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第十章 エクソシスト

第十章 エクソシスト


すべてが――白に染まった。

落雷。

世界を切り裂く閃光。

耳をつんざく轟音。

マヤ以外の者は、反射的に地面へ伏せ、

両手で耳を塞いでいた。

やがて――

白に塗り潰された視界が、少しずつ色を取り戻していく。

そこに広がっていたのは、

まるで何事も起きなかったかのような静寂だった。

焦げ跡だけを残して。

マヤは、そそくさと杖をしまい込み――

自分も遅れて怯えたふりをする。

「きゃー……こ、怖い……」

わざとらしい悲鳴。

だが。

ギルドの面々は、

呆れた顔でマヤを見ていた。

――全部、見られていた。

受付嬢が静かに言う。

「……隠さなくていいのよ」

ギルドマスターも頷いた。

「君のおかげで助かった」

短い沈黙。

受付嬢がぽつりと続ける。

「……ポーチは?」

ギルドマスターは、すぐに命じた。

「クラウスを取り押さえろ!」

黒焦げのまま倒れていたS級冒険者クラウスは、

抵抗もできず拘束され――

そのまま本部へと送還された。

本部の役人が、信じられないという顔で告げる。

「……よくS級冒険者クラウスを捕らえましたね」

「本部でも、長年手を焼いていたのです」

その頃。

落雷のあった場所では――

神学者が、地面を入念に調べていた。

焦げた石。

残留する気配。

空気に溶けた、説明不能の力。

受付嬢が怪訝そうに尋ねる。

「……何を調べているのですか?」

神学者は、空を見上げたまま答えた。

「昨日、この上空に――」

「神のような姿を見ました」

静かな声。

しかし、その言葉は重かった。

「この力が、聖教側のものか」

「サタン側のものか」

「旧神の力か」

「それとも――人の時代の力か」

一拍。

そして、低く告げる。

「それによって……

 エクソシストが覇権を握るかどうかが決まる」

空気が、冷える。

その言葉が意味するものは一つ。

――魔女裁判。

異端審問。

排除。

火刑。

すぐ近くで。

マヤは顔を引きつらせながら、

小さく、小さく祈っていた。

(バレませんように……)

(バレませんように……)

誰にも聞こえない声で。

ただ一人、震えていた。

――だが。

その祈りを、

誰かが静かに見つめていることに、

彼女はまだ気づいていなかった。


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