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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
71/201

『怒涛の一日』

 サクシードが帰宅した頃には、もう八時を回っていた。

「ただいま」

「お帰り―!」

「お帰りなさい」

 みんなダイニングで食事中だった。

 あらかた食べ終わっていて、ファイアートが弁舌を奮っているところだった。

 ニヤッと笑って、サクシードに言うことには。

「今日は怒涛の一日だったね、サクシード」

「それについては――レンナ、あとで話がある」

「……了解」

 レンナがやや引いて言ったので、サクシードはもう許していたが、おまけのようにレンナの額にこつんと手の甲を跳ねさせた。

「お、意味深発言」

 ファイアートが食いついたが、さっと躱してサクシードは言った。

「着替えてくる」

「うん、用意しておくね」

 今夜のメニューは、海鮮豆乳鍋に厚揚げ豆腐とパプリカの甘酢餡かけ、ほうれん草のお浸し、デザートは大学イモだった。

 席に着いたサクシードは、小さい土鍋からよそいながら、旺盛な食欲で美味しそうに食べた。

 最後にお茶を淹れてもらうまで、賢明にも他の話をしていたファイアートは、突然話の舵を切った。

「ところで、サクシードも大変だよね……上層部の意向とは言え、しのぎを削る強敵の前に、レンナを曝さなきゃなんないんだから」

「——昨夜の電話が、その依頼だったのか?」

「うん、そう! ドギュスト部長からの依頼でね」

「……部長とは、万世の秘法を通じて顔馴染みか」

「そういうことだね。つうか、レンナの修法行仲間なんだよ」

「年が離れているようだが……?」

「万世の秘法の入門の時期がズレているんだよ。レンナは五歳から十二歳まで。部長は成人した後だって話だから、レンナの方が先輩にあたるわけ」

「なるほど」

「それに、部長だけじゃなくて、現ウィミナリス統治者でPOA長官のヤヌアリウス様と、第一秘書のシルデニアさんもご学友と来てるからね。まさに黄金時代をレンナは駆け抜けてきてるんだよ」

「へぇ……そう言えば、俺がPOAに初めて出向いた時、レンナは宮殿の貴賓室で誰かに会っていたようだが、もしかして……」

「ビンゴ! もちろん、パラティヌスとウィミナリスを、テレポートで移動している、ヤヌアリウス長官と会っていたんだよ」

「なんであんたがそんなことまで知ってるんだ?」

「フフン、皆まで聞かなくても、点と線を繋げばわかるっつうの。だいぶ読めてきたぞー!」

「——長官は、私の力があれば、サクシードを守れると仰ったのよ」

「うん? それがなんで訓練士全員に情報開示になるわけ」

「知らないわ。でも、サクシードの入門が大きく関わってることは確かね」

「ふーん? 予定していたのか、予定はなかったけどいきなりぶっこんできたのか……まぁ、この国にはあの御方がいらっしゃるからな」

「あの御方?」

 サクシードが問い返す。

「『人界の王』、パラティヌス統治者ウェンデス・ヌメン様だよ。この世界の政を、なんと占星術で動かしてるって謂われてる。なーんでもご存知だし、どーんなことも隠しておけない、神懸かりな御方だから、万世の秘法を問わず敬われてんのさ」

「……当然、あんたの出歯亀な傾向も掴んでおられるわけだな」

 ファイアートを除く全員が吹き出す。

「さすがサクシードさん」

「一本」

 ロデュスが口を手で押さえて笑う。

 ラファルガーも一言置いた。

「んなこと言ってると、訓練生に垂れ込むぞ。サクシードは訓練にかこつけて、レンナとイチャイチャしてます、ってな」

 逆襲に転じるファイアート。そのやっつけ願望丸出しの顔を見て、サクシードはあることを思い出した。

「レンナ、それからみんな。俺から相談したいことがあるんだが」

「あら、なぁに?」

 レンナに聞かれて、サクシードは全員の顔を見渡して言った。

「いつも訓練でお世話になっている、ジャンティ・フリュさんとイーリアス・ルースキンさんが、この下宿に来たいと言ってる。……フローラのことは承知しているつもりだが、迎え入れることは可能だろうか?」

「いいわよ」

 レンナはあっさり言った。

「サクシードを深く知ってもらうにはいい機会だし、ホームパーティーを開きましょうか。ねぇ、フローラ」

「ええ」

「そうだよね……湖岸一周マラソンの件で、警備が柔軟なこともわかったし。POAの訓練生なら身元もはっきりしてるし、断る理由ないよ」

 ファイアートが椅子の背もたれに寄りかかって、前で手を組んで言った。

「また離れでお迎えすればいいんじゃないですか?」  

「プライベートをかき乱す人間でなければ、俺はどっちでもいい」

 ロデュスとラファルガーが賛成して、全員の了解を得た。

 ファイアートとジャンティは意気投合するだろう。イーリアスはラファルガーと雰囲気が似ている、とサクシードは二人の人となりを教えた。

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