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パイオニアオブエイジ  作者: どん
第二部
70/201

『時報』

 白熱の特訓は午後いっぱい続けられた。

 終わりを告げる五時半の時報が鳴った。

 訓練生にとっては救いの音である。

「よし、それまで! 各自片付けに入れ」

 ドーム床面は、トラックから芝生に至るまでズタボロだった。

 驚いたことに、指導していた軍人らが、その持てる力で修復を始めた。

 万世の秘法の表、環境修復技術だ。

 その一連の作業を見届けてから、訓練生はようやく引き揚げることができた。

 全員、帰るのに足腰が立つぐらいには、特訓を抑えられていた。

 中にはヒーリングを受けた者もいる。

 ロッカールームで盛大にぼやく訓練生を尻目に、サクシードたち三人はいち早く帰途についた。

「お疲れ様でした――!」

「おう! 明日ちゃんと出てこいよ」

「泣き寝入りは今夜までだぞ」

「何だかなぁ、俺らって打たれ強いじゃん? でも、心折られると弱いんだよね」

「ギャハハ、情けねぇ!」

「ちゃんと心のケアしとかねぇとよ」

「おっ、いいねぇ」

 その際限ない他愛なさと離れて、サクシードたちは笑い合った。

「あの、しょうもなさが救いだよな」

 ジャンティが頬に思いっきりついた痣を撫でて言った。

「本当に軽くあしらわれてしまったな」

 イーリアスが腹をさする。

「万武・六色は奥が深いです」

 あの後——レベルアップと称して、六色・赤を叩き込まれたサクシードも、あちこち打ち身があった。

「とか何とか言いながら、善戦してたじゃん! サクシード」

 目端の利くジャンティは、しっかりサクシードの様子を見ていた。

「いえ……初めの小手調べだけです、追い風だったのは。後でしっかり借りを返されましたから」

「なまじ知ってることが仇になるのはしょうがないか」

「はい」

 イーリアスに言われて、サクシードは素直に頷いた。

「はぁ~っ、先は果てしなく遠いなぁ」

 ジャンティが目を瞑って、ほとほと参ったように言った。

「この上、わけのわからん学科があんのかよ……どうキャパ広げりゃいいんだか」

「俺はむしろ楽しみだがな。POAの一枚岩じゃなかったところが、正直面白いというか、怖いもの見たさかもしれないが」

「そりゃあんたはお勉強大好きだかんね、苦にはならねぇさ。あーあ、体で覚えろってところまでは共感できたのに」

「その方が身につきますよね」

 サクシードが言うと、ジャンティがそのすまし顔をビシッと指差した。

「サクシードには発言権なし! 下宿に帰りゃ、あのウルトラ美少女がご飯作ってくれてるんだろうが。その上、万世の秘法を手取り足取り……厳重抗議だぜ! 何だよ、この待遇の差は」

「そう言うがな……後でとんでもない重責背負わされるとも限らんし、とんとんだと思うぞ」

 イーリアスがどっちつかずに言った。

「けっ、優等生め! 男だらけの生活に、潤いがもたらされても、結局人の物。楽園はいずこ?!」

「ま、その能天気な思考回路で、堂々巡りするんだな」

「何だと?!」

 ジャンティがイーリアスに拳を振り上げたところで、サクシードが割って入った。

「落ち着いてください。どんな約束ができるかわかりませんが、俺から彼女に話してみますから」

 ピタッとジャンティの動作が止まった。

「そういうことなら……」

「サクシード、いいのか? 後で問題になるかもしれないぞ」

「大丈夫です、彼女は公明正大ですから。自分のしたことについて余波があれば、責任を引き受ける覚悟はあると思います」

「固い! 固いぞ、サクシード。いいんだよ、んな難しいことは。日頃お世話になっている彼氏のお仲間のために、ホームパーティーを開くってだけで。へへっ、楽しみにしてるぜ」  

「やれやれ……」

 そうこうしているうちに、高速エレベーターを出て、三人は今日の訓練を労って

国立図書館前で別れたのだった。 

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