4話「文明の利器ってすごい」
普段使っているものがなくなると大変よね(´・ω・`)
疑問もとけたところで作業を再開しよう。
早めに水を入手できるようにしたいし、集中して作業しなければ。
「ん、腹減ったな……って、もうお昼か」
腹の音にスマホを手に取り時刻を確認するとすでに13時近い。
どうやら集中しすぎたようだ。
「腰、全然痛くならないな。それどころかまったく疲れていないな……?」
ぐっと伸びをして、腰をひねってみるが……凄いな。
ある程度年をとるとちょっとした動作でも筋をやったりと、自らの行動に注意が必要となるのだがさすが若い体なだけはある。
あと結構な時間作業をしていたのにも関わらず疲れていないのも素晴らしい。
素晴らしいが……さすがに少しおかしい気がする。
若いというのは体力の上限も高いし回復も早い。だが疲れない訳ではないのだ。
「半分は終わっているし、午後頑張れば今日中に川まで道通せそうだ」
そしたら川の水をどうにか汲んで、お風呂にしよう。
湯舟は……ボートを代わりに使うか。
ああ、さっきの疲労云々については気にしても無駄ってことで、無視することにした。
別に疲れないことで困ることはないだろうからね。
それはさておいて、とりあえずお昼にしよう。
「昼飯何にするか……そういえばあれ食わなきゃだな、あれ」
食べたくて買ったものがウィンナー以外にもあったんだった。
たしか冷凍していたのを冷蔵庫に移動して解凍中のはず……もう溶けているだろうから食べないと。
「こりゃ旨そうだ。……こんなの食ったら間違いなく医者に怒られただろうな」
ほかほかと湯気を立てる山盛り炊き立てご飯の上に鎮座するのは、でんっと大きく立派なたらこ。
どうせ仕事やめたし一度ぐらいは構わないだろう。そう思い買ってみたが……実に良い。
「うむ、やっぱ体動かした後のご飯はうまいな」
たらこもざらりとした食感に、へんなえぐみも無いし見た目通り良いたらこだ。
空腹、屋外、運動後色々な要素があいまって、口の中が幸せでいっぱいである。
ついお代わりしてしまう……まあさすがに今回は3合炊いたので食べきれないだろうけど。余ったら冷凍しないとな。
「……3合食べ切った? 嘘だろ」
30分後。
見事に3合のご飯がなくなっていた。
おかしいな。普段はお代わり一回でもう限界だったのに……なんならまだ食えるぞ。
「体が若くなった弊害か」
素晴らしいけど食費がね?
お米だけじゃなくておかずもガンガン消費しますから……ふりかけとかお茶漬けとか買っておくかなあ。あと、たまには海苔の佃煮や鮭フレークで食べるのも良いな。
ご飯と合うんだよね……よし、後で買っておこう。
とりあえず食費とかは置いといて、お腹が落ち着いたら作業を再開しようか。
水をくむ時間を考えると早めに終わらせないと……真っ暗の中で水くみは正直やりたくない。
「こんなもんか」
川まで道が通った。
スマホを確認すると16時……もうすぐ暗くなり始めるが、何とか日が暮れるまで間に合った。
「さすがに汗もかいたし風呂入りたい」
疲れはしなかったけど、シャツが結構ぐっしょり濡れている。
動いている間は暑かったけど、気温は低いしいずれ寒くなる……急いで水を汲まないと。
「疲れないがひたすら水を汲むってのはしんどいな……ポンプか何かあれば楽なんだが」
トレーラーからボートを引っ張り出して、川のそばに置く。
そこからひたすらバケツに水を汲んではボートに入れてを繰り返しているが、正直終わる気がしない。
疲れないのは良いんだけどさ……あと明かりもキャンピングカーのヘッドライトつけたから、なんだかんだで暗くなっても作業はできる。
ただひたすら時間掛かるのがきつい。
文明の利器に頼りたいところだが、たぶん高いんだよなあ。
一応見てみるが。
「……2000円以下で普通に売ってるな」
やっす。
鎌を買ったあまりで十分買える値段だ。
それに評価を見る限り品物も悪くなさそう……ホースもセットでギリいけるな。
ダメ元で買ってみよう。
あまり使えなくてもこの値段ならまあ諦めもつく。
何よりないよりはずっとましなはずだ。
「予想以上に水量あるじゃないか」
今回もまた違う配達員さんにお礼を言い、箱を開けてさっそくポンプを起動してみた。
すると水道の蛇口をひねったぐらいの勢いで水がホースの先からあふれてくる。
俺がバケツで水を運ぶのよりかは遅いだろうが、ポンプの場合は動かしたまま別の作業が可能になる。
何なら夕飯の準備をしながらだって水を汲むことが可能だ。
沸かすのは投げ込みヒーターを入れておけば良いので、そうしようか。
夕飯はどうするか……ウィンナーとは別に焼き肉用のお肉も買っておいたから、焼き肉おかずにご飯だな。
「うん、ほどよい熱さだ」
ボート……もとい湯船に手をそっと入れてみると若干熱めの湯だったが、もうすぐ冬も近づき夜はかなり冷え込む時期だ。
ちょっと熱めぐらいが良いだろうさ。
さてご飯の前に風呂に入ってしまおうか。食後の焼肉で燻されてしまうだろうけど、そうなったらもう一度入れば良いからね。
時間を気にせず自由に入れるのは良い。社会人だったころなんて……嫌な思い出ばかりが浮かぶ。
せっかく自由になれたんだ考えるのはよそう。
それより今は風呂だ風呂。
「……やはり文明の利器はすばらしい」
一日の疲れが吹っ飛ぶね。肉体的には疲れていないけど精神的にね?
ボート持ってきて良かったよ、そうでなければお風呂にありつけなかっただろう……ドラム缶風呂って手もあったけど、結構高いんだよドラム缶。
「米以外もあと二日は持つし、とりあえずは必須なものを優先して買わないとな」
お肉をもぎゅもぎゅと噛みしめ、炊き立てご飯をぱくり。野菜は無し。
そして合間にスマホで買うものを物色しながら、傍らで新作の映画を流す……こんなことしちゃって良いのだろうか。
誰にはばかることなく過ごして良いはずなのに、どこか罪悪感を感じてしまうのは日本人の性とかだろうか。
それとも俺個人のやつか。
まあ、こんな生活をずっと続けていたら慣れるとは思うけど。
しばらくはこの状態を楽しむことにしよう。
「……まさか今更手洗いすることになるとは」
焼き肉を食べてお風呂に入ったあと気が付いたんだよ。
体を洗ったとて服が煙たいままだったらダメだろうと。
もっとも匂いは煙だけで、汗臭くはなかったけれど……時間経つとそっちもアウトだろうね。
んで、その場は新しい服に着替えたのだけどキャンプに持ってきた服は数日分で、明日には替えの服がなくなってしまう。
そうなると当然洗えば良いだろうって話になるが、あいにくとここは異世界だ。
コインランドリーとかは無いだろう。
仮にあったとしてもどこに向かえば良いのか、そもそもここから出られるのかと問題が色々とある。
つまりは洗濯板を使う必要がある。
手回しタイプの洗濯機もあったけどちょっとお値段的に手が出なかった。
しっかしさすがに洗濯板は使ったことがないぞ……とりあえず動画でやり方みつつ洗ってみるかあ。




