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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
79/201

『フラメン宮』

 翌朝、繁緑の四月修迷の二日。鎮守府・フラメン宮にて。

 その応接室には、斎官(フラメン)のフローラと、女官長のアリサ・シーノート、そしてレンナの姿があった。

 先日の報を受けて、フラメン宮に控えていたフローラは、レンナから詳しい事情を説明されていた。

「それでは、名のない力の衝突は、今回も避けられないのですね」

 長い金髪をまとめ髪している、木の葉模様の長衣を着た、中年のアリサ女官長が言うと、レンナは慎重に頷いた。

「はい。ですが、過去二回のニアミスと違うところは、私たちに被害を回避できる方法があるということです。果敢に取り組む以外、選択肢はありませんが……私はその方法を甘受したいと思います」

 しかし、その方法が――フローラは、レンナの身を案じた。

「あなた以外にできる人がいないという、その過酷な条件が心配です」

「フローラ様——女神様は今回のことを何と仰っていますか?」

 レンナは敬称でフローラに尋ねた。

「甘受し、しかる後の混乱に備えよ、と」

「そうですか。昨夜、ウェンデス様を筆頭にした修法者会議でもそう決まりました。名のない力のことを私に一任する代わりに、予想される混乱にできる限り備える。可能なら、呪界法信奉者側とも話し合いの場を設け、譲歩点を見つけ出していこう、ということでした」

「そうですか。今回のことは、どんな大きな山でも動かす力があるんですね」

「はい――そこで女官長にお願いが」

「何でしょう?」 

「フローラ様にこれまで通り、下宿に住んでいただきたいのです。彼女は私の頼もしい親友です。フローラ様以外の相談相手を私は見つけられないでしょう。どうかお願いします」

「……フローラ様はいかがなさいますか?」

「はい。できることなら、一緒に時間を分かち合いたいです」

「それでは問題ございません。フローラ様のご意志に私どもは従います」

「ありがとうございます!」

 レンナもフローラも心から安堵した。

 お互いの役目にかかりきりになって、会えなくなってしなったら、心の均衡が保てなくなることを知っているのだ。

 細かい調整は後日改めることになって、二人は下宿に帰ったのだった。


 午前六時半——。

 シンパティーアの男性陣は、キッチンで朝食づくりに奮闘していた。

 ファイアートの提案だった。

 しかし、台所事情をよく知らない彼らは、物を探すのにも苦労していた。

「乾燥ワカメ、ありましたよ」

「よし、味噌汁に投入。んで、レタスと合わせてサラダにしよう」

「水に戻してからだぞ」

「おっと、そうだった。サクシード、冷蔵庫から豆腐取って」

「わかった」

「——目玉焼きが焦げたな」

「ブランクありすぎだろ。誰かドレッシング作れるやつ!」

「オリーブオイルは?」

「ガス台の下ですぅ」

 そんな大変な騒ぎの中、レンナとフローラが帰ってきた。

「なんだかとっても賑やかね。ただいま!」

 レンナが爽やかに挨拶すると、ファイアートが勢いのまま言った。

「お帰り! 疲れただろ、朝食作りは僕らに任せて、リビングで休んでなさい」

「……じゃあ、お言葉に甘えようか、フローラ」

「ええ」

 わたわたしながら彼らが朝食を作り終えたのは、十五分後だった。

「わぁっ、おいしそう!」

 レンナが第一声を上げた。

「どうよ、まっ、ざっとこんなもんよ」

 はいはいとご飯をよそうファイアート。

「ちゃんと麦が入ってるー!」

 感動するレンナを見やるサクシード。

 心配していた疲れもないようだった。

 気づいたレンナが笑いかける。

 きれいだ。素直にそう思った。

「いただきまーす」

 酢がキツすぎるドレッシングや、柔らかすぎるご飯、焦げた目玉焼きはご愛敬。

 パクパク食べるレンナに、ファイアートが満足そうに話しかける。

「首尾はいかがですか、お嬢様」

「うん、昨夜の会議で大まかな方針は決まったよ。近々、万世の占術師様から発表があると思うわ」

「サクシード、万世の占術師様というのは、パラティヌス統治者ウェンデス様の修法名だよ」

 ファイアートの補足に、レンナがチロッと舌を出す。

「あ、ごめんなさい、すっかり安心して。フィートありがとう、昨夜サクシードにしっかり説明してくれたのね」

「そりゃ万世の魔女様のご依頼とあれば、労は惜しみませんとも。ただし、君から説明した方がいいことは言及してないからね。そんで考えたんだが――君、疲れてる?」

「ううん、全然」

「じゃあさ、今日サクシードと一緒に、POAに行く道すがら説明したら? 彼だって心配してたんだからね。このまま訓練に入ったんじゃ、気にかかるでしょ」

「そうね……サクシード、時間をくれる?」

「わかった、首都まで歩いて行こう」

「ありがとう!」

 ファイアートたちには、フローラから説明することになった。

 レンナは身支度を調えるため、早めに席を立った。












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