「95話」
そんなこんなで収穫祭当日。
適当な思い付きだったけど、遊佐さんに話したらとんとん拍子で話が進んでね。
いつの間にか会場が設営されあちこちに招待状がばらまかれ、当時になると朝から各地から食材が集まり町のあちこちで煮炊きが始まっていた。
食材の提供は町の人の持ち出しだったり、俺たちと付き合いのある商人さんが持ち込んだものだったり、長さんや丸山さん、はては義総様からもいくらか提供されていたりする。
こりゃこちらからも何か食材を出さないとねーと遊佐さんと話した結果、俺からは大量の味噌を。遊佐さんから年貢の一部から当日食べる米を出すことになった。
実は味噌って結構高級品なんだよねえ。
なので大量の味噌を用意すると宣言した時は皆から歓声があがったほどである。
町の人みんなで食べる分だから、100kg単位用意することになったけどね。
初めてみたよこんな大量の味噌。さすがにこれだけ買うと結構なお値段になるもんだから、用意するのに1週間ほど掛かってしまった。
でもみんな喜んでるからよし!
「豚汁おいしい……お代わりしちゃおっかなー?」
豚汁というか猪だけどおいしい。
きっちり処理しているのか変な臭みも無いし、脂身のとける感じがよきかな。
ここまでがっつりお肉だと嫌がる人もいるかなーって思ったけど、みんな平気で食ってるねえ。
町の人は飯屋で肉とか食べるのに慣れてきたんだろう。よきかな。
あ、でもよく見たら町の人じゃないのもおるな。
んでがっつり豚汁と握り飯を食べている……あのうさん臭い顔みたことある気がするねっ。
「御子神様」
「赤井さん緑谷さんお久しぶりですー」
空になった椀をおき、こちらに向かってきたのはいつものお二人だった。
この二人が来たという事は何かでかめの商談でもあったんだろうかね。
てかしばらくぶりにみたねえ。
「最近お忙しいんですか?」
「ええ、ええ御子神様のおかげで暇になる時がありませぬなあ」
色々お願いしているからねえ。
砂糖と蜂蜜はもとより、遊佐さん経由で人の斡旋とか色々やっているはずだ。
町では今かなりの人数が農業に従事しているけど、全てを遊佐さんが集めてきた訳じゃない。
結構な人数が赤井さんや緑谷さんからの紹介だと思う。
例の領域を通れる人と制限がつくだろうから、集めるの相当大変だったろう。
見返りとしては余ったお米の取引……かな? 今後も色々頼むだろうから、他にもお礼として何か利益になるものを取引したいところだけど、俺だけの一存じゃなんとも。
こんど遊佐さん経由で義総様とかに言ってみるかねえ。
「あの透明な酒も来年から扱わせて頂けることになりましてね。あれは間違いなく売れます……諸々の準備で中々お会いすることが出来ず、まことに申し訳なく……」
そっか、長さんから二人に話がいったのか。
この二人なら俺と遊佐さんだけじゃなくて、能登畠山自体とも付き合いあっただろうしねえ。
そういう事なら俺が何か心配せずとも大丈夫そうだ。
「商売繁盛なのは良いことです。あ、そういえば……この芋ですけど」
「もしやこれも扱わせて頂けるのですか?」
「これを加工した品になりますが、水飴と酒精の強いお酒ができますよ」
俺からも一つ出すぐらいは良いだろう。
生のまま出すと不味いから、加工品に限るけどねえ。
「それはそれは」
「実に興味深いお話で」
「お酒については長様とも相談になりますが、大量生産できるのは来年か再来年。試しに造るのであれば春ぐらいには飲めますね。少し作ってから置いておかないと美味しくならないのです」
水飴はすぐ渡せるんだけど、お酒はすぐ渡してもそんなに美味しくない。
やっぱ多少は寝かせないとだね。
あとは炙った木片いれると香りがついて美味しくなるんだったかな……いや、あれはウィスキーの話だったっけ。
あとで調べておかないと。
結局その日は日が暮れるまで祭りは続いた。
食い物や酒がなくなれば、都度どこからか補充され皆のお腹を満たしていく。
いつもこんな騒ぎが出来る訳じゃないけれど、たまに開催できるぐらいみんなの生活に余裕が出来るといいな。
収穫祭が終わると約束していた通り、越後のほうへ応援に行かねばならない。
「さて、種籾は後ろに積み込んだし行きますかー」
「うむ!」
キャンピングカーの居住スペースには米俵がみっしり詰め込まれている。
これらは全て種籾だ。
もちろん積み込んだ量だけじゃ全ての畑を賄うことなんて到底無理。最初の1年は種籾確保を頑張ることになるだろう。
ここでどうにか踏ん張れば、あとは落ち着いてくるはずなので頑張ろう。
終わったら和倉温泉でしばらくゆっくりするんだ……。




