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神をも喰らうヴァイセント  作者: 文悟
第一章・ヴァイセント
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白砂の流離い人

織田信長…武力による天下統一を目指した覇王。

傍若無人でその振る舞いの多くは常識の外にあり、人の恨みを買うことも多かった。しかし、同時に戦国最高のカリスマ性を持っていたと言っても過言では無いだろう。

日本人なら誰もが知る有名人だ。

彼の最期はこれも有名な[本能寺の変]だ。

家臣の裏切りにより彼は焼け落ちる本能寺と共に炎に包まれ死ぬこととなる。

聞いた話ではそこに彼の骨すらも残らなかったという。


例えばもし、彼がその最期の時にその場にいなかったなら?

例えば、別の世界に飛ばされていたのなら?


確かに、骨など残りはしないだろう。



「結局こちらでも大変な目に遭った。運が良かったのか悪かったのかわからんな。ハッハッハッハッ」



とは、織田信長本人の談だ。



死ぬ寸前、炎に包まれた織田信長は異世界へと落ち延びた。

そして、少しの間旅をして、この村に居を構えて暫くの後に竜との遭遇。結果、長寿と強靭な身体を手にしたが、それもまたトラブルを招いてしまう。


彼は自らの犯した失敗を知り、どうにか解決しようと奮闘したが、現状維持が精一杯。そこで、彼の意志を継ぐ者を育て、また竜神殺しを成してくれる者を待つことにした。


凡そ百年。

とうとう俺が現れ、俺も信長さんも知らぬ間に、事は解決し、森に平穏が戻って来た…


「っとぉっ!!」


村の外れの丸太小屋。

織田信長のこちらでの住居の庭先。

切り出した丸太に腰掛ける信長と、その傍らに添うマーベルさん。

そして、俺は彼らから少し離れて例の[竜神殺し]を振るっていた。


彼らとの最初の出会いから既に半年が経っていた。


あの祭りの翌日から信長さんのはからいでこの村に滞在することになった俺は、村の人々の世話になりながら、こちらの文化や常識、言葉の読み書き会話に加えて、信長さんから刀の扱いについて学んでいる。

幸い言葉の会話については通訳のできるマーベルさんがいたし、読み書きは信長さんがいたので、思ったほど言葉の習熟には苦労はなかった。今では本を読むくらいはできるため、もっぱら辞典やら物語を読み漁り、自主学習をしている。

信長さん曰く、この習熟の速さも竜の肉を食べた恩恵らしい。


神獣や魔獣の血肉を口にしたモノは呪いと共にその力を得るが、力にはそれぞれに特徴が現れるそうだ。


例えば俺や信長さんの持つ[竜の力]は、


他者の血肉を己のモノにする[吸収]

そして[身体増強]だと言う。


物事の飲み込みが早くなるのは文献には書いておらず、付加価値だろうと解釈するしかないが、吸収の範囲なのではないかと信長さんは言う。


なぜなら竜は単なる大型爬虫類に見えて異常に頭が良く、同じ罠には二度とかからず、人の行動を模倣したり、なかには人語を解する者もいるらしい。


つまり、あのまま勝負が続いていたり、俺が逃げ出して翌日に持ち込んでいたらジエンドだったかもしれない。


そしてそう考えるとやはり心配なのは母さんや妹の千智のことだ。

あんな化け物が当然のようにいる世界でどうしているだろうか?

神獣たちだけではない。馬鹿デカい熊をはじめとする危険な獣や、聞けば魔物と呼ばれる奇怪な生き物もいるらしい。そんなのがうようよいるのに女二人…冗談じゃない。


この村に滞在が決まってこっち、俺の知る範囲の狩りの知識を教える代わりにあの飛行機を中心とした広範囲の捜索を行い続けたが、母さんたちを見つけることはできず、死んだ証拠も得られなかった。

もちろんそれだけじゃない。

時折都合の付くときにはマーベルさんの力を借りて、近隣の町にも足を運び捜索の範囲を続ける。

多くの人に聞いて回り、見つかったら教えてくれと頼んでまわった。


それでも見つかっていない。

死んだという証拠も、生きている証拠も。


いま、どこかで助けを呼んでいるのではないか…。


想像したら冷や汗がでてくる。

俺はそれを振り払うように刀を振った。




「森に平穏が戻った。だが、それも一時のこと。これからは害獣や山賊どもに気をつけねばならん。それに、この数十年で随分人が減り狩りを生業としていたものももういない。それもまた手を打たねば」


そう言う信長さんはマーベルさんを見て互いに頷きあう。


二人にとって、この村を守っていくことが生き甲斐であり命題だとマーベルさんが話してくれた事がある。

マーベルさんにとっては自らを育て愛してくれた祖父への恩返しであり、信長さんにとっては、愛した人が愛した村だからだそうだ。


それと、驚いたことにマーベルにとって、信長さんは直接の祖父ではなく、信長さんにとっては自分の残した子の数世代あとの子になるらしい。

ややこしいのでそこら辺詳しくは聞かなかったが。


だが、それならば確かに村に執着するのもわかる気がする。


「自警団とか組織するのはどうですか?」


刀の振りを素振りから型に変えてゆっくり記憶の中の形をなぞるように動かす。


「それもいいな。幸いに若者の数は多い。戦い方を仕込んでおけばいざというときに役に立つ。狩りは重悟、お主のお陰で男衆に一通りの技を伝えることはできたからな。あとは人を増やして伝え、研鑽を積み重ねるしかなかろう。…しかしお主、実戦ではまだまだ不安があるが、型はなかなか様になっているな」

「…田舎で剣道を教えていた祖父の直々の仕込みです。父も警察官だったし…小さい頃から剣道と柔道を習っていました」

「ほお、重悟の祖父は剣術家だったのか。小さい頃から習っているだけあって型はかなりしっかり出来上がっている。少々大人しいが」

「ああ、それはスポーツ…じゃなくて、競い合いや護身用として剣術を噛み砕いたからだと。剣道の歴史なんて覚えちゃいませんが、信長さんの生きた時代より随分平和になりましたから」

「ふむ、そうらしいな。元康のタヌキめが治めた乱世。外の国に負け、生まれ変わった国、日本。…出来ればこの目で見てみたかったのぉ…」


この半年で話す機会は多かった。

お互いに昔のこと、未来のことを擦り合わせるように語り合った。なかでも魔王信長の死後の出来事と俺の生きた時代の事には信長さんは強く興味を示し目を爛々と輝かせて聞き入っていた。


「まぁ、言っても詮なきことよの…くっくっく」


そう苦笑する彼の瞳にはしかし、憂いは無い。


信長最期の大望は果たした。

彼はそう言った。


だが、もう少し長く健康で生きていられたなら、今度はこちらの天下を取りたかったなどと冗談めかして笑いながら。


「どれ、儂も久し振りにそいつを振ってみようかの」

「あ、はい。無理はなさらないで下さいね」

「くっくっ、やかましいわい。ほれ、そこの丸太を持ってこい」


小屋の裏手に積んでいたまだ切り倒して少し整えただけのそれを己の前に持ってこいと言う。

よっこいせとようよう動き出す元気なご老体に俺は苦笑しながら刀を渡し、次いで大人二人分の長さはあるそれをひょいと肩に担いで彼の前に横にして置いた。


「ふむ。よしよし」


そういって刀の刃に少し親指の腹を這わせた後、刀を正眼に構える。


そして、二百歳近い老人とは思えない気迫と共にフッと短く呼気を放ち、大上段から降り下ろす。


スダンッ…と小気味良い音に遅れ、ズドゥッ…と丸太が跳ねた。

そこには、短くなった丸太が綺麗な断面で二つ並んでいる。


「どうだ。儂もなかなかだろう?」

「デタラメですよ」

「凄イね」


鳩が豆鉄砲を喰らったらこんな顔だろう。

マーベルさんと二人してぽかんとする。


「竜の血を浴びた物もやはり竜と同じ特性を持つようになる。時折血を吸わせてやらねばナマクラより悪くなるぞ。気をつけることだ」

「心しておきますよ」


信長さんの親指にはうっすら血が滲んでいた。

刀も血を吸わせると切れ味や強度が上がるらしい。そして、血を吸わせないと刀はナマクラになってしまい、また人間も血肉を摂取しないと大変なことになるそうだ。


「さて、もうすぐ昼だ。飯にしようかの」

「用意しマス。すぐ出来マスよ」



マーベルさんがニコニコと笑いながら小屋の中へ。

残された二人は今日の昼飯は何だろうかと、丸太に腰掛け他愛もない話をしながら待つことにする。


やんわりと入り込む日差しが心地よく、こんな穏やかな世界が半年前まで危険に満ちていたなど思えもしない。


「ずっと、こうであったなら、いいのぅ」


そうやって、信長さんは穏やかに笑う。


それからほんの五日後…。


統一暦八〇二年。

日本で言う九月の末日。


今日と同じ青空の下、同じ笑顔で、庭先の丸太に腰掛けたまま、第六天魔王・織田信長はその永い生涯を終えた。


白鞘の刀を手に逝くその姿は、覇者の最期に相応しいものだった。






▲△▼▽▲△▼▽▲△▼▽





統一暦八〇三年三月の十六日。


ヘヴロニカに来ておよそ一年の歳月が経つ。

とうとう村から手が出せるシーリカ東部の町や村では母さんたちの手がかりは掴めなかった。

自身で見に行けていない場所もあり、そこにはまた向かうつもりだが、ここらが限界だろう。


一縷の望み…きっと生きていると信じ、俺は山の向こうを思う。


それに信長さんの意志を継ぎ、村を先導し守っていくというマーベルさんに協力して設立し、鍛えた自警団も形がついた。

ここに遣り残したことは無い。


そして俺は出立を決める。



この日、村の入り口に村人全員が集まっていた。

俺は荷物と共に一年前この村に来たときと同じ格好でそこに立っていた。少し違うことと言えば黒の革ジャケットやジーパン、スニーカーが所々赤く染まっていることか。


「寂しくなるな…ジュウゴ」


先頭に立ち、そう切り出してきたのは腕毛のお兄さん、ダルジェさんだ。


「きっといつか、帰ってきて。生まれた国が違っても、ここは貴方のもうひとつの故郷よ」


ダルジェさんの傍らにはディモアさんが涙ながらに寄り添う。

他の人たちも皆一様に寂しげな笑顔で俺を見つめ口々に別れの言葉を告げる。


「必ず…必ずいつか母さんや妹と一緒にこの村に帰ってきます」


俺はこの大陸の共通語である、ロンドヒルル語で頷き返した。


約一年、この村で過ごして得た思い出は少なくない。苦悩し哀しむこともあった。楽しく踊り出しそうなくらい愉快な日々もあった。

そのひとつひとつが胸に去来し、涙が零れそうになる。


「貴方のお陰で自警団も形になり、狩猟の基礎も固まりました。感謝してもしきれない」

「マーベルさん…」


マーベルさんが、右手を差し出してくる。

その手にはいくつもの豆が潰れた痕があった。

亡き祖父の意志を継ぎ、彼が自警団団長として村を守っていくという強い想いがそこにあった。


俺はその手を強く握った。

彼のこれからを応援する。その想いをこめて。


すると、彼は左手に携えていた白鞘の刀と、それにくくりつけた皮の袋を差し出した。


「マーベルさん?」

「これは、祖父からの贈り物です。報酬は少ないがこれを受け取ってくれと、生前私に託しました」

「……そう、ですか。でも、マーベルさんにとっては大事な遺品ですよ?」

「構いません。私の意思でもあります」


そうまで言われれば有り難く受け取ろう。

俺は刀と袋をしっかり両手にいただいた。


マーベルさんはそれを見て満足そうに頷くと、俺の胸に人差し指をあてた。


「『これから永い旅が始まる。苦しかろうと哀しかろうと、怒りに焼かれ、憎しみに苛まれ、人に溺れて地に伏せようと、お前はまた立ち上がり進まねばならない』」


それは流暢な日本語だった。


「『輩よ、立ち止まりそうになったときは思い出せ、お前と共に儂の魂がそこにある。供に生き、供に戦い、供に還ろう』」

「信長さんの……?」

「はい。そして、ジュウゴさん、私はこの村を守るためここから離れることはありません。ですが、貴方と同じ血を持つ人間がここにいることを忘れないでください。私の魂も貴方と供に。[出会えばみな兄弟]…良い言葉です」


俺の胸には最初に着ていたプリントTシャツのあの文字が描かれていた。


「ありがとう。またいつか」


どちらからが先だったか。

俺たちは互いにぐっと抱き締め合い、別れの言葉を交わした。



「では、そろそろ…行きます」


そう言って荷物を背負う。


村の女衆が手間隙かけて作ってくれた大きな革製の丈夫なリュックサックと、キャスター付きのハードタイプの旅行鞄だ。

革製のリュックサックにはなんと剥ぎ取った竜の皮が他の動物の皮と合わせて使ってあり、かなりの容量と耐久性がある代物になっている。

色がモスグリーンでなんだか軍用みたいに見える。


「ボウズ、またなっ!」

「いつでも帰っておいで!」

「師匠!俺たちきっと村を守っていきます!」

「また会おうねジュウゴくん!」


「はい、きっと!…いままで有り難うございました!世話になりましたっ!」


深く深く感謝を込めて礼をし、背を向け歩き出す。


何度も振り返りながら、それでも歩みは止めず。


俺は、ついに旅立った。




▲△▼▽▲△▼▽▲△▼▽▲△




もしも、母さんたちが無事に竜の襲撃を避けられていたならどちらに行くだろうか?


捜索の過程でそんな話しになった。


妹はまだ当時十七歳だったが、俺と一緒に山でサバイバル生活をしていたことがある。

活発で気が強く、めげることを知らない。

そのうえ俺より頭が良い。


腕力・体力以外は正直俺の何倍ものスペックだ。

母さんもあれでママさんバレーでエースの看板を背負っているらしく、体力はあるだろう。


ならば、かなりの距離を進んでいるだろう。



では、どちらに進むかだ。

村に辿り着いておらず、さらには飛行機周辺にもいない。村の近隣でも見かけた情報は無い。

なにより森に潜伏していた気配もない。

山で遭難して下手に動き回ることの恐ろしさは知っているだろうが、あんな危険な生き物がいることを知ったならそうも言っていられない。


「恐らくは山を越えたかと思います」


村の青年が言った。


あの森を麓にする山[ベーテル山]は地図上では縦に長く広く連なった山で、いくつかの峰以外は非常に標高が低く、山道もあり、森から抜け出て山道に行き着けばあとは道なりにいけばどこかの街や村に着くと言う。


そう言うことならと、俺も同意見だった。



マーベルさんから譲ってもらった地図を手に森に拓かれた道を行き、山道を辿り、そこから南西に向かう。



目指すはハンデールという小さな町だ。

そこで暫く情報を集めて次はさらに南のアルツファーブという都市に向かう。

それくらいのところまで行けば、情報も集まるし、ギルドもあって日銭も稼げるとのことだった。

しかし、注意点もある。


1、まず俺はかなり目立つとのこと。

盗賊やスリ、詐欺師や悪徳商人には気をつけねばならない。

2、神獣などを殺して力を得たことをできるだけ知られないこと。

過ぎたる力は災いを呼ぶ。争いに利用されるならまだ良い方で、命を狙われたり、何かの実験をされたり、国によっては捕まる恐れもある。

3、猛獣だけでなく[魔物]に気をつけること。

どこから来たのか、なぜ生まれるのか、未だ謎の多い奇怪な生物。


村の周辺は竜の巣であったお陰でまったく会うことはなかったが、大陸の各地に生息し、弱いものもあいるが大抵は獣より質が悪い危険な生き物らしく、種類によっては逃げろと言い含められている。



「ギュケケェ!ギュケケェ!」


例えば、こんな奴…。



鶏の首を長くして、退化した羽根の代わりに鷲のような凶悪な鉤爪を付けたような小型の馬くらいのサイズの…………


「ダチョウ?」


山を越え、再度麓の森に入りかけたとき、そいつは現れた。

黒いボディのそいつは現れた。

イッツァ、ダチョウ!!


「グケケケェ!グケケェ!」


羽根?にあたる部分の両腕を拡げ、けたたましい鳴き声をあげる。どの世界でも鳥類は羽根を拡げるのが威嚇や求愛のパターンらしい。

共通点がなんだか嬉しい。


とりあえず俺も挨拶がてらに左足を前に出し、両手を段違いに小さく前にならえをして、叫ぶ。



「ヤーーッ!!」

「グ…ケケケェ?」



む。違った。これじゃダチョウはダチョウでも倶楽部の方だ。


ダチョウはドン引きしている。

混乱の効果はあったようだ。



ダチョウがこちらの奇妙な行動に困惑している間によく観察してみる。

両腕以外は普通にいる獣…というか懐かしのダチョウかとも思ったが、その鉤爪と眼を見てこれが魔物だと確信した。

魔物の多くは異形な姿で、その多くは[赤い眼]をしているらしい。


そして、このダチョウも赤い眼だ。

血のように黒ずんだ赤い色。



「グケケケェッ!」


こちらが警戒したのを察してか、ダチョウは立ち直り、さらに両腕を大きく拡げる。

そして、じりじりとこちらとの距離を詰めはじめた。


約五メートル。


俺は緩慢な動作で旅行鞄を置き、腰に右手を伸ばす。


四メートル。


そこには刀ではなく、かつて竜を討った大型のナイフがベルトに添え付けられていた。

刀は動きやすいよう、ベルトから外してリュックサックに半ば隠すようにして固定している。


三メートル。


竜の牙を削って造った手製の鞘から慎重に抜き取っていく。


二メートル。


「ッケェ!!」

「しゃぁっ!!」


鉤爪と同時に左の前足で襲いかかってくる。

ダチョウのクセに喧嘩キックとは良い度胸だ。


俺はダチョウの右側に回り込みながら空いた脚にローキックをお見舞いしてやる。


「グギャァァッ!?」


すると成人男性の腿ほど太い脚が払われることなく、一撃でへし折れる。


竜の筋力恐るべし。


だが、それでは終わらない。流石は魔物と呼ばれるだけあって、片足が折れても俺に襲いかかってくるのだ。


「グゲゲェッ!!」

「っと、せいやッ!」


次は伸ばされた右の鉤爪をナイフで切り上げる。


飴を切るような感触。

一刀で羽毛付きの腕が半ばから切り離され宙を舞う。

さらにそのまま、返す刃で飛びかかり、ダチョウの首を切り裂いた。


「クガッ……ガァ……ガ…」


切り口から噴水のように血飛沫があがる。

ダチョウは断末魔の叫びを上げる間もなくこと切れた。


生き物が死ぬ様はどんなモノが相手でも気分の良いものではない。


俺は倒れ伏すダチョウの死体に目を伏せ、手を合わせると小さく弔いの言葉を口にした。


「………いただきます…………」



…………あれっ?





▲△▼▽▲△▼▽▲△▼▽▲△




ダチョウ?はスタッフが美味しくいただきました。


当然ながら仕留めた命は食べてやらねばならないと、血抜きやら毛抜きやらやっていたらいつの間にやらとっぷりと日が暮れて、洗浄・調理・食事まで終わる頃には真夜中。水場を探すのに一番時間がかかった。

村での川の流れや位置を把握していなければ予想もつけられなかっただろう。


まあ、そんなこんなで結局旅立ちの初日は山を越えたくらいの野外の川辺でオヤスミとなったわけだ。




翌日、朝日が顔を出す前に起きると、さっさと準備を済ませ、日が出たくらいで歩き出した。


今日中にハンデールに着くのが目標だ。




▲△▼▽▲△▼▽▲△▼▽




太陽の位置を頼りにハンデールを目指して南西におよそ四時間。

途中何度か例のダチョウが現れて戦いになったがどうにか殺さず追い返しながらえっちらおっちらの長い道程。



しかし、ついに森を抜け出て、開けた場所に出た。

草原と白い砂。

轍の跡。


人が何百年も往き来したであろう整った道。


地図を確認する。

二車線はある道幅は地図と同様にハンデール、アルツファーブ、そして王都センブレア・シーリカなどの街や都市を繋ぐ。


「ここだ…」


シーリカ国内の大動脈。


「…………[白砂(バルムヘル)の大街道]………」


身体に疲れは無かったが、疲労していたのであろう精神に活力が戻ってくる気がした。



よしっ、と気合いを入れ、俺は歩き始める。


目指すハンデールは目の前だ。




ジュウゴの過ごしていた期間と心情の齟齬に違和感があったので加筆修正いたしました。ご指摘、ありがとうございます。

修正ではありますが今後に影響が無いとは思います。そう作れたはず。またお気づきの点がありましたらよろしくお願いいたします。

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