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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
85/201

『レンナの傍を』

 午後五時半——。

 研修センターで国際法律学の学科を受けていた訓練生が、時報で解放された。

「今日はこれまで!」

 学科教官のゴア・レーラーは、三重顎に小さな目が丸眼鏡に埋もれた、四十代後半の中年だが、決して授業を長引かせないことで有名だった。

「うがーっ、終わったぜい!」

 派手に伸びをする訓練生たち。ゴキゴキ肩を鳴らす。

 ほとんどの訓練生は、がやがやとロッカーのある訓練ドームに向かい、サクシードたち三人は、最後に消灯して教室を出た。

「目一杯だったなぁ。昼過ぎに学科詰められると、眠くていけねぇぜ」

 ジャンティが欠伸すると、イーリアスが苦笑した。

「確かに身体動かしてる方が楽だな」

「法学の決まりきった文言見てると、眠気倍増だもんなぁ。俺、途中でサクシードのノートの書き込み見てたもん。すっげえ几帳面な字でびっしりと。よく気力が続くよ」

「俺は中途入隊ですから、追いつかないと――」

「言行一致してないと、対応に困るからな」

 イーリアスも同意する。

「俺なんか、覚えたそばから忘れていくぞ」

「威張るなよ……」

「超法規的措置が本分だからいいんだよ」

「いるよな、基本守れない言い訳に、そう逃げるやつ」

「RPGで学習するご時世だぜ? 実際の事例に対処する能力を養うのに、効果が出始めてるって報告あったぞ」

「身に修めるのにRPGでは役不足です。結局、真に根づいた実力しか、いざという時は頼りになりませんから」

 サクシードが断言するので、ジャンティも引き下がった。

「ま、とどのつまり実力主義が幅を利かせてんだけどさ」

 研修センターの入り口まで来ると、ドギュスト部長が壁に寄りかかっていた。

「お、部長。お疲れさんっす」

 ジャンティが敬礼する。サクシードたちも続く。

「お疲れさん。——サクシード、ちょっといいかな?」

「——はい」

「じゃあ先に帰るぜ、サクシード」

「お疲れ」

「お疲れ様です」

 ジャンティたちが行ってしまうと、ドギュスト部長はおもむろに話を切り出した。

「君から話したいことがあるだろうと思ってね」

「恐れ入ります」

 一拍置いて、サクシードは言った。

「私の実戦デビューは、豊穣の十月ということでしたが」

「延期、だね」

「はい、名のない力の問題が片付くまで、下宿を離れたくありません。身勝手で申し訳ないのですが」

「下宿というか、レンナの傍を、だろ」

「……」

「もちろん、ウェンデス様を始め、POA上層部はそのつもりで調整に入った。心配はいらないよ」

「ありがとうございます」

「レンナが修法者なのは知ってるね」

「はい」

「彼女の指導でも修法行はできる。課題の性質上、考えすぎるのもよくないんで、君のレクチャーを任せようと思ってる。ただ、一年しかないからなぁ。万武・六色全部とはいかないが、どれか一つに絞って、特化技術にした方がいいと思う。——レンナにそう伝えてくれないか?」

「わかりました」

「うん、じゃあ頼んだよ」

「はい、失礼します」

 つと、行きかけたサクシードに、ドギュスト部長が声をかける。

「あ、そうだ、サクシード」

「はい?」

 ニヤッと笑って、ドギュスト部長は言った。

「上からのお達しだ。青春、大いに結構、だそうだ」

 今朝の一幕のことだ、とピンとくるサクシード。

「自重します」

 即座に言ったが、ドギュスト部長は苦笑した。

「だから、謳歌してもらった方が、かえって都合がいいんだってば」

「はぁ……」

ポン、と肩に手を置いて、ドギュスト部長は言った。

「ゴーサインは出てる。レンナのことは任せたよ」











 

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