序
轟々と燃える鋼鉄の怪鳥。
そのシルエットは夜闇にゆらめく。
半ばへし折れたその胴体からどぅ、どぅと赤い息を吐く。
……どうしてこうなった?
……なんでこんなことに?
答えを返す者はいない。
全身がギシギシと音を立てるようにして痛む。
幸いなのは骨をやられてはいないであろうことか。
切り傷擦り傷打撲傷。
地が豊かな草に覆われていたからこそこの程度だったのであろう。
ゆらゆら揺れる炎に弱くなる己の心を奮い奮い…。
立ち上がる。
父さん!母さん!チサト!
家族を呼ぶ声はしゃがれていた。
しかし、それでも絞り出す。
父さん!母さん!チサト!
ふと、へし折れた胴体の真下で何かが動いたのが見えた。
誰かいるのかっ?!
誰何の声に影が蠢く…………。
……っ!?
現れたのはあり得ないほどに大きなトカゲ。
オレンジの光にチロチロと舐められている顔の半分は傷だらけで片目がない。
そして、その口には見覚えのある……人の……。
父さん!!
思わず叫んだ。体中から絞り出した。
それを嘲笑うかのようにトカゲはひょいとソレを振り上げ、バクン………。
あ……アァァァァァッ!!
そこからあまり覚えていない。
ただ、情けなく、恐怖にかられて一目散に逃げ出した。