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神をも喰らうヴァイセント  作者: 文悟
転・ヴァイセントの異世界道中
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ブリコーネの異世界道中??

ウチは天下の美少女ブリコーネ・ハントテラー。


里を出てから早二年。


幼く、未熟だったウチもこの二年で成長した。


剣を()れば危険な猛獣をバッタバッタと切り伏せ、竪琴(ハープ)を奏でれば鳥達も歌い出す。武にも芸にも優れた才能を発揮していた。


響く美声は精霊の囁き、歩む軌跡を語れば神話のようだと謳われたこともあるとかないとか。



だけどウチの進む道は輝きばかりやなかった。

まるで神が英雄にそうするかのように、ウチには多くの試練が待ち受けていたんや。



初めての試練は激しい嵐やった。


荒れ狂う風と雨に吹き飛ばされそうになりながら、帰りたいという気持ちを抑え込み、ウチとピーちゃんは前へ前へと進んだ。



次の試練は飢えや。


森の果物や野草を食べても大してお腹はふくれない。時折ピーちゃんが美味しそうに見えてくるのをグッと我慢しながらウチらは旅を続けた。


命のやり取りもあったわ。


里から出て初めて一人で獣と戦った。


長い耳。

白い体。

鋭い牙。


そして一見すれば可愛らしささえ感じるその姿、その目。

でもウチは騙されんかった。

コイツは魔物や、ってすぐに気付いた。

その身の内に隠された殺気はウチにはバレバレやった。


数時間にも及ぶ死闘の末、ウチは奴の息の根を止めた。


全身ボロボロ。

剣もボロボロ。


でも、一番ボロボロやったのは心や……。



一番キツかった試練は………別れやった。



魔物との死闘の中で、ピーちゃんはウチを庇って大怪我を負った。

どう見てももう助からん傷やったのが素人のウチにも解った。


「ピーちゃん……ごめんなぁ……ウチが弱いばっかりに……」

「ク……ゥルッポゥ……」


ピーちゃんは首を振った。


その目はウチが無事であったことを喜んでくれていた。


そして、ピーちゃんは咽び泣くウチをその翼でそっと抱き締めながら、静かに息を引き取ったんや。


「ピーちぁぁぁゃん!!」


辛かった。

辛かったわ。

ウチとピーちゃんは小さい頃からの親友やった

ら心底辛かった。


ウチは朝まで目を腫らしながらピーピー泣いた。


でもそれがウチを強くするきっかけやったとも言えるな。


ウチはピーちゃんを地に埋め、その墓前に花を添えて弔いに歌を歌った。

別れと感謝の歌を。


そして誓った。


「ピーちゃん。ウチは必ず[運命の人]を見つける。そして、里に帰ってみんなの……そして、ユーリ婆ちゃんの願いを叶える。約束や。絶対の絶対………」


もう渇れたはずの涙が一粒、地面に落ちた。


「ピーちゃん。いままでありがとう。ご馳走さま」


そうしてウチは更なる試練を経てここまでやって来たわけや。


「大変だったねぇ。ずぅって西の………えっと……」

「[ボレット帝国]です。お嬢」

「それそれ。そんな所からこの[コーレス]まで来たんでしょ?」

「まあなぁ。ウチにはちょっとした散歩やわ」



トラウディシア大陸中央に位置する豪商達の管理・運営する国[コーレス]。

ウチはたった二年で大陸の西から、この国の代表が集まる施設の裏手の森までやって来ていた。


そんなウチの目の前には仮面で目許を隠した黒髪の女騎士が座り、その背後には屈強な男達が直立不動で並んでいる。


女騎士はウチの武勇伝を聞きながら、『おぉ』とか

『わあっ』とか声を上げ、楽しそうに笑っていた。


やっぱり聞き手の反応が良いと興がのるもんや。

ウチはここまで来る際、死闘を繰り広げなんとか仕止めた大鷲を椅子代わりにして、吟遊詩人よろしく竪琴片手に次々と話を聞かせてやっているわけや。


あ、別に大鷲に捕まってここまで連れて来られたところを偶然この人らに助けてもらった、とかそんなんやないで!



「へぇ……運命の人探しかぁ。ロマンチックだけど……途方もないねぇ」

「そや。大変やで」

「あ、なんだったら手伝おうか?お見合いとか」

「あぁ、そんなんやない。[運命の人]は色恋の話やないから」

「えっ?そうなの?」

「そやぁ。“出逢わなければならない人”それがウチの探す[運命の人]なんや。まあそれがウチの眼鏡にかなう相手なら付き合ってもええけど」

「???」


そう。

必ず出逢わなあかん。


「それにあてもあるんよ」

「あるんだ?」

「ある。婆ちゃんが生前高名な占い師に占ってもらった時、ウチが十四歳になったならずっと東を目指して旅をさせなさいって言われたらしいんや」

「そっか。占いを信じてここまで来たのね」

「うん。やから今のところはプラブドールを通ってシーリカ……それかその南のパントホルンを目指そうかと思ってる」

「そうか、遠いねぇ。………あ!なら、私がシーリカまで送って行こうか?」

「え?」

「「「お、お嬢!?」」」


女騎士の突然の申し出にはウチも男達も驚いた。

男達なんかはこれ以上ないくらいの狼狽えっぷりや。


「何よ。私は自由に過ごして良いって言われてるのよ。文句ある?」

「あぁ、いや、それは……」

「勘弁してくださいお嬢。俺達がどやされてしまいますよ……」

「お嬢。今は隣国の動きも怪しくなっていますのでお控えください。今の均衡はお嬢の存在で保たれているんですから」

「え~」

「「「お嬢……」」」



どうやらこの女騎士がこの国の要なんやな。

ウチはそう理解して首を振り、手を突き出して言った。


「気持ちだけ有り難く頂くわ。ウチはウチの力で[運命の人]を見つけ出す。例えどれだけ険しく長い道のりでも……最初から最後までな」

「ブリコーネちゃんカッコいい。……でも、私が運べば2日で着くんだけど」

「えっ!?」

「「「お嬢!!」」」


結局、唇を尖らせて駄々をこねる女騎士からは言葉だけ頂いてウチは再び旅に出ることにした。



「じゃあ、みなさんお達者で!」

「ブリコーネちゃんも!」


みんなと手を振り別れるウチの背中は寂しさを(にじ)ませてしまってないやろか……。


込み上げる涙を無理やり呑み込み、ウチは東を目指して歩き出した。


「ブリコーネちゃん!竪琴竪琴!忘れてる!」

「ふぇぇっ!?」



ウチは、もう少ししたら歩き出す予定や。








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