アイ(サンプル)2
「っ!放せ!放せって言ってんだろ!?は な せーっ!!」
黒い革張りのソファの上。
茶色がかった黒髪の大柄な男と派手なオレンジの髪をした男が
一方は呆れたような、一方は苛ついたような顔つきで
少年を押さえつけている。
片や、名を木谷銀(24)。
能力は鋼の肉体。銃弾さえもはね返す体をもつ。
そして片や、名を藤川宗也(16)。
能力は重力法則の無効化。限りはあるが重力を自在に操れる。
比較的広いこの事務所内には
少年含め男5人、女2人が1つの長机を囲んでいる。
「なァおい!もうコイツ能力で黙らせていいか?」
藤川が急いて問う。「なァ、木谷!」
大柄な男──木谷は、それに小さく苦笑して答え ようとした。
「いいわけないわ。無闇に能力を使わないで。」
それくらい、わかるでしょう?
冷たく響く。
各々で少年を観察したり雑談していた者達は、
呆れたように目を声の主に向ける。
彼女は東雲由紀(15)。
能力は所持しておらず、サポート、指示にまわっている。
「なァ、お前には聞いてねぇんだけど?」
俺は木谷に聞いたの。わかる?
嫌悪感を隠そうともせず嫌味っぽく言う。
今や雰囲気はブリザードが吹き荒れてそうに最悪だ。
少年は固まってしまってる。
言い合いがはじまるかと思った矢先、扉が開いた。
所長である関内だ。
関内はこの空気を察しておきながら、気にせず言う。
「遅くなったな。悪い悪い。──あー、そいつが例の子か?」