傭兵女学生は筋トレ中1
さてと頑張ろうかね。
腕立て伏せからかな?
「基礎体力無さすぎじゃないん?」
自主修練場の地面につぶれた私にラスシアナ先輩が声をかけた。
王立傭兵学校にはこう言う自主修練場もたくさんある。
槌士学課は人数が少ないからあんまり同じところで会わないんだけど剣士学課のラスシアナ・ドーリュム先輩はよくあう。
「腕立て伏せもできないなんて…。」
腕で身体を支えられない。
「クリサちゃん、無理しないでね奴が怖いからさん。」
ラスシアナ先輩がそういいながら模擬剣を持った。
い
そのまま少し離れたところで剣の修練をはじめた。
綺麗な剣筋だな…。
そういえばラスシアナ先輩のおばあ様は戦闘文官ってよばれてる高等剣士だよね。
「次はダンベルでもしようかな。」
少し落ち込みぎみで持とうとしたダンベルが持ち上がらない。
持てるけど上がらないが正確かな?
「クリサちゃんダンベル重すぎなんとちゃうん?」
ラスシアナ先輩が言った。
「たかだか30キロが上がらないなんてダメですよね。」
私はダンベルをやっと棚に戻しながら言った。
「クリサちゃん、非力なんだからもっと軽いのからやったらどうなん?」
ラスシアナ先輩がそういいながら模擬剣くるくる回した。
「ラス、可愛い後輩になんということをいうんですか?」
聞き覚えのある声が後ろからした。
「あんたストーカーかい?」
ラスシアナ先輩が額にてを当てた。
振り向くとリオレウス先輩が模擬槍を持ってたっていた。
「ラスには用はありません、私はただ修練にきただけです。」
リオレウス先輩がそういって自主練習場の真ん中を陣取った。
「このむっつりスケベん。」
ラスシアナ先輩が毒づいた。
その視線の先に華麗な槍さばきを見せるリオレウス先輩がいる。
仲がいいな…ラスシアナ先輩とリオレウス先輩。
「私、そろそろ家に帰りますね。」
私はリュックを持ち上げた。
「ああ、通学組だっけ?」
ラスシアナ先輩が私に視線をもどして言った。
「はい、王都に家があるので。」
私はリュックを背負った。
「まだ一年生だもんね、寮生活の義務はないか。」
ラスシアナ先輩が模擬剣を地面に立てて言った。
学年が上に上がると団体行動を学ぶために入寮義務があるんだ。
もちろん寮費及び食費は国の予算に組まれててただです。
だから低学年から入寮推進なんですけど。
やっぱり家から通いたいもん。
「一緒に帰りましょう。」
リオレウス先輩が模擬槍を棚に収納していった。
「ええ?修練中なんじゃないですか?」
人様の修練の邪魔しちゃいけないよね。
「私も通学組ですから。」
高学年のはずのリオレウス先輩が微笑んだ。
「あんた寮じゃなかったん?」
ラスシアナ先輩が突っ込んだ。
「寮も借りてますが王宮も度々帰らないとですから。」
リオレウス先輩がそうっ言ってメッセンジャーバッグを背負った。
「私も実家は王宮だけどあんまりかえんないでどねん。」
ラスシアナ先輩がそういいながらリオレウス先輩の顔を見た。
「私も王子としてしないといけない事があるんですよ。」
リオレウス先輩がそう言って私の手を握った。
「別に一人で帰れますよ。」
私はレオレウス先輩を見上げて言った。
「このカクレスケベ男ん。」
ラスシアナ先輩が呟いた。
「ラス後で拳で話し合いましょう。」
リオレウス先輩が私の手を離さずに言った。
「まったく、私はもう少し修練するからん。」
ラスシアナ先輩がそう言って自主訓練場の真ん中に戻って再び模擬剣を振るいだした。
「たまにはギーデル飴店の果汁飴もたべたいですから。」
リオレウス先輩が笑った。
美形はなんでも絵になるよね。
青みかかった黒い髪の一本三つ編みにきっちり結われてるのがわかる。
額には一部金属になった鉢巻き状の藍色の額カードが付けている。
学校の制服の小豆色の立襟に長袖のひざ丈の長衣は真ん中スリットで同色の細身のズボンを引き立ててる…若いグーレラーシャの武人の姿だなとリオレウス先輩を見上げて思った。
まあ何種類か制服あるんだけどね。
傭兵学校の本当にすぐそばにやっぱり広大な王宮がある。
ほぼ平屋で中庭が沢山あるらしい建物を横目にリオレウス先輩は通り過ぎた。
いいのかな?リオレウス先輩についてるエレンティス・オプディア警護官もなにも言わないし。
本業の王宮警護官カッコいいよね。
私も憧れた時代があったけど…今はめざせ冒険者だよ。
「つかれない?」
リオレウス先輩が私の方を見て言った。
「別に大丈夫ですよ。」
きちんと走り込みはしてるしこのくらい大丈夫だよ。
「そうですか?」
少し残念そうにリオレウス先輩が言った。
「殿下、まだお早いです。」
黙ってたエレンティス警護官が言った。
「わかってる。」
リオレウス先輩が答えた。
どういう意味だろう?
グーレラーシャ人は戦闘時の判断が鈍る酒の代わりに甘い物を食べる。
有名な武人は甘いものないのと愛する人のいない人生など生きる価値がないと言う名言を残したそうだ。
よってグーレラーシャ傭兵国には甘いもの屋が沢山ある。
ハニータルトやハチミツパン、異世界菓子パティスリーイシカワとならんで有名なのが飴で美しい飴細工を施して売っている店が沢山ある。
家はその中でも有名店な『ギーデル飴店』だ。
「ただいま。」
飴の材料の前に立ってるお父さんとイリエお姉ちゃんに声をかけた。
さらに後にお祖父ちゃんがついてるから飴の練習らしい。
お姉ちゃんは飴屋の跡取りだから勉強中なんだ。
「おかえり、いらっしゃいませ殿下。」
お祖父ちゃんが言った。
お父さんはイリエお姉ちゃんがつくってる飴細工を息を止めるようにしてみつめてる。
「出来ました。」
イリエお姉ちゃんがお父さんに棒についた飴を渡した。
「おい、本当にこれがウサギか?」
お父さんがイリエお姉ちゃんが作ったなぞの生き物の飴細工を見て言った。
うさぎなのにみみが歪んでる顔もなんかまるくなってないし。
「だって難しいだもん。」
飴細工用のはさみをもってイリエお姉ちゃんが言った。
「お前…本当に飴屋継げるのかよ。」
お父さんが謎の生き物飴をながめてため息をついた。
「ただいま。」
私はもう一度言った。
「ああ、お帰り…殿下もいらっしゃいませ。」
お父さんが愛想笑いをした。
「こんにちは店長さん。」
リオレウス先輩が言った。
まだ手を離してくれない。
「おかえりー、お姉ちゃん疲れたー。」
イリエお姉ちゃんが手を振りほぐしながら言った。
「オレンジ果汁飴ください。」
リオレウス先輩が言った。
「どんな形がいいですか?」
お父さんが棒を準備しながら言った。
その場で食べる飴は飴の材料から巻きとってお客様のリクエストにあわせてつくるんだ。
「ではニーッデセの花を。」
リオレウス先輩が言った。
「うけたまわりました。」
お父さんが棒に飴をまきとって細工用のハサミでニーッデセの花を造っていく。
「どうぞ。」
可憐な小花が連なったニーッデセの花の飴が出来上がった。
「ありがとうございます、クリサ。」
リオレウス先輩が飴を受け取って言った。
「なんですか?」
綺麗な赤みがかった紫の目見ながら答えた。
「クリサのような可憐な花を捧げます。」
リオレウス先輩が飴を私に差し出した。
「そういやニーッデセって恋人同士の植物でしたね。」
エレンティス警護官が言った。
そういやそうだよね。
先先代王の伴侶律様がその先先代王の日除けローブにニーッデセの葉っぱを刺繍したことから始まったんだよね。
「クリサ、これを食え。」
お父さんがイリエお姉ちゃんが作った謎の生き物飴を差し出した。
「う、うん、それ美味しいですよ。」
私はお父さんから飴を受け取った。
「まだ、ダメですかね。」
リオレウス先輩が私の手を握ったまま言った。
「殿下、そろそろ時間です。」
エレンティス警護官がそう言ってリオレウス先輩の手を私の手から離さした。
「オプディア警護官、そうですね。」
リオレウス先輩がニーッデセの花の形の飴を見ながら呟いた。
「またのご来店をお待ちしております。」
お父さんが愛想笑いを浮かべた。
「はい、ではまた。」
リオレウス先輩が代金を払って言った。
リオレウス先輩たちは帰っていった。
「もう、クリサには求愛者がいるの?羨ましい。」
イリエお姉ちゃんが言った。
「ガキが生意気だ。」
お父さんが言った。
「まあ、お前も早かったけどな。」
お祖父ちゃんが腕組みして言った。
そうなんだ、お父さん早かったんだ。
「お父さん、娘たちの前でばらすなよ。」
お父さんが少し赤くなって言った。
まあ、リオレウス先輩の怪しい行動は今に始まったことじゃないし。
たぶんからかわれただけだよね。
それより筋力トレーニングしなくっちゃ。
教官からダメだしされちゃうよ。
戦闘文官→ラズデアナ・カザフの事。
連載小説、傭兵国に生まれました…平和惚け上等!の転生者の主人公です。
ラズデアナ本人はいたって平和主義者ですが高等剣士ゆえに色々巻き込まれてます。