していた潰れた米粒を。


「これか! シズネ、この米粒に触れると地面とくっついてしまうみたいだ」


「……地面と」



 地面を砕けば動けるかもしれないが、その隙を恐らくは与えてはもらえまい。

 おにぎり兵士は今もこちらを見ている。よく見ればその目は呆然としているものではなく、隙あらばこちらへと何かしようとしている目だ。


「これで吾輩の力が分かっただろう。攻撃を加えられれば加えられるほど、吾輩の体が弾けるほどに周囲に米粒が散乱し吾輩の領土が増えていく。吾輩の領土内に置いて移動は不可能であるぞ」


「でも、俺はあなたが近づいた瞬間にこの拳で殴り掛かるよ」


 仮におにぎり兵士が刀を使えようともリュウキは悪鬼の腕で防いでカウンターを返すつもりでいた。


「吾輩は接近戦などはせぬ。それは具材梅干しの仕事だ。あやつが戦場を駆ける侍ならば吾輩は弓兵。具材昆布の力をとくとみるがいい」


 おにぎり兵士の腕の付け根。そこには白い断片があっただけであるが、次第に黒い何かが盛り上がり、突き出てくる。

 それはそのまま長く伸びるとおにぎり兵士の周囲を漂い始めた。

 まるでおにぎり兵士から放たれた触手のように黒いひも状の何かはゆらゆらとリュウキとシズネに先端を向ける。


「さあ行くがいい。吾輩の昆布よ」


 腕の付け根からそれぞれ数十本は伸ばされた触手昆布の半分は手始めとばかりに近くにいたリュウキへと襲い掛かる。


「ぐうっ……」


 悪鬼の両腕の防御力は触手昆布の攻撃力よりも勝っているためか攻撃自体は防ぎきっているが、数が多い。残り半分が襲い掛かって来ればもたないだろう。


「俺はどうにかしてこの場でやり過ごす。敵もこのまま引き付けておく。だから、シズネが止めを!」


「……リュウキが相手を引き付けるのは賛成。……でもリュウキがそこに居続けるのは……反対」


 シズネはテイムモンスターであるラビやアリアを召喚するでもなく、得意な岩魔法を使うでもなく、


「……『サンドカーペット』」


 地面を砂に変える魔法を使った――リュウキの足元に。


「そうか……よし、これで動ける!」


 米粒自体は砂には出来ないが、そこと接着する地面は砂へと変えることが出来る。米一粒が接着出来る砂の量などたかが知れており、悪鬼の足であれば問題ない。


「ほう、その米粒を乗り越えたか。だが、その魔法は底なしの地面を作り出すものであろう? ならば作りすぎることは出来まい。一度か二度、せいぜいがその程度。吾輩の米粒はそれ以上の広範囲に散らばる」


 見れば触手昆布が動くのと同時にそこから米粒が地面へと振りまかれていた。

 その範囲はシズネの手前へまでも。


「問題ないさ。俺の足が動けば、それで俺は走ることなくあなたへと辿り着ける」


「ほう?」


「あの時の闘いと同じだ。『サンドカーペット』はシズネの魔法だけど、地面を歩けないという問題なら俺はすでにクリアしていた。ユークリッドとの闘いでね」


 リュウキはその背に生えている翼をはためかす。

 ゆっくりと、だが着実にリュウキの足は地面から浮き上がっていく。


「ふん、空中などに浮き上がっても吾輩の的であることに変わりない!」


 触手昆布は更に激しく動きリュウキへと襲い掛かる。

 リュウキはそれを避けながらおにぎり兵士へと肉薄する。


「かかったな!」


 触手昆布の1本が遠く弾き飛ばされた刀を拾い上げ、リュウキへと振り下ろされる。

 だが、


「読んでいたさ!」


 それを見越していたのか、次の瞬間にはリュウキは後方へと退く。


「『ロックインパクト』」


 それを待っていたかのようにシズネは大岩をおにぎり兵士の頭上へと放つ。

 触手昆布は大岩を支えようとするが、支えきれず徐々に落ちていく。


「さっき言ってたでしょ。俺は引き付け役。止めはあくまでシズネだ」


「ならば……」


 わずかでも大岩の落ちる速度を落としているため、おにぎり兵士はそのわずかな時間で大岩の下から脱出しようとする。

 だが、


「逃がさない!」


 リュウキが蹴り飛ばし大岩の下へと戻す。

 そして、その衝撃で触手は力を無くし、大岩は空間内を揺らすほどの衝撃とともにおにぎり兵士を押しつぶし、HPを0にした。


「……その羽、便利だね」


「羽っていうか翼だけどね。慣れてきたけどまだ動きづらいんだよな」


「……でもそれが無かったらもっと苦戦してた。……マカ達大丈夫かな」


「大丈夫だと思うけど……どっちかというとクラムバーさんの方が苦戦しそうだね。遠距離戦で強そうな二つ名みたいだったけど、この空間で、しかも1人じゃ遠距離戦なんて出来なさそうだ」


「……心配?」


「そりゃあ……って、何だろうこれ」


 シズネの表情が険しくなったから話を変えたわけではなく、大岩の上に……ちょうどおにぎり兵士の潰れているであろう真上が光ったため、リュウキはそちらへとシズネの目線を誘導した。


「……何か入ってる? ……リュウキ、取って来て」


「はいよっと」


 結局のところこの闘いでも格好いいところを見せられず、シズネ頼りの闘いになってしまったことを悔やみながら岩を駆けのぼるリュウキであった。

 ちなみにシズネはやっぱりリュウキは私がいないと駄目、と内心嬉しそうであったのは言うでもない。


もう1つのクラムバーの闘いっている?

そのまま本編進めても特に問題なさそうだけど

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