8話「炭は缶があればつくれるらしい」
地方の出来事だけでも複雑怪奇すぎませんかね……(´・ω・`)
「それじゃ魚釣りだ」
風呂にはいってさっぱりしたし、動くとしよう。このままだと昼食が寂しいことになる。
2~3匹釣れてくれるとうれしいが、どうなるかな。
トレーラーから釣り道具を引っ張りだして、仕掛けをセットしていく。
フライフィッシングはやったことがないので、普通に浮きをつけてやるタイプだ。
ちなみに餌は釣り用のイクラね。
頼むぞ。今日の昼飯はお前にかかっているんだ。
「俺の腕前が良いのかすれてないのか分からんなあ」
さくっと5匹目が釣れた。
全部イワナだねえ……ヤマメもおいしいけどイワナも良いよね。
さっそくさばいて串に刺して焼いて食おう。
「あっつ……うま」
味付けはもちろん塩のみ。それでも抜群にうまい。
炭火で焼いたからだろうか身がすごいふわりとしていて、焦げ目のついた皮が香ばしい。これは何匹でも食えそうだ。
「魚の味は今も昔も変わらんね」
たぶんだけどな。
昔食べたのと味は変わらない気がする。
塩こんぶのお握りも美味しいな……遊佐さん、無事たどり着いただろうか。また川に流されてなければ良いけど。
「ごちそうさま」
おいしかった。満足満足。
さて午後はどうするか。
もう少し枝を集めて……動画見ながらちょっとこの辺りの歴史でも調べてみようか。
「いろいろやばくないか」
能登自体もあれだけど、南のほうでの一向一揆がやべえ……寺もえぐいことしているし、この時代の寺やばいな。
上杉とか柴田とかちょっと見てみたい気もするけど、戦に巻き込まれるのは勘弁だ。
しかし……なんというかこの地、下手すると100年ぐらいやばいことになるのでは……?
いろんな勢力がくっついては離れてひたすら戦を繰り返している気がする。似たような名前が大量に出てきてもうよくわからん。
有識者が動画に分かりやすくまとめてくれてはいるのだけど、それでも中々理解できないレベルで出来事が複雑すぎる。
せめて今が戦国時代のどのへんなのか分かれば良いけど……やっぱ遊佐さんに聞いておけば良かったか。
……礼はかならずとか言ってたよな? そのうちまたここに来るんだろうかね。
もし本当にきたらその時は色々聞こう。
「ごちそうさま」
翌朝。
前日に色々とやばい事が判明したにも関わらず快眠できた。
朝食は納豆3パックに卵3個と海苔少々。それに山盛りご飯だ。
買いたいものがあったのでなるべく安くすませたよ……安いといってもめちゃくちゃ美味しいけど。
本当納豆と卵は優秀だ。
「さてやるか」
快眠してご飯もしっかり食べたので、体調はばっちりだ。
今日の目標は炭をまず1缶分作ること。
手斧も購入したので可能な限り薪を集めることだ。
まずは事前に集めておいた枝で炭作りを始める。
火を入れてから完成まで時間が掛かるのでその間に薪を集めるってすんぽうだ。
「ペール缶とレンガ……レンガは別にそのへんの石で良いか」
動画を参考にしてまず缶に枝を詰め込み、ついで焼き肉用の網で蓋をして並べた石の上に逆さまにしておく。
あとは火をつけてっと。
「少し放置して、火が完全についたら土を被せてしばらく放置。煙が青っぽくなったら完全に消火する」
煙突代わりに金属のパイプをぶっさして、土をかぶせる……ここから数時間放置する必要はあるが、それで炭ができるらしい。
んじゃ上手くいくことを祈りつつ薪集めるか。
「切れ味すごいな……?」
スコンッと俺の腕ぐらいの太さの枝が手斧の一撃で落とせた。
これだけ簡単に切り落とせるなら直ぐに集まりそうだが……。
「枝を落としまくるより、木を丸ごと薪にしたほうが良いか?」
これだけ切れ味良いならいけそうな気がしてきた。
試しに幹に手斧をふるうと、ゴッと鈍い音と共に刃が半分以上幹にめり込んだ。
これならいけると確信した俺はそのまま何度も手斧をふるっていく。
「おおー」
やがて細くなった部分が自重に耐えられなくなり、木はメキメキと音を立て地面に倒れていった。
これだけあれば冬を越せる分は確保できそうである。
俺は木を掴み炭焼き場の近くまでもっていくと、そこからはひたすら枝を切り落とし、幹を割りひたすら薪を量産していった。
「……」
作業進めていく内に背中にじっとりと汗を掻いてきた。
……どう考えてもおかしい。
斧で木を切り倒すとか、ごつい男が両手に斧をもち何度もふるう必要がある。
俺みたいな細腕で、しかも片手でこんな簡単にいけるもんじゃない。
これも女神のいっていた体を丈夫にしておいたの内にはいるのだろうか。
「……非力よりはましだからよし!」
ここでの生活は体が資本になりそうだし、ありがたいと思っておこう。
それに荒事がおきた際も非力だと何もできなさそうだからな。
それより今はひたすら薪を作って、早く火のそばに並べておかないと。
生木のままじゃ使いにくいからねえ……まあ、そんなすぐ乾くもんじゃないけれど、やらないよりはずっとましだ。
「お、青っぽい……か?」
木を解体して、昼食にバター醤油ご飯を食べていると、煙の色が変わっていることに気が付いた。
いつからこの状態だったのか……ついつい背徳的なメニューに夢中になってしまっていたようだ。
とりあえずもう一杯食べて……いや、先に済ませてしまおう。
一旦丼ぶりと箸をおき、煙突を引っこ抜いて土で完全に空気穴を塞いで消火する。
あとは冷めれば炭の完成である。
作業自体は割と簡単だったな。あとは上手く行っているかどうかだけど、それは中身を取り出すまでは分からない。
お昼を食べたらもう1本だけ切り倒しておこうかな。
どうせなら春まで持つぐらい炭を作って起きたい。春は春でほかにやること増えそうだからさ。
「……切りすぎたか?」
空が赤く染まった夕方時。
俺の前にはうず高く積まれた薪があった。
何せ疲れないし、さくさく薪になっていくもんだからつい楽しくなってきちゃってね。
ま、無駄にはならないだろうから良いか。
とりあえずお腹も空いたことだし夕飯にしよう。
金欠のためおかずは無いが、塩こんぶのおにぎりならできる。それにインスタントの味噌汁があれば十分……あ、おにぎりは焼きおにぎりにしてみようかな。美味しいよね焼きおにぎり。
せっかくだから作った炭で焼いてみるか?
おそらくもう冷えているはずだけど……うん、冷えてるな。
あとはちゃんと出来ているかどうかだけど……開けるのドキドキするねえ。
「なかなかどうして、ちゃんと炭になっている」
最初は粉々になった炭がこぼれてきて、失敗か……と落胆しそうになったが、中の方にはしっかり炭となった枝が残っていた。
よしよし。あとは炭としてちゃんと使えるかだ。
さっそく火を熾して焼きおにぎりを作ろう。
「うん、おいしい」
焦げた醤油の香りが良きかな。
ちょっと醤油を付けすぎて血圧上がる味になってはいるけれど、体を動かして汗をかいた後だとそれが美味しく感じるのだ。
とりあえず炭作りは成功と言って良いだろう。
あとはこのまま炭を量産しつつ、節約しながら冷凍が利く食材でも買っていこうか。
さすがに冷蔵庫の中身がほぼ空っぽなのは不味い。




