表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
72/201

『突然の……』

 歓談がひとしきり終わって、サクシードとレンナは二人で話すことになった。

 フローラが淹れてくれたカモミールティーのマグカップを二つ、トレイに載せて、二人は階段を上った。

「万世の秘法に入門したことで、いろいろな情報が目白押しで、退屈しないな」

「……こんな突然、展開するんじゃなくて、もっと緩やかに理解出来たらよかったのにね」

 女性らしい意見に、サクシードの心が和む。

 だからこそ、言っておかなくてはならないことがあった。

 書庫室に入るとひんやりしていた。

「暖房入れる?」

「いや、実は……六色・赤を特訓してきた。火の精霊を呼んで暖を取る方法を習ったから、それを使う」

「そんな細部まで、今日一日で?」

「雑談がてらだがな」

「へぇ、余裕があるのね」

 面白がるレンナに座るよう促して、話を切り出す。

「じゃあ、お叱りを受けますか!」

「その前に、言っておきたいことがある」

「?」

 溜めて、サクシードは言った。

「俺は……おまえが好きだ」

 えっ? という表情で、レンナが固まる。

 凝視したその先には、一大決心の末、告白できた自分に安堵するサクシードがいた。そして続ける。

「誰か他に好きな男がいるのか?」

 視線を逸らし、俯くレンナ。言葉が継げない。

「迷惑だったか?」

 ギュッと目を瞑って、首を勢いよく振るレンナ。

「まだ会ってから一週間そこらだし、おまえが戸惑うのは無理もない。——しかし、俺にしてみれば、周りからの突き上げや、職場にまでおまえを担ぎ出されて気が気じゃない。それなら……いっそ前向きな関係を築いて、責任を持った方がいい」

 なんだ、そういうことか。レンナも落ち着いて話す。

「でも、サクシード……あなたは訓練を通して、いろいろな出会いもあるし、義務も発生するわ。そんな時に私のことまで考えていたら、手が回らなくなるんじゃないかしら」

「そうかもしれない。けどな、俺にとって、おまえはもうかけがえのない女性だ。大事にすると言ったからには、この考えも含まれていると思う。違うか?」

「……」

 サクシードはテーブルの上で手を組んで、レンナを真摯に見つめている。

 その表情は、初日に乗った電車の中で、テロに対する考えについて、レンナに問いかけた時と同じく、真剣そのものだ。

 レンナはその場しのぎの言葉で逃げることができなかった。

「サクシード……お姉さんがね、こう仰ったの。私にあなたの家族になってくれないかって」

 やっぱりそうか。

 姉、アニスの言いそうなことは見当がついている。

 とんだフライングだった。

「家族って意味合いが広くて、私は衣食住のお世話をすることも、その一環と思って、お姉さんの申し出を了解したの」

「そうだったのか……よく知りもしない人間から、そんなことを言われたら傷つくだろう。それは俺の身から出た錆だ。ごめん、姉貴に代わって謝る。許してくれ」

「ううん、お姉さんには感謝しているわ。あなたのことを私に任せてくれて……気持ちが一緒になれて」

「! それじゃ」

「……不束者ですが、よろしくお付き合いください」

 レンナはちょこんとお辞儀した。

「ありがとう……!」

「うん……」

 スッとサクシードは両手を差し出して、レンナがためらいながら差し出した手を、暖かく包んだ。

 二人の気持ちが重なった瞬間だった。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ