〈17〉キャパオーバーは突然にやってくる(エリオット視点)
「私と手を組まない?」
僕の目の前にいる女が……この世界のヒロインである女が、まるで全てを魅了するかのように、にこりと微笑んだ。
その微笑みを見て、あぁ、やっぱりこの女は“ヒロイン”なんだ。と改めて実感する。
だって、その微笑みを見た途端に僕の中の違う“僕”がざわめいた気がしたのだ。
怖い。このままじゃ僕が僕で無くなりそうな気がしてものすごく怖くなった。
「ねぇ、私の話を聞いて欲しいの。お願い、エリオット……」
「や、やめ……」
ヒロインは攻略対象者の心の隙間に入り込む事によってその対象者を攻略するのだ。これまでこのヒロインはあまりそれらしい行動をとらなかったようだったが、今は違う。“僕”を攻略しようと本気になったのだろう。だから、この女の言葉がこんなに僕の“なにか”を揺さぶるのだ。
「エリオット」
ヒロインが僕の名を呼び背筋がゾッと寒くなる。その美しくも恐怖でしかない手を僕に伸ばした────。
「やめてぇ!僕はヤンデレ化するのもヒロインみたいな阿婆擦れに色んな事されるのも絶対嫌なんだからぁ!!」
そして、鳥肌だらけの腕で自身を抱きしめながら思わず本音を叫んでしまっていたのだった。
「え?」
「……あ────」
目を見開き、瞬きもせずに僕を見つめるヒロインは驚いた顔で「い、今……なんて……」と震える声で呟いた。
や、ヤバい……!
この世界には存在しないワードを思いっきり叫んじゃった……!!なんとか誤魔化さないと、このままじゃ僕は頭のおかしい奴だって兄さんたちやリヒトに告げ口されて下手したら始末されるかも……!?
「エリオット……!」
ガシッ!と両肩を掴まれ、ヒロインが少々興奮気味に顔を寄せてきた。
え?なに、このヒロイン。なんでヒロインがこんな鼻息荒くして目を爛々と輝かせてるのさ?
エレナって、こんな顔するキャラだったっけ……?(どのみち怖いけど)
だが、ヒロインが次に口にした言葉に今度は僕が目を丸くする番となってしまった。
「あなた、もしかしてもしかするの?!」
「は?なにが……」
「あなたも転生者なのかって聞いてるのよ!」
は?……はぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁ??!
ぷつーん。ぱたり。
「あ!エリオット!?」
頭の中が真っ白になり、僕はそのまま気を失ってしまったようだった。




