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女も子供も家督不可? 追放先の自治領を立て直したら、いつの間にか天下を取っていました  作者:


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10/15

第10話:広場の対決

 正午まで、あと二刻。


 本家への回答期限だ。


 領館の正面扉を開けた瞬間、湿った風が頬を打った。昨夜の雨の名残が石畳を黒く()らし、踏むたびに靴底がじゃりと鳴る。空は低い灰色の雲に覆われていたが、東の端だけが薄く破れて、鈍い朝の光が広場に差し込んでいた。


 広場に人が集まり始めている。


 中央の井戸を囲むように、三々(さんさん)五々(ごご)と。


 古い鐘楼の影が石畳を斜めに切り、その影の中にも人がいた。


 焼きたてのパンの匂いはしない。


 代わりに漂うのは、濡れた土と、人いきれと、それから――空腹の領の匂い。


 飢えた領には独特の匂いがある。


 活気が抜け落ちた、乾いた沈黙の匂いだ。



 ……ここで現在の状況を整理する。


 私、ミチカ。十二歳。未成年の女領主。手元にあるのは一枚の羊皮紙――ユリウスが一晩かけて仕上げた回答書。そして胸の中にあるのは、昨夜の高台で見た光景の記憶。


 街道を埋める騎馬隊。


 本家の旗。


 武力接収の気配。


 普通に考えたら詰みだ。十二歳の少女が騎馬隊に勝てるわけがない。剣も振れないし、魔法で敵を吹き飛ばすような芸当もできない。


 けれど。


 勝ち筋は、ある。


「ミチカ様、広場の集まり、予想より多いです」


 ミナが小走りで駆けてきた。頬が紅潮している。昨夜ほとんど眠れなかったはずなのに、目がきらきらしていた。


「どのくらい?」


「三百人は超えてます。まだ増えてます」


 三百。領の総人口からすれば六割強。


 ――よし。


「ステータスオープン」


 小声で(つぶや)く。視界の端に半透明の数値パネルが浮かぶ。


 この能力には制限がある。


 読み取れるのは自領の統治に関わる数値だけだ。


 他人の心を(のぞ)くような真似はできない。


 表示されるのは、あくまで統治判断に必要な指標――民心の傾向、物資の概算、行政上の信頼度といった、この領を治めるために必要な情報に限られる。



 領民平均信用値:41。ストレス値:78。


 信用値は低い。まだ私を信じきれていない。当然だ。十二歳の小娘が何を言い出すのか、半信半疑で見に来ているだけ。


 けれどストレス値78は高い。


 数字を見るまでもなく、分かる。広場に集まった人々(ひとびと)の顔を見ればいい。唇を引き結んだ老人。腕を組んで壁に寄りかかる若い男の、苛立ちを隠しきれない眉間の(しわ)。子供を抱きかかえた母親の、こちらを値踏みするような視線。


 みんな怒っている。飢えている。答えを求めている。


 この怒りの矛先を、正しい方向に向ける。


 それが今日の仕事だ。


―――


 広場の中央に据えた木箱の壇上。高さは膝丈ほど。たったそれだけの高さが、今の私には演壇だった。


 左にユリウス。右にリオ。


 背後にレオンが立ち、その視線は広場の外――街道側に固定されている。広場の四隅には、ノアが手配した見張りの者が散っていた。ノア自身は鐘楼の陰から広場全体を静かに監視している。その目は、群衆の中に紛れた不審な動きを一つも見逃さないだろう。


「騎馬隊、停止位置を変えました」


 レオンの声が低い。


「広場の東口を塞ぐように展開。約二十騎」


 威圧だ。逃げ道を狭めて、領民に「余計なことをするな」と無言で圧をかけている。


 やってくれますね、本家は。


 けれど逆効果だ。広場の空気が変わったのを肌で感じる。騎馬隊が東口を塞いだ瞬間、群衆の間に走ったのは恐怖ではなく、反発だった。壁際にいた若い男が舌打ちし、母親たちが子供を(かば)うように身を寄せ合い、老人が街道の方を(にら)みつけている。


 圧力をかけられるほど、人は「なぜ?」と思う。なぜそこまでして止めたいのか。何を隠したいのか。


 私は回答書を広げた。


 羊皮紙の表面に、ユリウスの几帳面(きちょうめん)な文字が並んでいる。昨夜、この回答書を仕上げる過程で、ユリウスは王国法の関連条文を片端から洗い直していた。後見制度法、徴税法、封印管理令――あの少年の頭の中には、今この瞬間に必要な法律の全てが入っている。


 深呼吸。


 石畳を踏む靴音が、自分のものだけ妙に大きく聞こえた。鐘楼の上で(からす)が一声鳴いて、飛び立った。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」


 声が震えそうになる。三百人の視線が突き刺さる。


 ――大丈夫。数字は(うそ)をつかない。


「これから、御用商会に対する回答書を読み上げます。一項ずつ、全て公開します」


 ざわり、と空気が揺れた。


 公開。


 この領で、行政文書が領民の前で読み上げられたことは一度もない。全てが密室で決まり、結果だけが通達される。それがこの世界の「普通」だった。


 けれど私は知っている。情報公開こそが最強の武器だと。


「第一項。手続き瑕疵(かし)について」


 声を張る。壇上の小さな体から出せる限りの声量で。


「御用商会が提出した徴税委任状には、領主印が押されていません。代わりに使用されているのは、三年前に廃棄済みの旧印です。これは封印偽造にあたります」


 どよめき。前列にいた男が隣の者と顔を見合わせ、後方で誰かが「偽造だと?」と声を上げた。


「第二項。同委任状の発行日付は、先代領主の逝去後十七日目――つまり、署名権者が存在しない期間に発行されています」


 どよめきが大きくなる。鐘楼の方から風が吹き、羊皮紙の端がばたついた。


「第三項。徴税量の記録と実際の搬出量に不一致があります」


 ここで私は一度言葉を切り、広場を見渡した。


「帳簿上の搬出は四百二十袋。しかし――」


 壇の横に控えていた人影が、一歩前に出た。カイだ。短く刈り込んだ髪、日に焼けた肌。その手に、束ねた紙片を握っている。


「関所通過帳。写し」


 カイの声は低く、短い。けれど広場の隅まで届いた。


「俺が直接、関所に出向いて照合した。実際に領外へ出た穀物――六百九十八袋」


 カイがその紙片を掲げた。


 私は(うなず)いて、引き継いだ。


「帳簿には四百二十袋と記録されています。実際には六百九十八袋が領外に出ていた。差は二百七十八袋。つまり――帳簿に載っていない二百七十八袋が、誰にも知らされないまま、この領から持ち出されていたということです」


 群衆の中から声が上がった。「それは……盗まれたってことか?」


「帳簿に載せずに抜き取り、別の買い手に流す。横流しです」


 私はその言葉をはっきり口にした。


「第四項。御用商会の内部帳簿――その写しがここにあります。横流し総量は、この領の年間収穫のおよそ二割に達しています」


 二割。


 その数字が広場に落ちた瞬間、前列の女性が口元を押さえた。後方で怒号が上がり、それが波紋のように広がっていく。


 数値パネルに目をやる必要はなかった。群衆の顔を見れば分かる。握りしめられた拳、紅潮した頬、()みしめた歯――怒りは十分に伝わっている。そしてその怒りの中に、私の言葉を「聞こう」とする意志が混じり始めていた。


「ユリウス」


「はい。――補足します」


 ユリウスが一歩前に出た。眼鏡の奥の目が、冷たく光っている。


「今読み上げた四点の瑕疵は、いずれも王国徴税法第十二条から第十五条に明確に違反しています。特に封印偽造は重罪です。本来であれば、御用商会の認可は即時取り消し――いえ、そもそも認可自体が無効です」


 淡々(たんたん)と。けれど一語一語が刃のように鋭い。法律を武器にする少年の本領発揮だ。


 続いてリオが動いた。


「よし、お次は俺の出番だ」


 大きな布を広げる。そこには領内の地図と、矢印で示された流通経路が描かれていた。


「見てくれ、この図。穀物の流れだ」


 リオの声は軽い。けれど内容は重い。


「倉庫にはあったんだ。穀物は領内にあった。問題は――ここ」


 矢印が途切れている箇所を指さす。


 群衆の中から、年配の農夫が声を上げた。「流通が止まってたって……どういう意味だ? 俺たちには何も届かなかったぞ」


 リオが頷いた。


「そう、届かなかった。いいか、分かりやすく言う。穀物は畑で採れて、倉庫に入る。倉庫から各村に配られる――はずだった。ところが御用商会は、倉庫から先の道を全部自分たちで押さえた。村に送る分を減らして、浮いた分を港に回して外に売った」


 リオが布の上の矢印を指でなぞった。倉庫から村への矢印は細く、倉庫から港への矢印は太い。


「つまり、蛇口を締められたんだ。水はあるのに蛇口が――ああ、蛇口って言っても分からないか。井戸の水汲(みずく)みで例えるなら、井戸には水がたっぷりあるのに、(おけ)を持っていく道を商会が塞いでいた。そういうことだ」


 農夫が(うな)った。「……水はあったのに、()めなかった」


「そういうことだ」リオが振り返って、広場の全員を見渡した。「飢饉(ききん)じゃない。これは流通詰まりだ。食べ物はあったのに、届けなかっただけだ」


 沈黙が落ちた。


 けれどそれは、先ほどまでの困惑の沈黙とは違う。理解の沈黙だった。


 最初に声を漏らしたのは、子供を抱いた母親だった。「あったの……? ずっと……?」


 その声を皮切りに、嗚咽(おえつ)が広がった。老人が顔を覆い、若い男が壁を拳で(たた)いた。


「穀物は……あったのか……」


 老人の震える声。


「あった。ずっと、あった」


 私は頷いた。


「皆さんが飢えている間も、倉庫には穀物がありました。それが皆さんの元に届かなかったのは、届けない仕組みを作った人間がいたからです」


 広場の空気が変質していくのを感じる。最前列の老人の目に光るものがあり、壁際の若者たちが背筋を伸ばし、母親たちの表情から(おび)えが消えて、代わりに静かな怒りが据わっていた。


―――


 その瞬間だった。


 壇上の横から、一人の男が割り込んできた。


 上等な外套(がいとう)。本家の紋章入りの胸飾り。先遣使者――昨日の期限繰り上げを通告してきた、あの男だ。


 ノアの視線がこちらに向くのが見えた。鐘楼の陰から、小さく首を横に振る。――武器はない、という合図だ。


「失礼」


 慇懃(いんぎん)な声。けれど目は笑っていない。


「感動的な演説ですが、一つ確認させていただきたい」


 広場が凍る。


 使者は領民に向き直った。


「皆さん、お聞きください。この少女は未成年です。王国法において、未成年領主の行政行為には後見人の承認が必要です。後見人不在の現状、この回答書に法的効力はありません」


 ――来た。


 予想通りの手だ。


 領民の間に動揺が走る。さっきまで怒りで赤かった顔に、不安の色が混じるのが見えた。前列の農夫が眉を寄せ、隣の者と何か(ささや)き合っている。


「つまり」使者が畳みかける。「この読み上げは、子供の戯言に過ぎません。法的には無意味です」


 ざわざわと不安の波が広がる。


 けれど。


「――失礼。一点、訂正があります」


 ユリウスの声が、広場を切り裂いた。


「王国後見制度法第三条第二項。『後見人未選任期間中、領主の固有権限は凍結されない』。これは後見人が決まるまでの行政空白を防ぐための規定です」


 使者の顔が強張った。


 ユリウスは眼鏡を押し上げた。昨夜、回答書の起草と並行してこの条文を洗い直していたことを、私は知っている。


「後見人がいないから無効、ではありません。後見人がいないからこそ、領主本人の権限が生きている。……法律というのは、ちゃんと読まないといけませんよ、使者殿」


 皮肉たっぷり。けれど条文は正確だ。


 使者が口を開きかけた。


「それは拡大解釈に過ぎない。本家の法務官の見解では――」


 その瞬間、私は使者の顔を見ていた。


 目が泳いだ。ほんの一瞬――けれど確かに。「法務官の見解」と口にした瞬間、使者の視線が右上に逸れた。手元の指が外套の裾を(つか)み、喉仏が小さく上下した。


 確信を持つ言葉を口にする人間の顔ではない。


 ステータスを確認する。統治判断に関わる指標として、使者の発言に対する信頼度が表示される。直接的な心理ではなく、この場の統治上の意味――その発言がどれだけ根拠に基づいているかの指標だ。


 発言信頼度:12。


 やはり。観察と数字が一致した。


 私は一歩前に出た。


「使者殿」


 静かに、けれどはっきりと。


「本家の法務官の見解を確認されたとのことですが――その見解書をお持ちですか?」


 使者の眉がぴくりと動いた。


「公の場での発言です。見解があるなら、文書でお示しいただきたい。この場には三百人以上の領民がいます。根拠のある話なら、誰もが納得できるはずです」


 使者は沈黙した。


 私は畳みかけなかった。代わりに、広場の領民たちに視線を向けた。


「皆さんにお伝えします。私たちは先日、本家の法務局に対して後見制度法の適用範囲について正式な照会を送っています。ユリウス」


 ユリウスが懐から一通の書簡を取り出した。


「本家法務局宛の照会書の控えです。発送日は五日前。王国の郵便記録にも残っています。回答期限はまだ来ていませんが――少なくとも、こちらは正規の手続きを踏んでいます」


 使者の顔から血の気が引いた。


 正式な照会が出ていることを知らなかったのだ。本家の中での情報共有すらできていない。その事実が、使者の「法務官の見解」という言葉の空虚さを何より雄弁に物語っていた。


 五秒。十秒。


 群衆が使者を見ている。答えを待っている。


 使者は外套を翻した。


「……本家は、改めて正式な対応を取る」


 捨て台詞を残して、騎馬隊の方へ去っていく。


 広場にどよめきが起きた。けれど私は浮かれなかった。


 群衆の顔を一人ずつ見る。


 前列の老人が小さく頷いている。


 農夫の表情から不安が薄れ、代わりに「この小娘、やるかもしれない」という値踏みの目に変わっていた。


 けれど後方には、まだ腕を組んだまま表情を崩さない者がいる。


 壁際で囁き合う者たちの中には、「本当に大丈夫なのか」という疑いがまだ残っているのが見て取れた。


 全員が味方になったわけではない。けれど、確実に潮目は変わった。


―――


 使者が去った後の広場は、慎重な高揚感に包まれていた。


「ミチカ様」


 ミナが壇上の下から見上げていた。目が潤んでいる。


「すごかったです……本当に、すごかったです……」


 ありがとう、ミナ。けれどまだ終わっていない。


 私は再び広場に向き直った。


「皆さん。御用商会の不正は、今お伝えした通りです。飢饉の正体は流通詰まりでした。穀物は領内にあります。これから配分を再開します」


 歓声が上がる。


「ですが――」


 声を張った。歓声が止まる。


「本家は諦めません。今の使者は先遣です。本隊はまだ街道にいます。この領を取り上げようとする動きは、これからもっと激しくなります」


 静寂。


「だから、宣言します」


 羊皮紙を掲げた。回答書ではない。もう一枚――ユリウスが予備に用意していた白紙の羊皮紙だ。


「この領は、私たちの手で守ります。制度で。法律で。そして皆さんの意思で」


 群衆の中に、小さく、けれど確かな声が広がっていく。


「具体的な手続きは、これから――」


「ミチカ様」


 レオンの声が割り込んだ。硬い。鋭い。緊急時の声だ。


「騎馬隊、後方に動きがあります」


 振り返る。


 街道の彼方。鐘楼の向こうに見える街道の一本道を、騎馬隊の列の後ろから、新たな旗印が近づいてくるのが見えた。


 金地に黒の双頭(わし)


 ――まさか。


「レオン、あの旗印は」


「本家当主の直旗です」


 当主自ら。


 先遣使者レベルの話ではなくなった。本家のトップが、直接来る。


 ステータスで遠方を確認する。騎馬隊の後方、馬車の輪郭。護衛の数が倍増している。


 想定はしていた。けれどこの速さは――回答期限の正午を待つつもりすらないということだ。


「ユリウス」


「……分かっています。自治領宣言の起草ですね」


 さすがだ。言わなくても読んでいる。


「ただし」ユリウスが眼鏡を押し上げた。「宣言を有効にするには、領民の過半数の署名が必要です。王国法上、これは絶対条件です」


 過半数の署名。ただし、署名とは単に名を連ねることではない。本人が宣言の内容を理解した上での意思表示――拇印(ぼいん)押捺(おうなつ)が必要になる。


 今ここにいるのは三百人強。


 人数だけなら過半数を超えている。


 けれど全員が署名するとは限らない。


 文字を読めない者には内容を口頭で説明し、理解を得なければならない。


 本家の報復を恐れて拇印を拒む者もいるだろう。


 さっき壁際で腕を組んでいた者たちの顔が脳裏をよぎる。



 足りるかもしれない。けれどギリギリだ。


「どのくらい時間がある?」


「当主の馬車の速度から逆算して――半日。正午を過ぎた頃には到着するでしょう。それが限界です」


 半日で、過半数の署名を集める。


「……命令」


 私は振り返った。


「全員、署名の準備に入ってください。一人でも多く。一刻でも早く」


 レオンが頷く。リオが走り出す。ユリウスが羊皮紙を広げ、宣言文の最初の一行を書き始めた。カイが壇上から降り、広場の出口に向かう。その背中に声をかけた。


「カイ。まだ来ていない人たちのところへ」


 カイが振り返った。短く、頷いた。


「……分かった」


 それだけ言って、人混みの中に消えていく。あの寡黙な足が、領内の隅々(すみずみ)まで届くことを信じる。


 ノアが鐘楼の陰から歩み寄ってきた。


「広場周辺の警備、継続します。……署名の間、不穏な動きがあれば」


「お願いします、ノア」


 ノアは静かに頷き、再び広場の外縁へ戻っていった。


 ミナが私の袖を掴んだ。


「ミチカ様、私――私も何かできますか?」


「ミナ」


 振り返る。不安そうな、でもまっすぐな瞳。


「あなたには一番大事な仕事をお願いします。広場に残って、みんなに声をかけて。怖がっている人の隣にいて。それが今、一番必要なことです」


 ミナの目が大きく見開かれて――それから、強く頷いた。


「はい。はい、やります」


 よし。


 駒は(そろ)った。時間はない。相手は最強格。


 でも。


 私には数字がある。法律がある。仲間がいる。そして何より――三百人の怒りと希望がある。


 本家当主、来るなら来なさい。


 この領は、もう昨日までの領じゃない。


 街道の向こうから、砂塵(さじん)が上がった。騎馬の一団。旗印は――本家の紋章。


 来た。

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