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日は昇る

作者: ばたさん

倒壊したビルの上、朽ち果てた都市をそれなりに一望出来る場所。そこに彼は居た。このビルは昨日まではひとつの欠けもない四角柱だったはずだが、今は捨てられた缶ビールの様に潰れてしまっていた。それでもあたりを見渡すには十分な高さがあるほどこの周辺は崩壊していた。さっきまで居た公園がよく見えた。日はすでに高く登っており、あの海底都市に乱反射してイルミネーションの様になっていた。あれからだいぶ歩いてきたが自分以外の人間を誰も見ていない。人間だけでなく猫や犬、鳥など本来いるはずのものが綺麗さっぱり消えてしまったようだ。なぜ自分が生き残っているのか、まだ他に生きている人はいるのか、なぜこうなってしまったのか。疑問は尽きないが、考えても仕方がないと諦めた。とにかく今は生き残るすべを見つけなければいけない。幸いここに来る途中でコンビニを見つけたので食料は何とかなるだろう。少し高いところから見渡すと、案外まだ綺麗に残っている家は多かったので寝床はそこら中にある家主の居なくなった家を借りようと思う。そういえば、とズボンの左ポッケに押し込んでいたスマホの存在を思い出し、取り出して電源を入れてみた。予想通り、ただの黒い板に成り果ててしまったようだ。よく見るとどこで打ったのかヒビが入ってしまっている。腰掛けていたデスクから立ち上がって、振りかぶる。使い物にならなくなったそれを海の方へ思い切り投げ捨てた。しばらくするとガシャンッと壊れる音がした。流石に海には届かなかったようだ。未練を振り切るように海に背を向け都市の方に向き直る。

これは、覚悟だ。もう元には戻らないこの世界で生きていくという、絶対に揺らぐことのない覚悟。たとえ何があっても生き抜いてやる。そういう覚悟だ。そう自分に言い聞かせながら両のこぶしを強く握る。背中側から吹いた強い風に運ばれて、微かに海特有の匂いがする。唯一の希望は今だ、天高く昇っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。だいぶ短い…長く書けるよう頑張ります。

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