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小学生の考えた『なぞかけ』が酷すぎる件

作者: me

『なぞかけ』


 一見何の繋がりもない2つの単語や文章を並べて、その共通点を同音異義語などを使って結びつけるという古来から伝わる言葉遊びである。



〇〇とかけまして

〇〇ととく

その心は、どちらも

〇〇でしょう



 この形式で行われるものが最も有名ではないだろうか。


「......」


 と、なぜ僕がいま『なぞかけ』の話をしているかと言うと、ちょうど今僕の目の前に、なぞかけが書かれたプリントが30枚ほど積み上げられているからだ。


 これは僕のクラスの児童が朝提出した国語の宿題だ。

 昨日、国語の授業でなぞかけについて扱った際、『一つなぞかけを考えて、このプリントに書いて提出しましょう』といった感じで課題を出したのだ。


 なぞかけを作るには語彙力ごいりょくが必須。ウチのクラスは6年生という最高学年ではあるものの、正直それでも難易度が高い課題だと思う。


「さて、みんなちゃんと出来てるかなぁ......」


 昼休みの時間を使い採点してしまおうと、僕はプリントへと手を伸ばす。


「......大丈夫かな」


 全く出来ていなかったらどうしよう。一抹の不安を抱えながらも、僕は手に取った一番上のプリントへと視線を向けた。




────────────────────


【歌手】とかけまして


【信じる】ととく


その心はどちらも


うたがうまい(歌が上手い/疑うまい)と思うでしょう


────────────────────



「なるほど......!」


 想像以上の出来栄えに、僕は思わず喜びの声を上げた。思っていたよりもレベルの高い回答だ。どうやら自分の生徒をあなどり過ぎていたらしい。不安だなんて、反省しなければ。


「よしよし、どんどん見ていくぞ」


 これは他の回答にも期待できそうだ。僕は見終わったプリントに花丸をして横に置いて、2枚目のプリントへと手を伸ばした。




────────────────────


【聴力が無い】とかけまして


【会話せずを磨く】ととく


その心は、どちらも


みみがきこえない(耳が聴こえない/実磨き声無い)でしょう


────────────────────


「おお! ......おお?」


 感心しかけた僕は、少ししてから疑問の声を上げる。


「......実磨き?」


 一見上手いように見えるのだが、よく見ると『実磨き』とかいう聞いたことも使ったこともない謎の単語が当たり前のように登場していた。


「うーん」


 結果ありきで言葉を創り出すのは、少し違うような......。とはいえギリギリ悪くないと言える気もする。


 次見よう。僕は今見たプリントに大きく丸をつけた後、3枚目のプリントへと視線を向けた。




────────────────────


【嫌いな人】とかけまして


【テスト中にシャーペンが壊れた】ととく


その心は、どちらも


しんでて(死んでて/芯出て)欲しいでしょう


────────────────────



「いや口悪いな」


 なぞかけはちゃんと出来ているが、これを手放しで褒められるかと言われると疑問である。


「まあ、上手ではあるけど......」


 少し不安を感じながら、僕は次のプリントへと視線を向けた。




────────────────────


【京都府とか三重県】とかけまして


【うちのおじいちゃん】ととく


その心はズバリ! どちらも


しがちかい(滋賀近い/死が近い)でしょう!


────────────────────



「元気よく言うことかよ!」


 僕は思わず呆れた声を上げた。『ズバリ! でしょう! 』じゃないよ、まったく。

 これも中身は結構上手いとは思うけど、素直に褒められない内容だ。


 次見よう。僕は次のプリントへと手を伸ばした。




────────────────────


【壊れたテレビ】とかけまして


【子ども】ととく


その心は、どちらも


叩くとなおる(直る/治る)でしょう


────────────────────



「ダメダメダメ!」


 体罰が過ぎるだろ。僕は思わず否定の声を上げた。


「あと、これを子供の側が言ってるのはおかしくない?」


 次! 僕は別の子のプリントへと手を伸ばした。




─────────────────────


【白馬に乗ったアレ】とかけまして


【オーストラリア】ととく


その心は、どちらも


おうじ(王子/オージー)でしょう。


─────────────────────


「アレってなんだよ」


 『王子』という単語を使うとその後のネタバレになるから伏せたのだろうが、そのせいで違和感がすごい。


「そこまで上手くないかなぁ」


次見よう。僕は別のプリントへと視線を向けた。




────────────────────


【殺意】とかけまして


【キテレツ大百科に出て来るヤツ】ととく


その心は、どちらも


ころすけ(殺す/コロ助)でしょう


────────────────────



「殺すとは読まないだろ」


 それと『出て来るヤツ』って言い方も気になるな。さっきから『アレ』とか『ヤツ』とか、なんかずるいよ。


「というか、死ぬとか殺すとか多くない!?」


 今回の宿題、全体的に口が悪過ぎるだろ。これも全部スマフォで戦争ゲームとかが流行っているせいだろうか。嘆かわしい。どうぶつの森だけやってればこんなことにはならないのに......。


 小学生の作品なんだから、もっと可愛い回答が見れたら良いんだけど......そう思いながら、僕は次のプリントへと目を向けた。




────────────────────


【手術道具で木を切る】とかけまして


【女児をわからせる】ととく


その心は、どちらも


めすがきたおす(メスが木倒す/メスガキ倒す)でしょう


────────────────────


「メスガキとか言うなよ」


 言ってしまえば、教室の半分はメスガキだろ。


次!



────────────────────


【最も人気のあるペット】とかけまして


【先生】ととく


その心は、どちらも犬でしょう

(※教師は国家の犬であるため)


────────────────────



「なんで急に批判されたんだ」


 あとよく見たら猫派も敵に回してるぞ。猫派の先生がここにいるんだから。


次! 僕は次のプリントへと目を向けた。




────────────────────


【ダラダラとやる】とかけまして


【お前】ととく


その心は、どちらも


だせえ(惰性/ダセェ)でしょう


────────────────────



「だから、なんで批判されてるんだよ!」


ある意味古典というか、落語みたいなことをやられてる気がする。


次!




────────────────────


【お金】をかけまして


【スポーツを見た方】がとく


その心は、そっちの方が、興奮するでしょう


────────────────────


「賭博すんな!」


『お金を賭けまして』じゃないんだよ。


次!



────────────────────


【男】


 と


【女】


その心は


どちらもすれ違ったまま───


────────────────────



「なにがだよ!」


 もはや、かけてもといてもない。完全に集中力の途切れた僕は、採点を一旦中止した。

 ふと時計を見やると、昼休みは残り20分程度となっている。まだ昼ごはんも食べていないのに。


「うーん......」


 良いものも勿論もちろんあるのだが、どうにもサッサと適当に作ったとしか思えないものも目立つ。

 児童たちにはぜひ、


【時間】をかけて【問題】をとく


 をやって欲しいものだ。

 そうすればきっと、けない問題はない。

僕は採点で時間がけてしまったことを反省しながら、おもむろに弁当箱を開くのだった。



おわり


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― 新着の感想 ―
 おじいちゃんのネタ、逆でなくてよかった。  滋賀近いとかけて  実は京都か  なんて答えられてたらと思うと……。
「女子小学生が考えた川柳が酷すぎる件」も読ませていただきました。 何というか、本当に笑いのツボを分かっているなぁと思いました。 これからも頑張ってください!!
ほんとうに最近の子たちには感嘆します。(…) スマフォ笑 【男】  と 【女】 その心は どちらもすれ違ったまま─── この句の、空白と「─」がいい働きしてるなあと…
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