『その世界は……』
その世界は、新時代を迎えていた。
約五年前、『世界の大変革』なる世界の構造が劇的に変わる改革があり、人類に新天地が拓かれたのだった。
第五層『虹球界』というのがそれである。
大気は水のように濃く、虹があちこちで作られる、惑星——。
これまで真央界という、四方を閉ざされた世界で生きてきた人類にとって、この上ない朗報だった。
まず、虹球界に迎えられたのは、戦争で苦しめられた難民たち、そして彼らを世話する第六層降霊界の住民だ。
世界を統括する思想、万世の秘法によって、事前にこの新たな世界の存在を知らされていた難民たちは、虹球界に降り立った瞬間、狂喜乱舞した。
降霊界の住民の指導の下、一致団結し、まず住居作りに勤しんだ。
食物と衣服の心配は無用だった。
食物は生産修法という物質生産技術を身につけた難民たちが、自ら用意することが出来た。
衣服は万世の秘法の位階者らによって大量に準備され、皆、真新しい服に袖を通したのであった。
それから旧世界、第二層真央界に残った人々も、三十年かけて移住する計画が立てられ、徐々に準備が調えられた。
一方、第一層因果界に堕とされた世界の脅威、呪界法信奉者たちは、世界中の悪党らをまとめることになった。
皮肉にも敵対していた万世の秘法の用意した、修法作物によって食を確保し、真央界との取引で必要な物資を得ていた。
根強いゲリラ活動によって、二つの地域で戦火がくすぶっていたが、世界の大変革の際に生命の樹に武器をすべて取り上げられている。
呪界法と呼ばれる、荒廃した土地に巣食っていた悪精による異能も、生命の樹が取り込んでしまい、無力化した。
残るは己の肉体のみ――これでは精鋭揃いの万世の秘法の対テロ組織、パイオニアオブエイジの前に、逃げるしかなかった。
そして、五年の歳月をかけて、戦火がまた一つ消えた。
エスクリヌス下層、因果界の呪界法信奉者の根城、後悔の塔が、POAの精鋭らによって陥落したのだった――。




