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神をも喰らうヴァイセント  作者: 文悟
転・ヴァイセントの異世界道中
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ヴァイセントの異世界道中2.5

連続投稿二本目。


下着の文化について触れるお話。


最近ジュウゴはあまり寝起きがしゃっきりしません。


ちゃんと理由はありますが。

バシリタを後にして二日目の夜。

白砂の大街道の脇。


パチパチと焚き火の中の枝が爆ぜる音が静かな宵闇の中に響く。


俺はその音に浅い眠りから目覚め、まどろみ揺らぐ視線をふと空に向けた。


星が綺麗だ。

空気が澄んでいるからだろう。元の世界じゃなかなか見ることのできないような美しさだ。


星の流れを追ってさらに視線を上へ向けていくと、途中で美しい夜空が途切れてしまう。

なんとそこには丸っこい二つの山があった。


手を伸ばしてそれを突いてみると、それは”ふるん”と震えた。


「きゃうん」


柔らかい。


「だ、旦那さま?」


おお、なんとその山は喋るではありませんか。

さらに突いてみる。


ふるん、ふるん。


「わぅ、あぅん……」


わははは。かなかな


山は突く度にふるふる震えて甘い声を上げる。

何度か突いて遊んでいると、不意に山が遠ざかり、その向こうから犬耳の少女が現れた。


おや、ピエタではないか。


おお、ではこの山とさっきから後頭部にも感じられていた柔らかな感触はピエタだったか。


「あの、私は良いのですが……その……メイプルさんに怒られますよ?」


「え?」


ピエタが困ったように俺のお腹の方を指差す。


恐る恐る見てみると、俺のお腹の上では毛布に包まれながら月色の髪の小動物が『がるるる~』と牙を剥き唸っていた。


お、おや、メイプルさんではありま―――がぷっ―――


「いたい、いたい、いたい」


メイプルはわざわざシャツをめくって脇腹の辺りに噛み付いてくる。


あ、今日は少し痛い。


本気で噛んでいるみたいだ。


「ギブギブ、もうしません、ごめんなさい」



がぶがぶがぶがぶ……



「あたた、あぃたたた」



結局お腹から胸までしばらくの間噛み続けられた。








………





メイプルのお仕置きを受けた後、すっかり目の覚めた俺は二人と世界の文化の違いについて語り合っていた。


「そう言えばさ、この世界の人ってあまり下着をつけないよな」


不用意と言えば不用意。

メイプルを怒らせたばかりだというのに、満天の星空の下で開放感につられてしまったのかピエタの山の感触を思い出し、セクハラになりそうなギリギリの発言を投下してしまった。


いかん!


一瞬二人の目が開かれたことで身構えたが、意外にも一番怒りそうなメイプルが思案するように頷くだけでピエタなど特に何も思っていないか話の続きを待っていた。


あれ?


「そうね。特に地方に行けば行くほど下着を身に着けないって人は多くなるかも。でも、身に着けない人は少数派よ」

「そうですね。ただ布を巻く形の下着がほとんどですから、ジュウゴさん居た世界の感覚としてそれを下着とすればの話ではありますが」

「そ、そうなんだ」


良かった。真面目な話と受け取ってもらえたみたいだ。


「アタシが屋敷に居る頃に読んだシーリカ国民調査という本に書かれた話では、数年前の時点でのシーリカ国民の一般家庭における平均的な月収が金貨十一枚程度とされてて、その家庭での食費が月に六枚から七枚かかるって話だから他に回せる余裕って金貨四枚がせいぜいよ。さらに言えばそこから必要な物……油だったり薪だったりの燃料費、調味料や身の回りのその他消耗品や雑貨を買い揃えたりしていって、貯蓄を考えないでも金貨一枚残るか残らないかね」

「ウチはもう少し少なかったですね。ただ、狩りをしたり野菜を育てていましたから食事に関してはそれなりでした」

「そこまでギリギリだと衣服に回す余裕はなさそうだな」

「そうよ。だけど流石に見える部分は綺麗にしておきたいからたまに買うじゃない?でも見えない部分にかけるお金なんて無いの」

「だからちゃんとした下着は贅沢品なんて呼ばれていますね」


元の世界じゃ男物のパンツなんて三枚数百円程度の物でいくらでも買える。


女性の下着は高いらしいとは聞いたことがあるがそれでも買おうと思えば気軽に買えるはずだ。


「ちなみにアタシの知る範囲では女性下着の販売価格は金貨での支払いが一般的よ」

「うわっ、たけぇ!」

「買われない物を作るような店は少ないし、少なければ安くならない。人によっては贈答品として贈ると凄く喜ばれることもあるくらいだから、まあ、当然と言えば当然ね」

「もう少し質や物を変えればまだ安い物はありますし、男性の物はもっと簡素なのでそれなりに手に入る範囲ではあるんですけど大概が銀貨三枚以上の支払いになりますね」


お、俺のお小遣い(銀貨二枚)より高級です。


「そう考えると男はまだどうにか買えるけど、女の子は大変だな。上下で揃える必要があるし」


ブラに金貨一枚。パンツに金貨一枚。

ゾッとする。

俺ならその分飯を食うぜ。


そう思ったのだが、何故か二人はキョトンとして首を傾げた。


「上下?」

「揃える……ですか?」

「ん、何か違った?ほら、ぶ……ブラジャーとパンティーどっちも買うじゃないか。それでどっちにも金貨を使うようならそりゃぁ下着なんかおいそれと買えないなって思って」

「『ぶらじゃー』?」

「『ぱんてぃー』ですか?」


あ、あれ?


そこら辺メイプルと擦り合わせしたことなかったっけ?


「ぱんてぃーって下穿きのことだったかしら?」

「そうそう。で、ブラジャーは胸の形を美しく見せるというか、持ち上げるというか、そんな下着」

「美しく……持ち上げる……こんな感じの?」


メイプルが地面に枝で絵を描いていく。

筒のような、背中でぎゅっと締めるタイプであろう構造の物。


「コレは……コルセットってやつかな」

「あら、違うの?」

「うん。同じ下着の類ではあるけどね」

「では、コレはどうですか?」


今度はピエタがキャミソールとスポーツブラが一体になったような形を地面に描く。

なんだかスポーツインストラクターが着用してそうだ。


「あ、こっちのほうが近いかな。ちょっとデカイけど似てる。俺の言ってるのは……」


今度は俺が説明を交えながら地面に描く。

絵は結構得意だ。

ついでにショーツのほうも描いておく。


「へえ、動き易そうね」

「面積は少ないですけどその分服がゴワつかなくて良いですね。それにお話を聞いた限りでは作り易いかもしれません」


ピエタの目がきゅぴーんと光る。

その手は早速荷物の中の裁縫セットに伸ばされていた。


「ピエタ、貴女……できるの?」

「はい、多分。生地はジュウゴさんの言うものを用意することは難しいかもしれませんが、この形に近い物なら作れるとは思います。私、小さい頃から裁縫が得意で、村一番なんて言われてたりしたんですよ」


少し得意げな顔で裁縫道具、布、糸と次々取り出していくピエタ。

迷い無く必要な物を選び出していくその動きにはよほどの自信があるらしいと見えた。


「コレ、試作品が完成したらどこかの店に……いえ、アタシ達で売り出しても良いかも……」

「こらこら」


メイプルの目が金貨になり始めたので俺はそのすべすべのおでこをぺちっと叩いた。


「なによぉ」


メイプルはおでこを押さえ口を尖らせたが、俺はそれには答えず苦笑だけで返して、メイプルを俺の胡坐の上にひょいと動かし座らせた。


「むぅ」


こうするだけでメイプルの機嫌は良くなり、尖った口も丸くなる。



「あ、そうだピエタ、それなら俺の下着も作ってくれないか?もっと簡単だからさ」


そう言って俺はトランクスの絵を作りの説明をしながら地面に描いた。

正直現状下着は麻で作ったものと、もともと穿いていた物のヘビーローテーションだ。

麻は非常に穿き心地が悪い。


そこら辺の改善をしておきたかった。


下着の好みとしては個人的にボクサーパンツが好きだが、作りやすいのはきっとこっちだろう。


「なるほど任せてください!」


ピエタが自信満々といった笑みでむふーと意気込む。


「朝までに仕上げて見せます!」


いや、そこまでしなくても。

眠れない時間を情熱を燃やして過ごすにしてもそれは気張りすぎだと思う。


だが、そこでピエタがあっと声を上げて困った表情なる。


「あの……私ジュウゴさんの大きさはなんとなく判るんですが、その、メイプルさんの……胸囲とか腰周りとかが……」


俺の腕の中に収まったメイプルの体がビクンと跳ねる。


俺はそれに少し意地の悪い笑みを浮かべてメイプルが逃げられないように肩を押さえた。


「ああ、そうか。正確に知っておかないと作れないもんな」

「お、大きめでいいわよ!」

「いや、それは良くない。折角なんだから着心地の良い物を作ろうじゃないか」

「じ、自己申告でいいかしら?」

「いや、この際真実の数値を知っておくのも悪くない」

「真実はいつも一つとは限らないわ!」


バーロー、それは眼鏡に失礼だ。


何だかんだと言って逃げようとするメイプルを片手で抱き締めるように捕まえた。

幸い今夜はハンデールでもらったフリフリのワンピースを着ていたため脱がせ易い。


俺はもう片方の手で下からめくり上げていく。

オレンジ色の灯りに下から上まで照らし出される。

上はなだらかな丘がそのまま晒されていたが、高級品だと言っていたのにも関わらずメイプルはちゃっかり下穿きを穿いていた。


俺の世界の物や布を巻いたものと違い、裾が瓜のように丸まっている短パンのような物だったが。


「やーだ!やーだー!」

「やだじゃありません。ピエタ、測る道具は?」

「あ、はい、紐がここに」


ピエタは赤くて太い紐を裁縫セットから取り出した。等間隔で結び目がついている。


なるほど、それでだいたいの長さを測るのか。


「大丈夫ですよ、メイプルさん。この一回を測っておけば後はここから修正できますから」

「いーやーだー!」


注射と同じだ、我慢していればすぐ済むというのにメイプルはバタバタと暴れて測らせようとしない。


「しかもこんなところでなんて!」


なるほど、夜の街道を通る者はほぼいないとはいえ恥ずかしいだろう。

ピエタは俺ごと毛布を被せ、その中に長く太い紐を持って入る。



「そういう問題じゃないのよ!いや……ああっ、いーやー!」



白砂の大街道に少女の悲鳴が響く。



双子の月はやれやれというように雲に隠れた。






なお、その計測された数値はピエタとメイプルだけの秘密である。


複数の下着が存在しますが、そのほとんどが高級品。


一番安価でカボチャパンツてきなアレとかですかね。


あまり掘り下げても意味はありませんが一応情報的に書きました。


このあとメイプルさんはスタッフ(ジュウゴ)が美味しく頂き・・・・・・?





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