第五章 リザードン
第五章 リザードン
「痛ぁー……」
思わず声を漏らすマヤ。
ハヤブサは肩の力を抜き、安堵したように笑った。
「良かったよ。俺の一撃を食らって無傷とか言われたら、泣いちゃうところだった」
カウンターの女性も腕を組みながら感心する。
「それでも打撲程度なんですね……
本当に、この肌は何で出来てるんでしょう」
「そう言いながら胸を触るの、やめてもらえます?」
「冗談よ」
軽く笑ってから、女性は表情を引き締めた。
「――さて。毎年恒例、リザードンの大移動が今年も始まりました」
ハヤブサが声を張り上げる。
「今年は俺が陣頭指揮を取る!
みんな、ついてきてくれ!」
「いつも通り、はぐれて街に近づく個体を追い払うだけでいいですからね」
カウンター女性が念を押す。
「本体は絶対に叩かないこと。全面対決になります」
マヤは崖の上へ向かった。
「マヤちゃんは監視だ。
こっちに来そうなら援護してくれ」
「わかりました」
弓を構える。
「距離は……二キロくらい」
炎魔法に包まれた矢を速射。
着弾と同時に、爆炎が連鎖する。
「……大きいのがいる。
何発当たっても倒れない」
沈黙。
「あーあ……我慢できない」
マヤは静かに杖を取り出した。
振る。
空中に巨大な魔法陣が展開する。
雲が裂け――
雷神ゼウスの影が現れた。
次の瞬間、
天を割る落雷。
リザードンのボスがいた場所は、
大地ごと抉り取られていた。
「……私に魔法を使わせないでよ」
群れは進路を変え、
何事もなかったかのように元いた大地へ引き返していく。
ハヤブサは胸を張った。
「俺たちにビビって帰ったな、リザードンは」
男が力強くうなずく。
「俺たちの勝利です!
ギルドに連絡してきます!」
――その背後崖の上で。
ただ一人、
杖をしまうマヤがいた。




