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神をも喰らうヴァイセント  作者: 文悟
第三章・聖なるを穿つ白鴉
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第三章[序]・君のいない未来

感想、評価、ありがとうございます!

返信できていないものも、しっかり読ませてもらっておりますので、ぜひ、お気軽にアドバイスや激励も含めましていただけますと幸い。


これから第三章。

物語は変化していきます。

重悟達一家の乗った飛行機が突如日本国内から消え去ってからおよそ半年。



都内某所。


窓の無い薄暗い室内。

大きなモニターだけが光源として存在しているこの一室に、七つの影が浮かぶ。


その影は大小様々で、性別も歳もバラバラだが、その目には皆一様に刃物のような鋭さがあった。



モニターには某市の山中が映し出されており、そこではオレンジ色や紺の作業服を着た男達がヘルメットを被って画面を右往左往している。



七人の内の誰かがため息をついたそのとき、レポーターであろう女が画面の向こうに現れ声を上げた。


『居ました!生存者――じゃない?あ、失礼しました。どうやら人を発見したようですが、捜索隊の様子がおかしいようです』


捜索隊と呼ばれた男達から次々発見の声が上がるものの、すぐに動揺した声に変わる。

カメラがその様子を撮影しようとレポーターとともに最も近くに居た隊員のもとへ近づいていくと、そこには奇妙な光景があった。


『こ、コスプレイヤー?』


レポーターにあるまじき間の抜けた声がお茶の間に流れた。

だが、恐らくは現場もこの映像を見た者も全員が同じような感想をもったのではないだろうか。


七人も注視する画面にはゲームや漫画でみるようなファンタジックな格好をした女性が隊員に脇から抱えられている姿が映し出されていた。



『せ、生存者と思われる人物は見つかりました。ですが、彼女は何故か西洋の……いえ、アニメや映画で見られるようなファンタジックな衣装を身に纏っています』


隊員が発見しその体を抱えた曰く“生存者”。

明らかにここで求められている者達は、しかし、想像しうる生存者の格好とはまったく異なった姿だ。


困惑する捜索隊とレポーター。

一瞬、その場にいた者には質の悪い悪戯かといった考えも浮かんだが、彼女達、合計七人の暫定生存者はボロボロの姿でぐったりとしており、血に塗れたものもいれば獣に引き裂かれたような生々しい傷を受けている者もいた。


それは悪戯という考えを肯定することのできない姿だと誰しもが浮かんだ考えを否定した。



『あ、女性が気がつかれたようです!話はできる状態でしょうか?声をかけてみたいと思います』


下がって!

隊員がそう言って止めるのが一瞬遅れ、レポーターは大胆にも女性に近づく。


貴女は***便に乗られていた方ですか?

マイクを差し出すレポーター。


その瞬間、何かに気付いたように女性の目はカッと見開かれ、女性は目の前のレポーターの肩を掴んで揺さぶった。



『ここは……ここは“地球”なの!?』


『き、きゃあぁっ!!」


『ちょ、ちょっと奥さん落ち着いて!!』


がっしりとした体躯の隊員が女性を止めようとするが、レポーターは放られ、今度は隊員が捕まえられる。



―――瞬間、ミシリと隊員の肩が音を立てた。



『いってぇ!!な、なんて馬鹿力だ。ちょ、ちょっと痛いって奥さん!離して!落ち着いて!』


『ここは“ヘヴロニカ”じゃないのね!?日本なのね!?私達は帰ってこれたのね!?』


『い、意味が分からんが、ここは日本だよ!!だから落ち着けって奥さん!骨が折れる!』


普通、人の握力で人の骨を握り潰すなどということは到底考えられない。

だが、この瞬間隊員は確かに目の前の女の握力で肩を潰されそうになっていた。


隊員の悲鳴が聞こえたのか聞こえないままなのか。



言葉通りに隊員を放ると、周囲を見回した。

そして担がれた生存者を一人一人見て回る。


『いない。いない。………いないいないいない』


その顔は酷く青ざめていた。


女性は誰かを探し、その人物が見つからないことに焦っていた。


そこで豪胆にも、またレポーターが声をかける。



『あ、あの、誰を探しているんですか?』



その言葉に女性はブラウンのウェーブのかかった長い髪を振り乱し、涙を零しながら半狂乱で叫んだ。



『決まっているじゃない、家族よ!!参吾さん!重悟!千智!私の家族よ!……ああっ、やっぱり戻って来れなかった。 何で……何でなのよヘヴロニカッ!? 返してッ!私の家族をかえしてぇぇぇっ!!!』



そこで映像はスタジオに切り替わる。


スタジオでは今の映像について有識者らしい男女が視界の男とああじゃないこうじゃないと討論していた。


その男達の言葉はだいたい『信じられない』、『非科学的』、『妄想』という言葉のループだったが、だいたい意見が出尽くしたところで一人の女性が違う切り口を作り、そのループは断たれた。


「―――で、彼ら【超越した七人ザ・セブン】が我が国と同盟国を含めた十二ヶ国もの軍事基地を壊滅させたあの“魔法”はどう考えられますか?」


その言葉には誰も答えられない。

映画の演出だったと返すにはことが大きくなりすぎた。



驚くことに彼女達、神隠しからの生存者……通称ザ・セブンには、漫画や映画の世界のヒーロー達のような力があった。


それは彼女達があの飛行機消失事件とそのほかの失踪事件で消えた者達ではないかと確認を取っていた一週間の内に行われた身体検査によって判明したことだった。


超人。

そう言って間違いない彼女達を各国は見逃さなかった。

すぐに世間が知らない水面下での奪い合いが彼女達の意思に関係なく行われた。


七人の国籍は主に日本だったが中には他の国の者もいる。

各国の首脳は即刻の送還を要求。

また、アレコレ研究だのと理由をつけて他の者も要求する国もあった。


だが、各国がどう考えていようと、ザ・セブンはどの国にも従わなかった。

唯一彼らが従う意思を見せたのは、彼女達のリーダー


柄倉万葉カラクラマヨ


の言葉にのみであった。



これには各国の上層部は憤慨した。

国民が何故我々に従わないのかと。


それは彼らにとって最も許されない行為だった。


各国の動きはこれによりかなり表立った動きになってきた。


力でぶつかっては被害が大きいと、周囲の者から絡めるような手を使って彼らを従わせようとしたのだ。



だが、それは下も下の下策。

最も愚かな判断だった。


彼らはザ・セブンと呼んだ超越者達の怒りを買った。


ある日始まったザ・セブンの局地的な暴力の行軍。

これにより主な国の軍事的な力は大打撃を受け、政治的象徴は全て破壊された。


また、愚かなことにこの混乱に乗じて他国を侵略しようとした国の主だった権力者も文字通り消滅させられている。


驚くことに彼らにミサイルはもちろん核も毒も有効ではなかった。バイオテロ攻撃も未然に防がれてしまったそうだ。最早この世界に彼女達を止める術を持つ者はいない。



ああ、誰だって悪い夢だと思いたいだろう。

たった七人の男女に世界が負けたなど。



そこで有識者の一人が何か言いかけたところで部屋のドアがノックされ、モニターが消されるとともに室内に光りが戻った。


「ザ・セブンの皆様、各国首脳の準備が整いました。会議場にお越しください」


ドアを開けて入ってきたのは三十代後半のパンツスーツの女。

声こそ怯えを滲ませなかったが、その手足は小さく震えていた。


「……マヨ」

「団長、出番ですって」

「めんどくせ」

「飲み物はでるかしら」


髪を後ろに撫で付けた白髪の男が、七人の中央で腕組みをしていた万葉に声をかけ、同時に他のメンバーがだらだらと体を伸ばし始めた。


だが、彼らのリーダー柄倉万葉は、


「行く前に会議場に爆弾を持ち込んでいるおバカさんと、この施設の周囲に潜んでいる狙撃手八人。処理してからね」


そう言ってまだ動かない。


「は~い。あ、このお姉さんも拳銃持ってるけどどうする?」

「手をかけたら可哀想だけど死ぬだけよ」

「ヒィィッ!!」

「じゃあ、いいや。ボクは外やってくる」

「アタシは爆弾かな」

「俺も外だ」

「ふいー。だるー」


軽いやり取りでなんのことはないと六人が散っていく。

万葉はふと腰を抜かしてしまった案内役の女に目を向けて、薄く笑った。


「ごめんなさいね。私達はあなた達に優しくしてあげられるほど余裕があるわけではないの。一刻も早く家族を、そして仲間を取り戻さなくちゃいけないのよ。だから、おじぃちゃん達に伝えてくれるかしら?『手間をかけさせるな。次は無い』って」

「ひぃ、ひやぁいぃっ!!」


優しげな顔から鋭い殺気が放たれる。

常人ならば卒倒しているようなそれを浴びて怯えるだけで済んだのは、女が一定以上の訓練を受けている証拠だった。


「ああ、やっぱりあの子にもスキあらば殺せと言っていたのね」


どだい無理な話だけれど。

万葉はため息をついてまたモニターをつける。


今度は映像でなく奇妙な計算式が表示されていた。



「きっと、こちらから扉を開く方法がある。必ず、どんな手を使っても、みんなを迎えに行くわ」



だから、絶対に諦めちゃダメよ―――重悟!!







《 柄倉 万葉 》 


肉体年齢 : 二百四十二歳


彼女は魔人ヴァイセントである。




しばらく書きためますので、更新は少しゆっくりめ。

できれば週一で更新日はランダム。一話~は投下していきたいと思います。

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